起床-79312回目の学校生活-7
は?
逆ナンには見えないけど
(こんなおとなしい娘がそんなことするわけない)
きっと真面目に話しているんだろうし
「なんだか『はじめまして』みたいなカンジじゃないんだ
私なにか忘れてるのかもしれない・・・
でも今日初めてあったよね?」
ゆっくりだけど確かに彼女は俺に問うた
どういうことだ
「ははっ、他人のそら似じゃない?
俺あんま特徴のある顔じゃないし」
愛想笑いをした彼女は何か思ったのかもしれない
弱々しく笑い返した
「・・・俺鍵返してくるから先帰っといてくれていいよ」
「そっか、ヘンなこと聞いてごめんね?
じゃあお先に」
彼女は足早に帰っていった
まるで俺から逃げるように・・・
そして俺も教室から職員室へと足を進めた
俺以外の人々は記憶を失う
それは『絶対』であり例外なんていた試しがない
ナゼ彼女は忘れていない?
まだ完全に記憶しているとは限らないが
彼女はこの世界<79312回目>に既視感を憶えている
例外なのか?
それともこの世界のシステムは既に壊 れ 始 め て い る ?
彼女は確か学級委員の『園崎 由佳』
あまり印象に残らない少女
彼女と他の人の違いはなんだ?
79312回目にしておきた不測の事態
少しの動揺と少しの期待が胸をよぎる
これは転機かもしれない
考えなければいけないことと
確かめなければいけないことが増えた
早く帰ろう
俺は鍵を帰し足早に学校を去った
「あら、おかえりなさい」
マンションの階段を駆け上がり自室の前に来る
そこにはおばさんがいた
隣に住んでいるそのおばさんは俺の部屋の少し横で
「おかえり」と言ったのである
別に彼女は変人というわけではない
彼女はただ『繰り返している』だけなのだから
そして俺はその背に向けてナイフ<得物>を振りかぶり
勢いよく振り下ろした