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起床-79312回目の悲壮感-1

 

 またか

 

 肌を刺すような寒さで目が覚めた

 布団は冷たくて僕の体をちっとも温めてくれない

 その冷たさは、今まで本当に寝ていたのか不思議なくらいだ

 

 でもずっと布団にくるまっているわけにはいかない

 ・・・もう起きないといけない時間じゃないのか

 

 時計は6時30分を指していた

 僕は重い腰を上げ肌寒い部屋を後にした

 

 

 

 洗面所でまだ覚醒しきっていない自分の顔を見る

 睨み付けるように恨みがましく鏡に映った自分を

 

 想像していた通りの自分の顔を見た

 

 鏡の中からこちらを睨め付けているのは

 まだあどけなさの残る幼い顔

 その顔には不釣り合いな首に刻まれた数字

 

<79312>

 

 

 この数字は別に適当に書かれているわけではない

 僕が死んだ<殺された>回数である

 

 黒色で貼り付けられたようにしてあるその数字は

 僕がこうして目覚めるたびに一つ二つと増える

 

 それは消せない

 火で炙っても、水で擦っても

 たとえその部分を切り取ったとしても

 

 まるで骨にまで刻まれているかのように僕につきまとう

 今では見慣れてしまったそれを軽く撫でて息を吐いた

 息は白かった

 

 

 僕は死なない

 正確にいうと僕の精神は消えない

 

 人は死ぬと精神を洗われ、また新しい生を受けるらしい

 あくまで一説だけど僕はそれを信じていた

 

 だが僕はそうならなかった

 何度死んでも僕は<僕>のままだった

 

 それに気づいたときは何度も自殺したんだと思う

 そのせいか、僕の記憶は不完全で

 

 今では擦り切れてしまったテープのように

 かすれた文字のように記憶が曖昧だ

 

 だがきっと僕が壊れてしまわないように自分で消したんだろう

 

 それでも、自殺したことで得たことなどない

 何度やっても結果は同じだった

 死ねない

 

 何故なのか

 何故こんなことになってしまったのか

 理由は僕にも分からない

 

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