真夏の公開日 2日目
量子テレポーション。無重力の服。魔球。
サヨさんに作ってもらったそれらを見せてやると出雲は興味深そうに見ていた。
「あのさ、明後日までに完成させたいからここで書いていい?」
「はぁ!?両親には?荷物は?」
当然のことながら俺も驚き、それを聞く。
「親なら平気だし、荷物もここに!」
「・・・・。」
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複合ビル 屋上。
丁度、日付が変わった直後のこと。
「あれ?谷岡。」
「ぷっ!」
まず、最初に目に飛び込んで来たのはインクを顔につけた出雲の姿。
「顔についんてんぞ?」
「あ、ありがとう・・・。」
手渡したハンカチでゴシゴシと顔を擦る。
「お前も今からこの科学同好会の部員だ・・・。」
俺がそう静かに言うと「え?」とすぐ聞きなおしてきた。恐らく、その「え?」には私は科学など出来ないしといった意も込められているような気がした。
「気にするな。お前が部員ならば、俺もちゃんとあれを手伝うさ。」
「・・・・分かった。」
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「正直、泊まる気にはなれないよな。」
体育館で雑魚寝などやりたくなかった。そこで俺はすぐ抜け出すことにした。
今日は学生が出店をする日。長川とケイコは釣られてどこかに消えていったし、運動部の奴らは皆出店で働いている。
残された俺と出雲で回ることに。
「しっかし、眠いな・・・。」
「あら、弱いんだね。谷岡は。」
どうやら徹夜はよくあることらしく、出雲は平気そうな顔をしている。
俺はたこ焼きを一つ買い、出雲と分けることにした。
「食べていいの?」
「あぁ、朝食ってないだろ?」
「サンキュー。」
そういって、彼女はそれを頬張る。
暑さが増したのか、彼女は腕を捲くる。チラリと、一瞬だが見えたのは手首に入った数本の線。
―聞かない方が良さそうだな・・・。
何かがあったのだろう。だからこそ聞くわけにはいかなかったのかも。
公開日は2日目を終えた。
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科学同好会 部室。
窓からは大須の町がよく見える。帰り際に栄まで行き、漫画の用品を買い部室まで帰った直後だった。
他の奴らは皆体育館で寝るらしく、戻ってきたのは俺と出雲の二人。
カリカリと静寂の時間が訪れた。
「昼間さ、見たでしょ?腕。」
恐らく、俺が手首の傷を見ていたのを知っていたらしい。
「あぁ。わざわざ抉り返すようなことはしないから見ていないことにしたがな。」
「話していい?」
「・・・構わない。」
それだけ信頼されているのだろうか。出雲は話始めた。
「実は私虐められているの・・・。」
「・・・。いつから?」
「入学してから。」
クラスメートだったが知らなかった。同時に情けなさも出てきていた。
「・・・知らなかった。同じクラスなのに。」
「いいよ。そんなこと知ってもどうしようも無いしね。」
彼女の言っていることは間違いでもあり、正解でもあるように感じる。
「いいさ。次また死にたくなりそうになったら、俺に言え。部長としてお前の話をちゃんと聞く。」
「ありがと・・・。」