真夏の公開日 1日目
我が高校(谷岡は工業科)は真夏に学校祭紛いなことやる。1日目は部活公開日。2日目はイベント。3日目は学生のための日。因みに2日から3日までは体育館で泊まることになる。
「あっついね・・・。」
本来であれば1日目は公式の部活に入っていない学生は来なくてもいいと思いがちだがそうでも無い。これを機に入ってもらうという学校側のどうでも良い考えのせいで全員出席なのだ。
「吹奏楽部とかどうですか?」
「いや、結構です。」
の様なやり取りがさっきからチラホラと展開されている。睦美、ケイコ、花月の女子3人組は部活で出払ってるしサヨさんは何故か成人しているにも関わらず休憩室の係担当。
よって、科学同好会は全員学校に来ていることとなる。
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「いやー教室も久しぶり。」
夏休みの間はずっと大須の複合ビルに篭っていただけあってその感想が俺もあった。
「ん?誰か来たな。」
目に入るのは男女の姿。
工業科の教室は別棟で、屋上へも繋がってる。すると、長川がえらく興味を持った表情で後を付け出す。
「何してる!?」
ボソボソと俺は長川に聞く。「面白そうじゃん。男の方はネットでの友達。」
などと面白がってついていく必要など無いなどと考えているともう屋上。
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屋上。
「あの、高橋くんのことが好きなの!」
―はぁ、こんなの見て誰が得をするんだよ・・・。
「ププッ・・・。」
俺がさっさと下に降りたがっているのにも察せず長川は笑っている。
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笑っている長川など放っておいて、部活には興味が無いが退屈しのぎに休憩室に行くことにした。
休憩室は渡り廊下を渡るのだが、渡り廊下は二階だけを繋いでおり、俺は今一階にいる。特に外だったため、二階の渡り廊下はよく見える。
ふっと映ったのは先ほどとはまた違う男女。よく見ると、女の方は睦美だった。
渡り廊下に着くと睦美がいた。
「見てたでしょ?」
「ん?まぁ、見えたからな。」
どうやらさっきのことを見ていたのは決して俺だけでは無かった様子。
「聞かないのね。」
「聞いたところで何になる?」
「・・・そうね。休憩室に行くの?」
俺がどんな性格かある程度掴み始めていただけあって、睦美も余計なことは言わない。
「なぁ、教えてくれよ。お前の両親はどうしたんだよ?」
「そんなに気になる?あなたは?」
―うまく、かわしたな・・・。
「・・・いいや。話さなくてもいいだろう。」
「じゃ私も・・・。」
そこで会話は終わった。
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休憩室。
休憩室にはケイコとサヨさんの姿。
「あれぇ?長川くんはぁ?」
「落としてきた。」
「え!?駄目だよぉ。ちゃんと持っていなきゃぁ。」
サヨさんはにこやかな顔で俺にコーヒーを手渡してきた。ケイコは隣で新聞紙を下に敷き、展示用の絵を描いている。
新聞は結構前のものらしく見出しは「日本人宇宙飛行士2名死亡!」の文字。
「こんな事故ありましたっけ?」
サヨさんに聞いてみた。同じ様な職についていたからというのもあった。
「そうね、たっちゃんが生まれてから直ぐの話。」
「そうでしたか。」
時刻は1日目終了の時刻だった。
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科学同好会 部室。
帰りに夕飯を買ってくるのを忘れた睦美はコンビニまで弁当を買いに行っていた。
ぼぉーっとここで一人でテレビを見るのは久しぶりだった。
「続いてのゲストは宇宙開拓に大きく名乗りを上げているとある夫婦。」
面白そうなテレビはやっていないなと思い、俺はガリレイ冷蔵庫の前に立った。
―ただの冷蔵庫の筈なんだけどな・・・・。
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名古屋 大須商店街。
「あら、ケイコ。」
「あぁー睦美ちゃん!」
ケイコはわざわざ居残りをしていたらしく帰宅は今の時間の様子。
「暗いわね。」
「うん・・・。友達のユキちゃんが漫画を書くことになってるんだけどね、全然浮かばないんだって・・・。」
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再び、科学同好会 部室。
「ただいま。」
「おかえり。」
「谷岡ー!」
睦美よりも明るい声が俺の耳に届いた。
「あれ?その声・・・。」
「へぇ、こんな場所があったとは・・・!」
クラスメートの出雲ユキの声がしたのだ。
「出雲?」
「ねぇねぇ、超能力見せてくれるんでしょ!?」
「え?」