悲劇の始まりは突然に・・・。
「あ、たっちゃん。面白いものを作ってみたの・・・。」
そういって、何枚かの服を出してくるサヨさん。
「?」
「これは前の無重力の服の改造版。簡単に言えば半径数mの物体も無重力になるの。」
そこで実際に実験してみようかと狭いこの複合ビルの二つの部屋を使い着替えた。
「スイッチオン!」
「おぉ・・・浮いてる!」
「すっごいね!」
簡単に空中を泳いで見ると机も浮き始めた。
「お!机が浮いた!!」
皆、周りの物体を浮かせて遊んでいる。
□■
遊びつかれたのか、それを試してから直ぐに皆解散していった。勿論、俺と睦美を残して。
「実はさ、今日両親が何で死んだか聞いたんだ・・・。」
「あら。知らなかったの?」
「あぁ。俺の両親は俺が生まれた直後に死んだみたいだからな。物心付いて会ったことまでは無い。」
睦美もさすがに親のことを何も知らないという俺に少し驚いたようだ。だが、結局他人だからなのか終わったことは振り返らないからか。まだ、そんなことも分からずでまだ彼女を全然知らないのだと感じた。
フッ・・・。
「・・・停電!?」
明かりが消える。だが、窓からは街頭の光が目に入った。
「ブレーカーか?」
「動くな!!!!」
フッと電気がつくのを確認して目を前にやると、そこには複数の男たち。そして、手には煌びやかな銃の光沢がはっきりと分かる。
本物なんてこの目で初めて見たのに、間違いなく人を簡単に殺すことも出来る物体だと。
「冷蔵庫はNACAが回収する・・・。」
―NACA!?
「谷岡!使って!!」
最初は何を言っているのか分からなかった。だが、本能が教えてくれた。
「何している!!」
「今だ!!」
パシュンと短く小さな音がした瞬間、世界が変わる。
ブワッ!!と俺と睦美は宙に浮いた。
「無重力の服だ!狙って撃て!」
パシュン。パシュシュと連続の音と弾丸が睦美を襲う。が、服の効果により弾丸すらも宙に浮く。
「気にするな。無重力を訓練無しに自由に行動出来ない。今のうちに冷蔵庫を回収するぞ。」
「や、やめろ!」
本能では無理だと分かっていた。だが、理性が許さなかった。
ドサッ!俺の体は地面に打ち付けられた。
「ぐっ!」
「今だ・・・殺れ!」
銃が向けられる。
ドサッ。何かが落ちる。
「何やってるの!?」
パシュン!!
「うっ!」
その声は己から発されたものでは無かった。間違いなく睦美のものだった。
「ちっ。急所を撃ちやがって。帰還するぞ!」
罪悪感も無さそうに男たちは出て行く。開きっぱなしのガリレイ冷蔵庫。だが、関係なかった。
「む、睦美。」
最後の言葉も無く、睦美の体はぐったりとしている。初めて見た銃創。それは間違いなく心臓に命中していると分かった。
「あ、あぁ・・・。あ・・・うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
□■
それからの事は分からない。気づけば3日立っており、たった今初めて他人の死亡届を出したところだ。
これで鏡 睦美という人間の戸籍もその他のある程度の情報も抹消される。
俺を庇って死んだ。死ぬ瞬間、目から光が消えるのが瞬時に分かった。それを忘れることは二度とないだろう。
□■
科学同好会 部室。
何故か警察は事故で処理した。おそらくNACAの圧力みたいなものなのだろう。納得はいかなかった。だが、心の片隅で”これは俺自身が生んだ悲劇”とも思っていたから納得しないわけにもいかなかった。
掃除も出来ていない。暫く喫茶店YESで寝泊りをしていたからだ。告別式はもう終わった。友達と俺、科学同好会以外の大人が居ない葬式という奇妙な体験をした。
俺は泣くことが出来なかった。野放しにされているとは言え、ある意味俺が殺した。あの時のミーティングで睦美の言う通り、きちんとした研究機関に送り届ければ・・・。
「くっそっ!」
残念ながら時間は戻ってこない。そして、鏡姉妹は宇宙に殺された。神にだけ懐くペットに・・・。
「くっそっ!」
だが、脳裏に浮かんだのはあるイメージだった。
あの時、ミーティングの時も俺は分かっていた。どこかでガリレイ冷蔵庫は手放すべきだと。
他も一緒だと。
だが、サヨさんはきっぱりと断った。見る限り迷い無く。
そこで再び、疑問が生じた。
これは単なる偶然なのか?
鏡睦美の姉の変死。名古屋でのオーロラ発生。NACA職員200名を乗せた飛行機の墜落。宇宙空間を発生させたガリレイ冷蔵庫。そして、NACAの襲来と睦美の殺害。
放っておいたツケだろう。調べざるおえなかった。それが俺に出来る罪滅ぼしでもあったし。
□■
同時刻 科学同好会 部室。
「・・・・。」




