第十一話
「やれやれ、輪島君は・・・」
国松を呼ばれた男は心外そうに首を振った。
そして神妙な顔持ちで語り始めた
「今更輪島君にアレコレ言われるのは別にどうでもいい。
しかし、今はそんな状況じゃないだろう?時音お嬢様も力を開花させた。
奴らはそういう事には特に敏感だ、情報はすぐに回る。
侵時堂[シンジドウ]が動き出す前に手を打たねばならぬ。」
侵時堂?
また新しい単語が出てくる。
「そんなこと位百も承知ですよ、国松さん。時音ちゃんを連れて避難します。」
「そんな悠長なことを言ってる場合か?幾つもの狭間を奴らに抑えられたぞ」
「大丈夫ですよ。時覇[ジハ]は抑えられてないでしょう?」
意味ありげに言った言葉に国松は信じられないと目を見開く。
「馬鹿な!?お嬢様は先ほど能力を開花させたばかりだぞ!そんな・・・
「時音ちゃんはそこらへんの巫女とは違う。国松さんも思うでしょう。」
少しの間があった。
「ほとほと呆れる男だ。」
「いいえ、それほどでも。」
話は済んだらしい
廻はくるりと時音の方に向いて手をとった。
「さぁ少し場所を離れようか。」
「時覇という場所ですか?」
「そうだよ。この場所はかなり精神的にも肉体的にもくる場所なんだ
覚悟はできてるかい?」
じっと時音を見つめる。
「拒否してもどうせ連れて行くつもりでしょ。」
「ご名答。それじゃ行こうか。」
「どうやって?」
廻の口ぶりからするとかなり遠い所にありそうだ。
それもとても危険な場所
「僕に掴まってて。」
差し出された手をゆっくりと掴んだ。
おそらくさっき時音がしたことを廻がするのだろうと推測した。
ならばしっかり掴んでなければ振り落とされるだろう
「それでは行ってきます国松さん。きちんと奴らの足止めをして下さいよ。」
「心配するな、時音お嬢様に危害を加えるのではないぞ。」
真摯な面持ちの国松に廻は了解と小さく呟き、軽く一回転した。
また頭が割れるような感覚に襲われながらも強く廻の手を掴んだ。
まるでこれからの困難に立ち向かうように強く
場所を移動するようです
平凡な少女は一体どのような目にあってしまうのか・・・