第九話
時音は色取り取りの花達に目を奪われていた。
ふと、目を横にやると人口に開けられた小道があった
「この小道を進んだ先に時音ちゃんのお母さんがいる。ここから先は一人で行くんだ。」
「あなたは?」
「時音ちゃんが戻ってくるまで待っているよ。」
「分かりました。」
廻に背を向け、小さく息を吐いて時音はゆっくりとした足取りで歩き始めた。
「綺麗な庭・・・」
周りを見渡しながらぽつりと呟いた
だが、初めて来た土地、それも異空間だから、恐ろしく感じる。
もしかしたら、帰れないんじゃないか・・・?
もしかしたら、今から会うのは本当の母親じゃないのか・・・?
嫌な考えが次々とこみ上げてくる
するとずっと奥に急に開けた場所があった。
「あそこにお母さんが・・!」
居てもいられなくなって時音は走り始めた。
嫌な考えなんか全て飛ぶくらい走った
あとちょっと!!あともうちょっとで・・・!
走り抜けたその先は・・・
「え・・」
なにか建物があると思ったのが、そこには何もなかった。
また夢の中の白い空間。
でも、誰かがそこに居た。
時音はそれを五感で感じていた。
優しく心地よく柔らかな香りが鼻腔をくすぐる。
不思議と気持ちに余裕が出てきた
「お母さん・・・?」
何もない空間に問いかけてみたが、返事はない。
でもそれが答えだと時音は思った。
(何を言えばいいんだろう)
たくさん聞きたい事はある。
時空の事とか玖内家のこと
今暮らしている人たちの正体。
いっぱいあるのに何から切り出せばいいのか分からない。
「大丈夫よ」
空間を揺らす程の大声を出している訳ではない。
けど、その言葉はずっと木霊していた。
「詳しいことは言えないわ。でもあなたの側には常に味方がいるから。」
優しく諭すような声
いつの間にか
今、自分が立っていた白い空間はなかった。
目の前にはまた色取り取りな綺麗な花が咲いていた。
「お母さんには会えたかな?」
「廻さん・・・。」
ぼうっとしている時音の顔を心配そうに廻は覗き込んだ。
「時音ちゃん?」
「えっ、あぁ。ごめんなさい。気配だけ分かったよ。優しそうな人。
私のお母さんなんだから、こんな言い方はおかしいかな。」
困ったように時音は笑う。
そして顔を引き締めて廻に尋ねた。
「お母さんは何も教えてくれなかった。だから廻さんの知っていることを全部教えて欲しいの。」
時音の真剣な顔を廻はじっと見つめ、視線をどこか空を睨み付けるように
見上げた後、ぽつりぽつりと躊躇するように時音に尋ねた。
「本当に説明していいのかい?時音ちゃんにも危険が来るかもしれない。
元の生活には戻れないよ。」
「それでも良いです。とことん聞いてやります。」
溌剌と言い返した時音にどことなく寂しげな笑みを浮かべてゆっくりと話し始めた。
お、お久しぶりの更新です。
自分自身設定とかが飛びそうになっててわたわたしてます
3ヶ月ぶりの更新って・・・(; ・`д・´)