表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

003 投資屋 ―ギャンブラー―

前回はピンキリで言うと「キリ」な収監者へたれ物語おはなしでした。

今回は「ピン」な収監者とうぼうしゃ物語おはなしです。


淡々と、粛々と……

   投資屋ギャンブラー




 一時期むかし最高学府(とうだい)在学中から『若き風雲児』なんて呼ばれていた二〇代の若造だった。


 強気で、押せ押せで、無謀とも言える賭けにも出た。


 一日に百万二百万はザラ、時には数千万なんて利益(もうけ)も叩き出して見せた。


 われて裏金の洗浄(マネーロンダリング)にも関わった。匿名信託基金(ファンド)形式で。


 バブルが崩壊するまでは。


 今は――


 かくまわれて、隠家提供者(スポンサー)の為に小金を稼いでいる。



   * * *



 ここが、どこなのかは、判らない。


 あの――バブル崩壊で組んでいた信託ファンド全てが崩壊し(マイナスになっ)た――日、数日前に義理で参加した与党政治家のパーティーで五分ほど(すこし)会って挨拶しただけの男――ジェイエル興産グループの総帥と名乗り名刺を貰った――が私の前に現れて、言った。


『逃がしてさしあげましょうか?』と。


 その、悪魔の囁きに……


 思わず、うなずいた。


 すると、いきなり目の前が真っ暗になり……


 気づいたら、『ここ』にいた。


 ここが、どこなのかは、判らない。


 部屋のイメージとしては……標準的なひとり住まい用ワンルームタイプのマンション、なんだろうか?


 天井まで三メートルほどの高さで広さは八畳ほど。寝心地の良い本革張りのソファーベッド、座り心地の良い椅子、大型液晶テレビ、Hi-Fiオーディオシステム、大きな仕事机の上には光通信ネットワークに接続された投資用パソコン(モニター三つ)、省スペースのシステムキッチンに冷蔵庫、バス・トイレは当然分離でシャワー付き。


 頼めば新鮮な食材、料理なら和洋中からファストフード、世界中の酒から書籍雑貨に至るまで全て届けてくれる専用電話(ホット・ライン)


 至れり尽くせりな(みたされた)生活。と言った感じだが……


 この部屋に窓はない。外にも出られない。出る気はないが。


 天井には監視装置(カメラとマイク)があり、常に私の行動は監視モニターされている。


 パソコンも投資しごとの為に使うとき以外――「某ちゃんねる(けいじばん)系」とか、「小説家になろう」とか――のサイトは一切入力(かきこみ)出来ない。


 この部屋で私はひたすら相場を張り(ギャンブルし)続けている。


 この満たされた不自由な生活を続けるべく。


 都市そとに出たら――元の(アブない)金主(スポンサー)たちに追われて――命が保証さ(いきてら)れないから。



   * * *



 月一千万円。


 それが現在いまの私に与えられた純益目標(ノルマ)だ。


 三ヶ月マイナスを出すと……終わり。


 隠家ここから追い出されて……想像し(かんがえ)たくない。


 月末の投資報告書(レポート)を書きながら、今月も生き延びられたことを実感する。


 また、来月も生き延びられますように……


 隠家ここに来て二十数年、もう中年を通り越して初老と呼ばれるおのれの顔を鏡に映しながら、祈る。


 神? 悪魔? 別に何でもいい、私を助けてくれるものに、祈る。


 また、来月も生き延びられますように、と。

逃げ込んだ人間は、自分の保護料金たいざいひようを自分で稼がないと追い出されるのです。

彼はあと何年、逃げられるのでしょうか?

時効? 闇の世界(アンダーグラウンド)には時効なんてないのですよ……


さて、次回は……収監者クズガキ物語おはなしの予定です。

期待しないで待ってて下さい。


予定は未定、決定ではない。ですから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ