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001 看守 ―かんしゅ―

続きです。淡々と……

   看守(かんしゅ)




 ジェイエル興産グループ――


 バブル崩壊前から不動産中心に第一次産業から第三次産業まで幅広く手を広げ、崩壊後の不況の続くこの国で『そこそこの』収益を上げている企業グループ。

 元は関西の地方財閥で社名変更でこんな名前になったが……ってそんな事はどうでもいい話。


 で、その経営する大規模商業住居複合型施設――ぶっちゃけ(高級)店舗付きマンション。いや億ション――、『第一ジェイエルハイツ』で『警備員』名目で『看守』をやってるのがこの俺だ。


 この不況の中、体育会系(のうみそきんにく)留年生(ダブり)の俺が『大企業グループ』であるジェイエル興産の末端――の警備会社――とは言え『正社員として』入社出来たと報告した時には大学(がっこう)の同級生も後輩も顧問の先生も『驚天動地ぽかーん』って表情で俺の顔をしばらく眺めていたが……ってそれもはっきり言ってどうでもいい話。


 とにかく、今、俺はこの巨大マンションにある私設刑務所プライベイト・ジェイルで看守をやっているんだよ。




 第一ジェイエルハイツ――


 表向きは――何度も繰り返すようだが――(高級)店舗付き億ション。


 建っているのが首都近郊の都市(まち)の繁華街の中心(まんなか)、と言うことで人の出入りも多く、日常の集客力も高い。


 こんな建物(ところ)私設刑務所プライベイト・ジェイルだなんて誰が思うか考えるか?


 誰だってちょこっとそんな話をしただけで『寝言は寝てから言え、この(以下略)』だろう?


 刑務所ジェイル、なんて言ってるが実際のところは幾つかの使い道があって、


 一つは『依頼主クライアントが、知りすぎた人間だが有能な(つかえる)ので殺したくはない、が、だからと言って世間シャバに居てもらっては――いろんな意味で――困る』人間の『一時預かり所』。


 一つは『依頼主クライアント自身が、世間から身を隠すための隠れ家』。あるだろ? 『疑惑の何とか』とか『疑獄の関係者』とか『出廷する気がない重要証人』とか、そんなのの『隠れ家』。


 そして……『法律では裁けない、裁き切れないが、二度とこの世に出られては困る人間の永久保管庫』……ま、こっちの方は気にするな。あんまり深く追求すると『ここ』の世話になることになるし。


 ま、そんな訳で刑務所ジェイルってのは特に三番目の連中にとっての意味なんだが……他にもなんのかんのシガラミでここに放り込まれたり自主的に入ってきたりしてる連中もいる。

 費用あずかりだいは当然税金じゃなくて依頼主(クライアント)財布(ふところ)から出てるので、そいつら(クライアント)が『もうお金出せないの……』って言った時点で……あ、まぁ……想像してくれなくてもいいよ。


 ま、そんな連中、有象無象の管理(せわ)をしている『看守』の一人が俺ってわけだ。


 あ……ちょっと長話しをし過ぎたな……そろそろ出ないと勤務時間(しごと)に間に合わないし、また今度時間が取れたら話してやるよ。

 いろいろ面白いことが起きてるんだぜ。


 そいじゃな。



   * * *



『……次のニュースです。ジェイアール中央線◆◆駅で人身事故があり、会社員の男性が……』

『この刑務所(かいしゃ)には、口の軽い人間は不要いらない』オーナー談。


ネタばらし。ジェイエルってのはジェイルの綴り替え(アナグラム)。特に意味はない。

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