ないないしちゃう
「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ─────っ!マジ壊れてんじゃんっ!許せんっ!どいつだ壊した奴はぁぁぁ─────っ!!」
怒れる客人に、一気に緊張感が解放された。
最強の襲撃者は、空から降ってきた異国人により、大地にその身をめり込ませて沈黙した。
「せっかく今日は、長風呂しようと思ってたのにぃぃ~~~~っ」
だんっだんっだんっだんっと、地団駄を踏むたびに更にめり込む身体。こちらが襲撃された側だが‥‥‥‥それはちょっと‥‥‥‥。
皆の視線が自分の足元に気付いた彼女は、─────ん?と足元を見た。そして何事もなかったかのように、スッと一歩横にずれる。
「二人ともボロボロじゃん、誰にヤラれたのさ」
─────この人なかった事にしたっ! あきらかに踏んでいたの絶対気付いたのに、するっと無視したっ!
その場にいた全員がそう思ったが、口にはしなかった。
「おお─────い、皆無事か─────」
何とも言えない空気が流れるなか、大きめに変化したフェンリルやドルクと共に、ウィル少年が走り込んできた。
そう言えばこの人達、ギルドに出掛けて行ったんだよな? こんなに早く帰ってこられる距離じゃないんだが‥‥‥‥。
「随分派手にやってくれたもんじゃな。む、こやつジークか。‥‥‥‥やっかいだな」
地面にめり込んだ人物を見やりながら、おっさんは難しい顔をした。
「誰?それ。コイツマズいの?埋めちゃう?埋めちゃう?」
手っ取り早く証拠を隠滅しようと提案をすると「逆にマズイ」と皆にすごい勢いで止められた。
「だってコイツでしょ?私のお風呂壊した奴。極刑に値するよね?」
ねっ?ねっ?と同意を求めるが、みな渋い顔だ。─────なんで?なんで?
隊長やお姫さんは無事のようだが、他の二人は明らかにダメージ喰らってるよね?コイツ〆てもいいんじゃね? 風呂壊したのコイツだよね?
背後にそびえる砦の建物は、今や二つの大穴が開き、中が丸見えの状態だ。その惨状に何故か「隊長‥‥‥‥」「え、俺が悪いの?違うよな」と何やらコソコソ話し合っている。
そして何故か「コイツがやりました」と小学生がチクってくるような返答が返ってきた。
「じゃあ埋めていいよね?今ならもう一回、腹のど真ん中ぐって踏んだらナイナイしちゃうし?」
そう言って片足を上げたところ、お姫さんに全力で止められる。
『待って待って、リオさん!この人有名人だし、そこそこ社会的身分のある人だから、埋めちゃうとマズいんですよっ!』
『ええ~~~ダメなの~~今なら誰にもバレないって~~』
『いや待って、バレるからっ!なんで今ならバレないって事になるの!?』
グイグイと腕を引っ張られ、足が届かない位置まで移動させられる。
─────ちぇ~~残念~~。




