キノコ狩り
「ひゃっはぁぁぁ─────マツタケちゃ─────ん♡!神妙にお縄につきなさ─────い」
ホホホホホとご機嫌の高笑いが森の中に響く中、松茸狩りが始まった。ガチの『狩り』である。
追われる歩行キノコ。突然現れた狩人に「あ~またうちら狙ってくる阿保がいるわ~」とばかり余裕で駆け出していたが、グングン姿が大きくなる狩人に戦慄が走った。
─────もう仲間が捕まってる~。
背後に迫る狩人の右手には、既にビチビチとはねる仲間が握られていた。ヤベー奴だ。すげぇヤベー奴が来た。
「私が美味しくいただいてあげるから~おとなしく捕まんなさ~い♡ ホホホホホ」
辺りに響く高笑い。 やべえ終わった‥‥‥‥。
「─────あれ?」
「どうした?」
森の中を、騎士服に外套を羽織った姿で歩く二人組の姿があった。
その一人が後ろを見ながら辺りを見渡す。
「なんか女の声が聞こえなかったか?」
「は?こんなところでか?」
「なんか、すごい笑い声が‥‥‥‥」
「お前!それ怖いやつ!やめろ!ここどこだと思ってんだ!」
早く合流地点に行くぞっと相方は、サカサカサカサカ早歩きで移動していってしまった。
ちょと待ってくれよ、追いかけた背後で『ヒ─────ハァ─────‥‥‥‥』今度は聞こえた、確実に聞こえた。途端に体中に震えが走る。
「え!?お前どうしたんだよ?」
後ろにいたはずの同僚が、何故か無言のまま、自分をザカザカと追い抜いていくので、思わず振り返ると『‥‥‥‥ハハハハ‥‥‥‥─────ちゃーん‥‥‥‥フハハハハハ』と響き渡る女の声。
思わず叫びそうなのを自分の両手で押さえ、そのまま駆け出す。
阿吽の呼吸で二人組は、涙目で駆け出した。
「マツタケちゃーん、まだいるんでしょ~~?どこかなどこかな~?」
上機嫌で周りを見るが、走るマツタケは見当たらない。
両手にビチビチはねるマツタケを見ながら、でもこれどうしよう?足の部分も食べられるのかな?いや、視覚的にご遠慮したい。なんか動きが魚みたいだから〆たほうがいいのかな?キノコを〆るってどうよと思いながら、とりあえず軽くキュッと握った。途端、ジタジタしていた足がぴきっと動かなくなり、やがて足の部分だけが消えた。残ったのは、店頭で飾られている、とても手が出ないお値段の最高食品である。「ふぉぉぉマジ松茸‥‥‥‥」と感動しながら、大事にポケットしまう。
もうないのかないのかと、鼻息荒くキョロキョロ辺りを見渡すが、気配がない。
「そうか、こういう時は『サーチ』!『探索』! 嘗めた真似すんじゃないわよ!マツタケ探すのよ!!」
ひいいぃぃい─────。
声にならない断末魔が、森中に響き渡った。




