ふわふわ罪つくり
「では、私はこれで失礼いたします」
心なしか顔がツヤツヤした眼鏡の侍女さんは、満足そうに扉を閉めていった。
残されたのは自分と、全身がフワッフワになった白陽。─────の目はどこか遠くを見つめていた。
「き、綺麗にしてもらったね。シロ君─────あ、こら」
何か気に入らなかったのだろう白陽は、ずりずり全身を絨毯に擦り付けていた。
「なんか変な匂いがするんだっ!」
「香油か何かでしょ?そんなこと言って、そんなボサボサにしたら、またサラさんっていう侍女さんにキレイキレイされちゃうよ?」
キレイキレイというワードが効いたのか、白陽はずりずりをやめベッドの上に上がりふんぞり返った。
「ちょっと、真ん中に寝ないでよ。ベッド一つしかないんだから」
久しぶりのベッドだ。一人用とはいえ、元の世界のサイズからすれば十分デカいが、大型犬サイズの白陽がど真ん中を取れば、自分のスペースが狭くなる。
グイグイ白陽を押しやり、ど真ん中に陣取る。
「あ~久しぶりのベッドだ~うれし~」
─────興奮して寝れないかも~と言いながら、秒で寝た。─────ぐう。
─────ぎぃゃぁぁぁぁ
─────やめてぇぇぇぇ
─────悪魔だぁぁぁ悪魔がいるぅぅぅぅぅ
寝たときは幸せだったが、野太い叫び声に無理やり起こされ、寝起きは最悪だった。
なんだなんだと、目をこすりながら窓から外をのぞくと、昨日のヘッドバンギング集団が一列に座らされ、仲良くメイドさん達に散髪されている姿だった。
─────あれ椅子に拘束されてるな‥‥‥‥。
丸坊主にされるわけでもないのに、何故ああも抵抗するのか‥‥‥‥。その心理がイマイチ理解できない‥‥‥‥。
程なく朝食が運ばれてきた。
「おはようございます。お目覚めのようでしたので、朝食をお持ちしました」
─────何故に分かった!?この人ちょっと怖いかも。そして、チラッと白陽の様子を確認もしている。ちなみに白陽は起きているはずだが、なぜかこちらに背を向けて丸まって狸寝入りをしている。
「‥‥‥‥後ほどお召物をお持ちいたしますので、‥‥‥‥失礼いたします」
なにか露骨にガッカリ感満載で、サラさんは去っていく。
「─────シロ君!君はなんて罪作りなのっ!」
「お前、何言ってるんだ」
いつの間にか起き上がり、自分用の朝ご飯をバクバク食べる白陽。
さっさと食べ終わり、そそくさと部屋から出ていく。
「‥‥‥‥逃げたな‥‥‥‥」
食事中に再び現れたサラさんは、白陽がすでにいないのを知って膝から崩れた。
フリートは風呂に入っていた。
朝から風呂に入れるという機会を、この上なく享受していた。フリート以外にも、ちらほら湯舟に浸かっている隊員もいる。主に夜番の隊員たちだった。
皆がまったりと湯のぬくもりに浸っていると、どぱぁーんと突然扉が開かれる。
─────なんだ、なんだ?と皆が確認しようとすると、何かが勢いよく湯舟に飛び込んできて頭から盛大に湯をかぶった。
「‥‥‥‥またですか」
─────広い湯舟に、サボサボとフェンリルが泳いでいた。




