安眠のため
「─────で、出た」
誰かがそう呟いたが、いや違うだろ。
あの声の主は亡者でなく、生者のそれだろう。
「─────い、行ってみよう」
─────え、行くんだ。雑用係の少年は、その言葉を口にすることを、辛うじて堪えた。
ため息が出るのをこらえて、皆に続いて足を踏み出した時、コツっと何かが足に当たった。─────なんだコレ?かまど?‥‥‥‥焼き魚?これは肉!?石と小枝でぐっちゃぐちゃだけど、まだ火が消えてから間もない感じ‥‥‥‥こんな所で焚火する人なんて‥‥‥‥。
『─────晩飯台無しにしたヤツ誰じゃぁぁぁぁぁ─────前でろやぁぁぁぁぁ─────』
─────あ、いた。
『二時の方向、五匹逃走謀ってます』
「逃がすかっ!」
ドンドンドンっ!
「おいっ!こっちに飛ばすなっ!」
危うく巻き込まれそうになった、白陽から文句が飛ぶ。
「ごめんごめん。でも、大分数を減らしたでしょ」
初手で連続爆破をかましたおかげで、大多数が爆破の餌食になった。
とはいえ、最初の爆破でビビって逃げ出した奴らを、各個撃破したおかげで、いまや残っているのは好戦的な奴らばかりとなる。
逃げるともやられると覚悟したのか、もともとやる気で来ているのかは知らないが、残りはやけに牙をむき出し、とっても可愛くない態度の奴らばかりだ。
鞘から刃を抜く。─────こっからは、刀を使いますか。
「今宵の刃は、切れ味が違うぞ」
「────?まだ、陽は落ちてないぞ」
真面目な白陽に、決め台詞は分かってもらえなかった。
「────んん゛っ。さて、最後のお掃除はじめますか」
それを合図に、グレィモンキーの集団が奇声を発しながら、襲いかかってきた。
「キーキーうるさいっ!シロ君、右お願い。三つ子ちゃんの安眠の為よ。一匹残らず刈るわよ」
「当然だっ!」
─────三つ子の安眠のため。 グレィモンキーの群れは、壊滅させられるのであった。
騎士団の男たちは、幾多の戦闘を潜り抜けてきた。その輝かしい経歴に反してプルプル体が震えていた。
その元凶というべき人物は、沈みかけた夕日を背に、グレィモンキーの死体の山の上に立ち、その手には見慣れない細身の剣。近くには、目撃情報通りフェンリルらしき魔獣がいる。───── どちらも返り血であろう、全身を真っ赤に染めていた。
「─────ちっ。粗末なもんおっ勃ててんじゃねーよ」
最後に倒したのであろう、グレィモンキーのピ───をサクッと刈り取って、ペッと後ろ手に投げ捨てた。───── そうペッと。
魔獣のそれとはいえ静寂の中、てんてんてんと転がっていくソレを見ながら、自分のモノでもないのに、皆、
─────腰がヒュッとした。




