でるんです‥‥
「出立─────」
まだ陽も昇らぬ暗がりの中、騎士団の一団が砦から列をなして出てきた。
「隊長。盗賊退治ですよね?こんなに人数揃える必要あったんですか?」
隊員は討伐対象の盗賊が、それほどの規模とは思えなかったが、自分の後ろには過剰とも思える戦力が列をなしていた。それに付随する荷車も続いている。
「行先が行先だからな。さすがに魔獣の巣窟の奥地って訳じゃないが、相当数の冒険者が依頼を受けたが、誰も帰還してないらしい」
本来これぐらいの案件ならば、冒険者ギルド内で片が付くはずだが、それがかなわなかった。この盗賊は従来とはなにかが違うと踏んで、多めの人数となったのだ。
「お嬢が引き受けちゃったからな~」
軽い口調で会話に乱入してくる奴を、隊長は睨みつける。
「ラング!姫様と呼べと何度注意しましたかっ!」
自分が注意する前に、隣にいたフリートが声をあげる。それからいつもの小言が続くのだが、当の本人は「だって、お嬢がそれでいいって言うしさ~」とまったく聞いてない。確かに我らがお守りする姫様は、その身分に驕ることはなく、下級騎士や平民、農民達にも分け隔てなく接してくださる。
それゆえ、砦には各町の代表や村長、挙句の果てにはギルド長までがやってきて、姫様は、それに応える事となった。
「姫様はご自身の体が芳しくないのに‥‥‥‥」
「ご自身は大丈夫だからと、押し通されましたから」
姫様は代表者達に直接会ってはいない。会える状況じゃないのだ。
それでも、彼らの訴えを聞き入れ、答えてやってくれと私達に頼んだ。
「冒険者も参加してるよな?」
「彼らのたっての希望です。無償でいいから自分達も参加させろと」
騎士団の後方には、冒険者たちが数人付いてきていた。自分達も黙ってられないから、参加させてくれと直談判に来たのだ。「熱いね~」とラングが呟くが、自分達も拒否する事はなく、帯同を許した。
「それに引き替え、あいつらは‥‥‥‥」
隊の主力である二人組は、行先が『深淵の森』と知るや否や、「自分達は姫様をお守りしますっ!(ビシッ!)」と、もっともらしい理由を並べて拒否しやがった。まあ、姫様の護衛を手薄にするわけにはいかなかったが「アソコハ、イヤ‥‥」「ムリ。ゼッタイムリ‥‥」と目のハイライトが消えるのは、騎士としてどうなんだ。
「隊長達も行ったんですよね、奥地まで。───見ましたか?」
─────何を?三人して首をかしげるが
「あの二人組、言ってたじゃないですか。────出るって」
確かにあの二人組は、奥地から帰ってきた時「出た!出たんだ!」「めっちゃご機嫌で笑って」「‥‥あの森にはきっと出るんだ」「「コワい」」としばらく部屋から出てこなかった。
「真っ昼間に亡霊が出るかよ」
「目標物も見つかりませんでしたしね」
「あったのは魔獣が争った痕跡ぐらいだったな‥‥‥‥」
─────頭〇字 G
────三人同時にぞわっとする。
倒してくれたであろうフェンリルに、そっと感謝する。
「すごかったんですか?自分も見たかったな~」
なんてお気楽な感想をもらす隊員に「やめとけ」と忠告する。
うっすらと夜が明ける気配が漂ってきた頃、前方に『深淵の森』の姿が見えてきた。
相変わらず規模がでかい。これでも『深淵の森』のごく一部らしいから、一体全体どれだけ広いのか。
「───おい。何かくるぞ」
─────お気楽ムードは終わりを告げた。




