ゴミ箱には蓋
周りを取り囲んでいた魔獣どもが、飛びつかんばかりに疾走してきた。
「きゃ─────(棒)」襲われる~と悲鳴を付けてあげてみたが。シロ君からは半眼をいただいた。ヤダ、お姉ちゃん悲しい。
十分引き付けたところで、─────ほいっと、シロ君と仲良くタイミングを合わせて飛び上がる。
目標物を失った魔獣は、そのままの勢いで私達の下を通過し、面白いように穴の中にボッシュート。
─────行先の穴の中で、阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡った。
「見た!?シロ君!E難度の技が出来たよ!」
「遊ぶな!残ってるやつ全部落とせ」
シロ君が褒めてくれない八つ当たりを、取りこぼした魔獣をはたき落とす事で晴らした。
穴の中は地獄絵図。
錯乱した人と獣の殺し合い。獣同士の喰い合いと血の匂いで酷いありさまだ。
「‥‥‥‥た、たすけて」
あ、ピンクローブあちこち喰われてるのに、まだ生きてる。悪運強いね。─────慈悲?ないよ?私は寛大な精神は持ち合わせてないからね。
「大好きな獣に喰われて幸せでしょ?みんなで笑ってたもんね」
手を振りかざし、ワザとゆっくり穴の口に蓋を作っていく。
ピンクローブが何か叫んでいるが、聞く義理はない。
「自分の女神さまに祈りなよ。ピンク頭によろしくね」
─────イッテラッシャイ
ピチッと、そこに穴の存在などなかったかのように塞がれた。
「ゴミ箱には蓋しないとね」
先ほどまでの騒音は、蓋が閉められたと共にピタリと止んだ。
穴のあった所をシロ君がフンフン、カキカキしています。この蓋壊れないかって?ないよ~百年ぐらい蓋されたままじゃないかな。地殻変動とかなければねっ!
「‥‥‥‥あと、どうしようか」
残されたのは、人であったろう亡骸。さすがにこのままだと、新たな獣が寄ってきたり荒らされたりして、色々問題だろう。
─────持っていく?いやいや損傷が激しすぎるし、遺族とかいてもトラウマしか生まないだろう。
「‥‥‥‥取りあえず回収しますか」
『あちらの洞窟にも置いてあります』
覗いた洞窟には、女の人や小さな子供らしい亡骸が、山の様に詰められていた。
「嘘でしょ?アイツら、もっと酷い目に遭わせてやればよかった」
シロ君が辺りをフンフンしている間、自分は亡骸の回収にいそしんだ。
回収は済んだが、遺族に会ったとして、遺体を返すのはためらわれた。どれも損傷が酷かったのだ。
空を見上げると、白々と闇が薄くなる中、遠目の山の中腹に丘があるのが見えた。
登ってきたのは山の中腹あたり。
見晴らしがよく、ちょっとした展望台のようだ。眼下には森の切れ目が見え、遠く霞がかった向こうには、人工物らしき建物が立っているのが見える。
─────やっと人の住んでる気配がある所まで来た。
「こんなところに登って、どうするんだ?」
「うん、とりあえずこの辺でいいかな?」
一番広い平らな所を選んで、ボコっと大きめの穴を掘った。 そこへ回収した亡骸を下す。
普通のを出すと爆発しちゃうから─────そうだ。
「『浄・炎』」
穴の中で、赤と金色の炎が舞い上がった。
舞い上がる炎を見上げながら、ポスっと白陽にもたれかかる。
「この炎、熱くないんだね」
「浄化の炎だからな」
炎と空を見上げていると、だんだん夜が明けてきた。
─────ふよっと突然目の前を、光の球が通過する。
んんんっ!?と目を凝らすと、浄化の炎から光の玉が、フワンフワンと次々湧いている。
待て待て待て待てっ!まさか、コレはあれか!?自分がなってしまった、魂の玉みたいなやつじゃないのか? ああっ!そっち行っちゃだめ!あんたはどこ行くのっ!
炎から湧き出した光の玉は、あっちにふよふよ、こっちにふよふよ飛び回る。
「なんだこれは?」
白陽も数個の光玉にふよふよ囲まれて、どうしたもんだとウロウロする。
「た、たぶん人の魂みたいなものだと思うけど?あれ?この世界は天に上るとか‥‥‥‥」
────頭によぎったのは、ピンク頭。
あ゛?天に上るってアイツの所に行くとかになるの? そんな事は許さん。
登ってきた陽に向かい、大声で叫ぶ。
「『天に願う』!魂たちを、正しき場所へ導けっ!」
『あい わかった』
────返事と共に、光の柱が降りてきた。




