ゴミそうじ
「ゴミはゴミ箱に捨てないとね~」
「ソレを出す意味あったのか?」
シロ君が刀をフンフンしながら訊ねてくるけど、何かしら臭うのかしらね?
「様式美よ!これを持って登場する私!正義の味方って感じ! 」
くふふふふっとポージングする莉緒の隣で、白陽は「たぶん違う」とため息をついた。
人間どもは穴に落ちたが、まだ周りは雑多な魔獣が取り囲んでいる。人の血と肉の味を覚えた奴らは面倒だ。こちらの隙を窺うように、様子見をしている目つきが気に入らない。
蹴散らすのは簡単だが、リオに待てと言われていた。
「お~、案外丈夫なんだね~」
穴の縁にヤンキー座りで覗き込みながら、下で喚いている男らを眺めている。
落ちた時のダメージは、さほどなかったようだ。ホント変に丈夫。おかげで穴の中で罵詈雑言の大合唱。いや~とてもさっきの女の子には聞かせられないわ~。
「酔っ払いの騒ぎって嫌いなのよね~。ホント周りの迷惑考えないからさ」
「貴様っ!この私を誰だと思っているっ!女神の下僕たる私にこの仕打ち!許されんぞっ!」
「いや、アンタなんか知らんし。あんた虐めたら何?女神さまが仕返しに来るの?ピンクの女神さまとやらが?」
─────ナニソレ?タノシミ。
ニコォと笑顔で答えてやると、なぜか顔色悪く、男どもが後ろへ下がった。
「─────くそっ」
男が杖を振り上げ詠唱を始めた。────が、その手から杖が消える。
「何これ?魔導士の杖って奴?神官じゃなかったの?詐欺じゃん」
刀をアイテムボックスにしまいながら、杖を両手に持って眺めるが「デザイン、ダサい」と言いつつ、まるで小枝を折るかのように、ポキポキとワザと細かいクズにして本人の前に落としてやる。最後に残った宝石っぽい石は、握りつぶして砂にしてやった。
杖だった物の残骸が、目の前にボトボトと落ちてくるのを、信じられない思いで魔導士は見せつけられていた。「後、詠唱?長くない?」ニヤニヤと上から見下ろしている女を睨みつけるしかなかった。周りの奴らが「どうにかしろっ!」とせっついてくるのも腹が立つ。使えない奴らだ。喚くか、攫った女共をいたぶるしか脳がない。
女の後ろにフェンリルが顔を出すのに気が付く。見ておれ、女。────自分にはまだコレがある。
「なに煽ってるんだ。あいつ何かしてくるぞ」
「バッチコーイってね」
なんだソレ?って首をかしげるシロ君、かわいい。
「ハハハハハッ!馬鹿めっ!俺様にはコレがあるんだよっ!己の従魔に喰われてしまえっ!」
神官改め詐欺師は、懐から嫌な匂いを放つ丸い石を掲げた。
「「‥‥‥‥」」
─────何も起こりません。
私とシロ君は、二人そろって首をかしげます。
「何か、変わったことでもあった?」
「いや?穴の中が一層臭くなっただけだな」
そうだよね?あんな狭いところで変な匂いを出したら、充満するだけじゃん。ほら、周りの奴らが匂いにむせて、転げまわってるじゃん。
「─────くそっ何故だっ!なぜフェンリルに効いていない!」
「私のかわいい弟に、そんなちゃちな術が効くわけないじゃん。馬鹿なの?」
さっき馬鹿って言われたから、返してあげました。桃ちゃんでシロ君は耐性つけたから、効かないんだけどね。
ただし周りの魔獣はざわつき始め、こちらに唸り声をあげながら集まりつつある。
その声が穴の中にまで聞こえたのだろう。男は術の方向を変えた。
「我に従う獣どもよっ!その女を喰い殺せっ!!」
途端に集団の魔獣の咆哮が響き渡った。
女とフェンリルが、覗いていた縁から消える。
聞こえてきたのは、女の悲鳴。
「フハハハハハっ!ざまあみろっ!この俺様を馬鹿にす─────」
上から黒い何かが、大量に落ちてきた。
肩に強い痛みを感じて、正体を見ると肩に喰いついているのは、女にけしかけたはずの魔獣。何故、自分が逆に襲われている?ナゼだっ!と思ううちに今度は足を喰われる。
周りの奴らに何とかしろと振り返れば、男たちは皆、魔獣に襲われていた。




