三つ子は見た
「いっちゃったね」
「ようやっと、行ったかの」
‥‥‥‥いやぁ‥‥‥‥モフ‥‥‥‥
かすかに聞こえる叫び声。
なんかよく分らない、「三つ子ちゃんのモフを充電するのだ」と、いつまでも終わらないモフりに、しびれを切らした息子が襟首を咥えて駆けていったのだ。
なんとも締まらない旅立ちだった。
自慢の息子が外の世界へ旅立つ。何とも感慨深いものだ。何を見てくるのであろう、どれぐらい強くなるのであろうか。
あのリオと一緒なのである。‥‥‥‥ちょっと不安もあるのだが。
リオには自分の目の前で、息子に名をつけるよう言った。
─────かつての自分のように。
突然言われて、リオはうんうん唸っていたが、やがて『白陽』と名付けた。
名が定まり、自分の息子が輝くのを見て、ちょと感動したのは内緒だ。
自分の時は見れないからな。
─────きっと雄々しくなるだろう。
「いつまでもちゅとおもう?」
「さすがにすぐじゃないでちょ」
「でも、あんがいはやかったりちて」
残った三つ子達が、旅立った二人の方角を見ながら、何やら話している。
「子供たちよ。何の話じゃ」
何故かいやな予感がする。
「かあたま、りおがこんどいちゅくるかでしゅ」
─────いや、たった今旅立ったばかりで何故そうなる。
「また来たとしても、しばらく後じゃろう。そうだな、お主らがもう少し大きくなった時じゃろう」
「でも、りおがちっちゃいときはいまだけとか、いってまちた」
「モフがたりなくなったら、またすぐくりゅって」
「─────すぐ?どういう事じゃ」
「りおが、めじるしだって」
「あそこにつけてまちた」
ここでしゅ、と三つ子が案内したところには、自分達のねぐら近くの岩場に『印』が施してあった。
「『転移』ゲートの印ではないか、いつの間に‥‥‥‥あやつこんな事も出来たのか‥‥‥‥」
煩悩丸出しモードの時には、いかんなく精巧な技を繰り出す事が出来る、莉緒の欲望まっしぐらゲートの印がそこにはあった。
その周りには『ここは私のモフ聖域である!何人たりとも邪魔はゆるさんっ!』 と岩場にゴリゴリと宣誓が刻まれていた。フェンリル母さんにはそれが読めず、呪文のように見えたようである。
「なにやらおどろおどろしいが、『祝福の文字』であろうな。広範囲で結界のようなものができておるようじゃ」
─────フェンリル母さんは盛大に勘違いした。
そうかそうか、と頷く母親の後ろで、三つ子は首をかしげていた。
三つ子たちは見ていたのである。
夜な夜な岩場に、文字を刻んでいる莉緒の姿を。
げへげへと笑いながら文字を刻む姿は、とてもそんな感じではなかった。
「「「しゅくふく‥‥‥‥?」」」
莉緒の煩悩まる出し宣誓の結果、フェンリル親子の住処は、『聖域』となっていた




