いいよーいいよ─────!
「いやぁぁぁぁぁ─────シロ君に変なのがついたぁぁぁ─────っ!!」
突然の事にパニックになりながら「シロ君!シロ君!大丈夫!?ペッする?ぺっ」
─────変なの付いた!変なのっ!
まるで害虫扱いのように、とワタワタしながら、シロ君の周りをグルグル回る。
当のシロ君は、突然の事にキョトンとしながらも、チラっチラっと左右に自分の体を確認するが。
「‥‥‥‥ワウ、ワウワフ、─────ワフっ!?(‥‥‥‥いや、何もないのだが─────うっ!?)」
「シロ君─────!?やっぱり、ぺっする!?─────うぇ!?」
‥‥‥‥あ‥‥‥‥これ知ってる‥‥‥‥。
─────カッ!白陽の全身が白く発光しだした。
───── まっぶっ!なんで急に発光したの!?お母さんフェンリルの時より、目が死ぬんですけどっ!
桃ちゃんあげてないから、これは私のせいじゃないよねっ!
自分のせいじゃない。と確認している間にも白陽の体は発光し続け、そのシルエットは中型犬サイズからムクムクと大きくなりだす。
シロ君本来の大きさか?とは思ったが、その姿は更に大きくなる。
─────およ?シロ君が大きくなったぞ? お母さんフェンリル位か?
そんな事を思いながら、目が死にそうなのを我慢しながら眺めていると、薄いガラスが割れたように光の幕が散りだすと同時に、一際大きく逞しい体躯になった白陽がその中から現れた。
オオオオオオォォォォ─────ン
身に宿った力を解放するかの様に、白陽から特大の遠吠えが発せられた。
「きゃ─────っ!シロ君!カッコいいよ─────!!」
その姿に、一人お構いなしで歓喜の舞と声をあげていた。
遠くの森から、白陽につられるように、無数の遠吠えが響き渡る。
「いいよ~いいよ~シロ君~。お母さん位かな?─────いや、もうちょっと大きいかな~でもなんで急に大きくなったの?」
「‥‥‥‥ワウ、ワウわふ‥‥‥‥(いや、お前)」
‥‥‥‥マジで言ってる?シロ君の目線は、そう言っていた。
─────ん?私のせいじゃないよね? 違うよね?
「‥‥‥‥おい、フェンリルの額に紋様が出てるぞ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥こんな状況で、よく視認できますね‥‥‥‥」
「‥‥‥‥とても顔なんか、上げられないですけど‥‥‥‥」
「鍛え方が足らんな‥‥‥‥」
「‥‥‥‥違うと思います‥‥‥‥」
畏れ多いんですよ‥‥‥‥。という若いモンの言葉を無視して、ドルクはその姿を目に焼き付けていた。
まるで光の中から生まれ直したようなフェンリルの額には、リオが『特級』カードを作りだした時と同じ紋様が刻まれていた。
その紋様はあの時と同じように、ふうっと煙の様にかき消えた‥‥‥‥と同時に、指すら動かす事が許されなかった『神圧』も消えた。
「‥‥‥‥あ?」
「‥‥‥‥あれ?」
「‥‥‥‥動く‥‥‥‥」
圧が無くなった事で顔を上げた視線の先には、目を焼くほどの光は消え失せ、最初にあの場に立った者達しか残されていなかった。
「‥‥‥‥お帰りになられた‥‥‥‥」
最年長の言葉に、周りの隊員たちの姿勢が一気に崩れた。
「‥‥‥‥本っ気で怖かった‥‥‥‥」
誰ともなく発せられた台詞に、皆無言で頷き合った。
クリスティーナ姫もその場にへたり込んでおり、平気そうなのは大きくなったフェンリルの傍を、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている一人だけだった。




