『魔法学』第117巻, 53-56頁, 魔法暦1075年(抜粋)
-波動調和理論の構築:光魔法を媒介とした多属性魔法融合の原理と応用-
ルミナ・アーデルハイド1), リーシャ・アーデルハイド1), ジェイド・オルカス2)*
1)ルーンクレスト魔法学院魔法科
2)ルーンクレスト魔法学院魔法実践学講座
*連絡先著者:ジェイド・オルカス, ルーンクレスト魔法学院魔法実践学講座
<序文>
本論文は魔法理論の根本を覆す革命的発見、「波動調和理論」の基礎理論と実践応用について述べるものである。長らく魔法学の定説とされてきた「多属性魔法の同時使用不可能性」を克服する原理として、光魔法の波動媒介特性に着目し、その調和機能を実証した最初の総合的研究として、本論文は位置づけられる。
過去千年にわたる魔法研究の歴史において、多属性魔法の同時使用は「波動特性の相互干渉による無効化」という原理的障壁のため不可能とされてきた。しかし本研究は、従来補助的役割しか認められてこなかった光魔法こそが、この障壁を突破する鍵であったことを理論的・実践的に証明する。
ルーンクレスト魔法学院での実験的研究から発展した本理論は、魔法史における新たな時代の幕開けとなる可能性を秘めており、今後の魔法応用と教育に多大な影響を与えることが期待される。
<前文>
光魔法の再評価
1. 光魔法の歴史的位置づけ
魔法史において光魔法は常に周縁的位置に置かれてきた。古典期の魔法分類においては主要四属性(火、水、風、土)から区別され、「副次的属性」として分類されるのが通例であった。この位置づけの主要因は、以下の二点に集約される。
第一に、実用性の観点から見た相対的価値の低さだ。火魔法が熱と燃焼をもたらし、水魔法が物質の流動性と浸透力を、風魔法が速度と精密な制御を、土魔法が堅牢性と重量を操作する一方で、光魔法は主に照明や視覚効果を生み出すにとどまるとされてきた。つまり、他の属性が物質世界に直接的な物理変化をもたらすのに対し、光魔法の効果は視覚的認識の範囲を超えることが少なかった。
第二に、探知魔法の発展に伴う戦術的価値の低下が挙げられる。魔法使いの間で探知魔法が標準的技術として普及した結果、光による目眩ましや幻影といった効果は大幅に減じられた。魔法使いは視覚に頼らずとも探知魔法によって周囲を感知できるため、光魔法による視覚効果の多くは実戦において無力化されるという認識が広まった。
このような背景から、光魔法は魔法教育においても補助的な位置づけしか与えられず、その結果として専門的研究者も限られ、発展の機会を逸してきた。古来より「光魔法は入門者のための魔法」といった格言が伝わるほどに、本格的な魔法研究においては周縁化されてきた。
2.波動特性に関する新たな視点
しかし、これまで見過ごされてきたのは光魔法の持つ固有の波動特性だ。主要四属性の波動がそれぞれ物質に直接作用する性質を持つのに対し、光の波動は物質と非物質の間に位置する独特の性質を持つ。その本質は物理的作用ではなく、情報の伝達と変換にある。
特に注目すべきは、光の波動が他の波動と「干渉」するのではなく「調和」する可能性を持つ点だ。自然界においても、光は水との相互作用によって虹を形成し、さらには異なる物質を通過する際にその特性を変化させながらも本質を保持する。屈折、反射、散乱といった現象は、光が環境に応じて適応しながら存在し続ける能力を示している。
このような光の調和特性に着目し、従来の「干渉による無効化」という定説を再検討した結果、魔法理論における画期的転回点に到達した。光魔法を「調和の媒介」として用いることで、異なる属性の魔法を同時に発動させることが可能となった。
ただし、光魔法の波動を調和の媒介として用いるためには、通常の光魔法操作とは異なる特殊な制御技法が必要となる。光魔法使いの絶対数が少ないことに加えて、この特殊技法を発見できる熟練者がさらに限られていたことが、波動調和現象の発見を遅らせた主因の一つと予想される。
この発見は、光魔法がこれまで軽視されてきたことに対する皮肉的な帰結とも言える。主流とされた属性に専念する研究者が多い中、光魔法の可能性を探求する者が少なかったからこそ、その独自性は長らく見過ごされてきた。
しかしここにきて「光魔法は入門者のための魔法」という言葉はその意味を大きく転じた。真実は光魔法こそが魔法を次の時代へと進める入り口であり、鍵だったのだ。
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