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魔法の名門・アーデルハイドの双子姉妹〜秀才姉は天才妹の底を知りたい〜  作者: 金石みずき
第二章:ルーンクレスト魔法学院魔法大会

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第二十二話

「どうやって対応してくるかなって思ったけど、まさかあんな手を使ってくるとは思わなかったよ」

「やっぱり実力を隠していたんじゃない」

「……今はそういう話、してないよね?」


 だいたいそれならお姉ちゃんも隠してたじゃん、と少し不貞腐れたようなルミナの呟きが耳に届いた。


 だがそれも一瞬のこと。すぐにルミナの表情が元の楽しげなものに切り替わる。


「さっきも言ったけど、わたしはいつも全力でやってるよ。今もそうだし、これまでもそう」


 嘘おっしゃい、とリーシャが反論しようとするが、その前にルミナが「ただ――」と続けた。


「ただ?」

「お姉ちゃんの全力がわたしの全力ってこと!」

「……そういうことね」


 リーシャは納得して頷いた。やはりリーシャの直感は間違っていなかった。


 ルミナは意図的に力を抑えていた。ルミナの全力とはリーシャに合わせた全力のことであり、その範囲で最善を尽くしていたということなのだろう。


 だけど、もちろんそれでは足りない。


「その先を見せてはくれないの?」


 リーシャが問いかけた。


「……引き出してみなよ」


 対するルミナの表情が、まるで挑発するようなものに変化する。目が細められ、頬がつり上がった。


「お姉ちゃんならできるはずだよ――自信、あるんでしょ?」


 ルミナが杖をリーシャに向けてくる。


 リーシャもまた、ルミナに杖を向けた。


「……当然っ」


 この言葉が、試合再開の合図となった。


風の矢・複数ヴェントゥス・サジッタ・ムルティプレクス――連続(コンティヌウス)!」


 リーシャの周囲に一〇にも上る複数の風の矢が生成され、ルミナに向かって放たれる。それだけでは終わらず、さらにその工程が何度も繰り返されていく。


 それはさながら風の矢の雨となって、ルミナを襲った。


水の渦・包囲アクア・ヴォルテクス・キルクムダンス


 ルミナが水の渦を自分の周囲に展開し、身を守ろうとする。


 先ほどまでなら止められた攻撃だが、今のリーシャには追加の手段がある。


「――貫通(ペネトランス)


 新しく生み出された風の矢に、貫通力を上げるための回転が加わる。風の矢が空気を切り裂くような音を上げて、ルミナに向かって放たれようとする。


 しかしルミナも、ただ闇雲に水の渦を出したわけではなかったらしい。


水の爆発・連続アクア・エクスプロシオ・コンティヌウス!」


 複数(ムルティプレクス)連続(コンティヌウス)貫通(ペネトランス)と、追加効果を与えるたび、リーシャの風の矢の発生はわずかずつだが遅延していった。


 本来であればその隙を連続(コンティヌウス)が埋められたのだが、水の渦によって数秒の空白時間が発生した。


 そこを狙い撃ちにされ、リーシャの周囲に連続して飛来した水の塊が、爆発、飛散する。


 生成されようとしていた風の矢は当然耐えきれず消失し、再生成しようとしてまた消失。連鎖により、リーシャは風の矢・複数ヴェントゥス・サジッタ・ムルティプレクス――連続(コンティヌウス)を破棄せざるを得なくなった。


 そして水の爆発が巻き込む対象は、風の矢ばかりではない。当然、すぐ近くのリーシャも同じこと。


 試合開始以降、初めてリーシャが防御に回った。


「くっ……風の障壁・包囲ヴェントゥス・バリエラ・キルクムダンス! |風の加速・強力《ヴェントゥス・アクセラティオ・フォルティス》!」


 リーシャは自分の周囲に風の障壁を展開。同時に風で補助しながら後ろに飛んで距離を取り、その場から脱した。


「まだまだいくよっ!」


 ルミナが駆け出し、そんなリーシャを追いかけてくる。


水の鞭・六重アクア・フラゲッルム・セクストゥプレクス!」

(セクストゥ)――っ!? ……ヴ、風の刃・六重ヴェントゥス・ラミナ・セクストゥプレクス!!」


 三本でも厄介な水の鞭が六本も!? と驚愕するリーシャだったが、ただ黙って食らってやるわけにはいかない。いつもと同等の威力であれば、一発食らっただけで身体保護結界セプトゥム・プロテゴ・コルプスが発動してしまうかもしれない。


 ルミナの水の鞭には、そのくらいの威力がある。


 リーシャのすぐ近くまで迫っていた一本目の水の鞭が、風の刃によって切断される。


「あはは! 楽しいね、お姉ちゃん!」

「どこがよ!」


 二本目も同様に対処できたが、三本目でとうとう外してしまう。そのまま身体に当たってしまうかと思いきや、かろうじて間に合った四枚目の風の刃によって切断。


「――ト、三重(トリプレクス)!!」


 リーシャは一本ずつ対処することを諦め、追加の詠唱によってさらに三枚の風の刃を追加。合計五枚の風の刃を撒き散らすことで、なんとか残る三本の水の鞭も一掃できた。


「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ」


 高度な魔法を連発したことで、肩で息をするリーシャ。額の汗を拭って呼吸を整えるまでの間、ルミナは少し距離を取ってリーシャを見ていた。


 相変わらず挑発的な笑みはそのままで、リーシャには「こんなものか」と言っているように思えてならなかった。


「……これで全力?」


 リーシャが問いを投げかけると、ルミナは表情を崩さず答える。


「どうだろうね」


 何よりも雄弁な答えだった。やはりまだルミナは()を見せていない。


「ふ――……っ」


 リーシャは深呼吸して、心臓を落ち着かせる。


 バクバクと早い鼓動は、疲労か高揚感か。


 おそらく両方だ。


「やっぱり私の目は間違っていなかった」


 ――覚悟を見せよう。


「諦めるの?」

「いえ……」


 ルミナの問いに、リーシャは首を振る。


 そして決絶とした覚悟で告げる。


「私も本気を出すわ」


 そう言って、リーシャは戦闘の余波で崩れた一塊の瓦礫に向かって唱えた。


土の粒・微小テラ・グラヌラ・ミニムス


 リーシャの指した瓦礫がさらさらと崩れ、砂へと変わっていく。


 できあがった一山の砂に目を向けたルミナの表情が、困惑したように歪んだ。


「これが本気……?」


 意図がまったくわからないといったふうな疑問を孕んだ声。


 しかしリーシャは否定する。


「いいえ。――見ていなさい」


 そしてリーシャは唱えた。


 それは誰も知らない魔法だった。


砂よ風のようにアレーナ・スィクト・ヴェントゥス舞え(・サルテト)――砂塵魔法ハレナ・プルウェレンタ・マギア

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