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魔法の名門・アーデルハイドの双子姉妹〜秀才姉は天才妹の底を知りたい〜  作者: 金石みずき
第二章:ルーンクレスト魔法学院魔法大会

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第十四話

 実家から届いた手紙を読み、その代わり映えのしない内容に、リーシャはなんとも言えない気持ちになった。


 手紙を折りたたんで封筒に仕舞うと、いつの間にかルミナが隣に立っていた。


「お父様、なんだって?」

「いつも通りよ。成績を維持しているかの確認と……」


 そこまで話したところで、ルミナはうへぇ、と顔を顰めた。


 リーシャはそんなルミナに苦笑いする。


「あなた、この話題は本当に嫌いね」

「だって滅多に寄越さない手紙だよ? 実の娘を相手に、もっと他に聞くことないのかなって思わない?」

「まあまあ。でも、仕方ないわ。学院に通っている以上、本分は果たさないと」


 そう言いながら、リーシャは手紙の続きを読む。


「あとは――学院魔法大会のこと。あなた共々、アーデルハイドの名に恥じない結果を出すようにって」

「あのさぁ……」

「口下手なのよ。これで激励しているつもりなんだわ」


 頭が痛いとでも言うように、ルミナは眉間に深い皺を寄せている。


(ルミナは別に、お父様のことが嫌いというわけではないのよね……)


 むしろ敬愛すらしているはずだ。しかし、私的なやり取りにまで形式張った内容のみに終始することには、たいそう不満があるらしい。


「これは次に帰ったらまたお説教しなきゃなぁ」

「ほどほどにね」


 とはいえ、ルミナの性格上、何を言っても無駄だろう。リーシャは口では諫めつつも半ば諦めながら、手紙の内容に思いをはせる。


(アーデルハイドの名に恥じない結果、か)


 学院魔法大会は、ルーンクレスト魔法学院で最も注目度の高い行事の一つだ。


 教諭の推薦により八名が選ばれ、同学年で最強の魔法使いを決める個人対抗戦。


 リーシャは第二年次の学院魔法大会で優勝し、現在首席と呼ばれている。言うまでもないことだが、次席のルミナは準優勝だ。


(でもあの優勝は、私の力で勝ち取ったものじゃない)


 今でも時折鮮明に思い出す、決勝戦最後の一撃。


 リーシャの放った風の矢・貫通ヴェントゥス・サジッタ・ペネトランスがルミナの水の盾・広域アクア・スクトゥム・アンプルスを貫き、身体保護結界セプトゥム・プロテゴ・コルプスが発動したことで優勝が決定した。


(あのとき、ルミナが広域アンプルスを選ぶのは不自然すぎる。例えば、三重トリプレクスであれば、いくら貫通ペネトランスであっても貫くのは困難だったはず。本人は「焦って間違えた」と言っていたけれど)


 まさか当たると思わず、その後の戦い方を考えていたリーシャは、しばし呆然としたものだった。


 また対戦すれば、ルミナはまた同じように失敗する可能性が高い。


(今年こそはきっと、本気を出させてみせる。そしてその上で、私が勝ちたい)


 そうなればリーシャは真にルミナを超えたと思えるだろう。


(いい機会だわ)


 リーシャはルミナの見えないところで拳を強く握りしめた。


「ルミナ」

「なに? お姉ちゃん」

「学院魔法大会、頑張りましょうね。決勝戦で会えるのを楽しみにしているわ」

「……うん、もちろん!」


 前年度優勝者と準優勝者はトーナメント表の右端と左端からの固定枠のはずだ。だから二回勝てばルミナと戦える。


「アーデルハイドの名に恥じない戦いをしましょう」


 リーシャがあえてそう言うと、ルミナが困ったように眉尻を下げた。


「もう、やだなぁ。お姉ちゃんにまでお父様が伝染(うつ)った?」

「あら。私はかまわないわよ。お父様のことは尊敬しているもの。当主になるなら、将来目指すべき姿の一つだわ」

「ええっ、やだよ! お姉ちゃんまでお父様みたいになるなんて!」

「じゃあ、あなたが当主になることね」

「……――え~……それはちょっと…………」

「ふふっ、冗談よ」


 本気で嫌そうな顔をするルミナに、リーシャはついつい笑ってしまった。


(まあ、まるっきり冗談というわけでもないのだけどね)


 リーシャはそう思いつつも口には出さず、備え付けの棚から便箋を取り出して机に向かい、筆を執った。


『拝啓 寒さが和らぎ過ごしやすい季節となりました。お父様、お母様におかれましては、健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。


 私とルミナがここルーンクレスト魔法学院へ入学してから早三年の月日が流れました。日々の移ろいの早さに驚くばかりです。


 先日、魔法実践学の講義の一環として、〝試練の森〟にて野外演習が行われました。幼き頃から家で鍛えていただいたおかげもあり、課題はとりわけ難しいものではなく、無事達成することができました。しかし同時に己の未熟さを強く実感する経験もあり、不出来な自分に恥じ入るばかりです。


 学院に入学してからというもの、自分なりに研鑽こそ欠かさなかったつもりですが、大きな困難もなく過ごしてきたため、いささか慢心していたのでしょう。一から鍛え直すつもりで励む所存です。


 さて、いただいたお手紙にもありましたが、今度、学院魔法大会が開かれます。


 お父様とお母様もご承知の通り、私とルミナは前年度の首席と次席ですので、教員の推薦を経ずに出場が確定しています。順当にいけば――いえ、確実に決勝戦で相まみえることとなるでしょう。


 大会は学院外に公開しておらず、お父様やお母様に私たち姉妹の今の姿をお見せできないのが非常に残念ですが、見ていただいているつもりでお互いの全力を尽くして戦います。


 講評が出ましたらご確認ください。ご指摘いただいた通り、アーデルハイドの名に恥じぬ戦いと成長をご覧に入れてみせましょう。どうぞご期待ください。


 私の目標としましては――いえ、これはまだ、内に秘めさせていただきますね。結果でお示しします。


 ささやかではありますが、お父様、お母様のご壮健なるお姿に思いを馳せつつ、筆を置かせていただきます。


 使用人の皆様にもどうかよろしくお伝えください。それではお元気で。 かしこ


 リーシャ・アーデルハイド』

お読みいただき、ありがとうございます。


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これからもよろしくお願いします!

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