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魔法の名門・アーデルハイドの双子姉妹〜秀才姉は天才妹の底を知りたい〜  作者: 金石みずき
第一章:アーデルハイドの双子姉妹

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第十話

 第一班の二人とも口を開こうとしないので、仕方なくリーシャが魔力のなくなった原因を精一杯婉曲的に説明すると、ルミナの顔がどんどん赤みを増していった。


 班員たちにはあとで反省点を伝えるにしても、この場ではうやむやになった方がいいのでは、とリーシャは考えていた。それだけルミナの雰囲気に鬼気迫るものを感じていたからだ。


 だが、さすがに学年次席の理解力は高かったらしい。


「つまり全部お姉ちゃんにやらせたってこと!? あなたたち、バッカじゃないの!?」


 ルミナの叱責を受け、ミレイルとマーカスが顔を俯かせた。


「これは学院の演習で、班活動なんだよ!? みんなで協力しようとしないとダメでしょう!」


 ルミナの言葉はあまりにも正鵠を射ていた。強い語気に誰もが黙り込む。ただ一人、リーシャを除いて。


「彼らだけが悪いわけじゃないわ。私もちゃんと言わなかったんだから同罪よ」


 リーシャとて彼らだけが悪いと思っているわけではない。そもそも第一班のリーダーはリーシャだ。責任はリーシャが一番重い。


 怒り心頭のルミナを説得する目的もあるが、半分以上は本音だった。


 そんなリーシャの言葉に、ミレイルは頭を下げた。


「ごめんなさい……。リーシャさんならこのくらい平気だと深く考えずに思ってしまったから……」


 しゅんとした態度でそう告げるミレイルに、リーシャは


「顔を上げてちょうだい」


 と促した。リーシャは少し屈み、ミレイルと目を合わせる。


「頭を下げる必要はないわ。私自身、大丈夫だと思っていたことも事実だし。お互いに反省して次に生かしましょう?」

「リーシャさん……」


 不安そうに見つめてくるミレイルに、リーシャは笑みを返す。すると少しだけ、ミレイルの身体から力が抜けた。


 これで次からはきちんと協力するようになるだろう。今回はあまりよい結果とならなかったが、長い目で見るとよかったのかもしれない。


 そうリーシャが考えていたところ、隣から「ちょっといいかい?」と声がかかった。マーカスだ。


「そりゃあ手伝わなかったのは悪いと思っているさ。けれどほら、僕たちもリーシャさんが魔法を多重に使っているなんて知らなかったからね。知っていたら当然片方を受け持ったさ。これは認識の不一致が起こした悲しい事故だったのさ」


 肩を竦め、いけしゃあしゃあとマーカスが言う。


 杖すら出さずにどの口が、とリーシャは呆れたものの、今さら言うのもどうかと思い口を噤んだ。


「それに、かの〝完全無欠〟のリーシャ・アーデルハイドだ。僕たちが過信してしまうのも無理はないと思わないかい?」


 なあ、とマーカスが周囲に同意を求めるが、さすがに同調するものは誰もいなかった。


 全員のじとっとした目がマーカスに集中すると、さすがのマーカスも「な、なんだよ」とのけ反り、最終的に謝罪した。


「……すまなかったよ」


 一方で、リーシャはルミナがマーカスに攻撃魔法でも放たないかとハラハラしていたのだが、ルミナはリーシャが二人を責める気がなさそうだと推測したのか、はたまた自分も悪いという言葉を本心だと捉えたのかわからないが、黙って大人しくしていた。


「だいたいさぁ!」


 とはいえ気持ちが収まらなかったらしい。溜まっていた鬱憤をすべて吐き出すかのように、ルミナが口を大きく開いた。


「最近お姉ちゃんのこと〝完全無欠〟なんて呼ぶ人がいるみたいだけど全っ然わかってないよね! 確かにお姉ちゃんは凄すぎるけど、それは完全無欠だからなんかじゃなくてむしろそうあろうと自分を常に律している姿が本当に尊いからなの。学院の勉強も魔法の鍛錬も運動だって少しくらい手を抜いてもいいのにな大丈夫かなってこっちが心配になるくらい全部真剣に取り組んでて、でもそれを決して鼻にかけず当たり前のことだからって毅然として。そんな努力に裏打ちされた実力が今のお姉ちゃんを作ってて。今のお姉ちゃんを見てると想像できないだろうけど生まれたときからなんでもできたわけじゃなくてそんな生活をずっとずーっと送ってきたからこそ今〝完全無欠〟に見えてるだけなの。それをみんな全然わかってない。事実お姉ちゃんはものすごく才能があって学年首席で先生からも学院生からもみんなから信頼されてて憧れの的で高嶺の花で夜の空で一番綺麗に輝く月のような人だけど、それでもなんでもできるわけじゃない。そう見えるのはただお姉ちゃんがそんなお姉ちゃんを求められてきたからでそうあってほしいっていうみんなの憧憬を見えないところで汗を流して歯を食いしばって叶え続けてきたからなの。それを誰にも威張らずに自慢せずにそれどころか気づかせずにやれてしまうの。だからお姉ちゃんはすごいの。カッコいいの。わかる!?」


 あまりの長広舌と迫力に、リーシャを除く全員はたじろぎながら頷いた。


 場が一気に静まり返る。


 そこでようやく我に返ったのか、ルミナが焦ったように慌てたあと、指を格好つけるようにビシッと突き出して言い放った。


「と、とにかく! わたしが言いたいのは――お姉ちゃんは容姿端麗頭脳明晰運動神経抜群魔法堪能な完璧超人で憧れちゃうのも頼りたくなる気持ちもすっごい分かるんだけど、あなたたちも自分の役割はちゃんとやりなさい! ってこと! 以上!」

お読みいただき、ありがとうございます。


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これからもよろしくお願いします!

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