表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ep.1 バイオリン弾きとの出会いは舞踏会にて

豪華絢爛なシャンデリアに綺麗に磨き上げられたフロア。そして、クラシックな音楽にのせて踊る、金銀に飾り付けられた貴族たち。

そんな滑稽な様子を第一皇子のリアム•コーデン•フォーサイスは悪態を心の中に隠しながら、貴族たちを眺める。


(どいつもこいつもバカばっかり。どうせ、王家のお気に入りになりたいだけだろう。)


そう、ここは王家主催の舞踏会。貴族たちはみな、王家に気に入られ、あわよくば側近や妃にと必死になっているのだ。欲に塗れた人間が、いや、リアムから見れば猿同然のような人間が王家という餌に群がっている。非常に気色が悪い光景だとリアムは思う。

するとコツコツとヒールがなり、こちらにリアムと同い年くらいの少女が近づいてきた。その少女はケバケバしい化粧にきつい香水、さらに胸を半分出した露出狂のような赤いドレスを着ていた。少女は見た目に反する猫撫で声でリアムに話しかけた。


「ご機嫌よう。リアム皇子。私、エリカ•リットンと申しますの。よろしければ、私と一曲踊りませんか?」


リットン、商売がうまくいった平民上がりの子爵で間違いないだろう。十分な教育を受けられなかったのか、少女は礼儀作法を知らないようだ。手を取られ、リアムはゾワゾワと鳥肌が立つ。何とか平常心を取り戻し、彼女の誘いを断った。


「すみません。素敵なお嬢様からのお誘い嬉しいのですが、私が最初に舞踏会で踊るのは将来を約束した人と決めておりますので。」


にこりと貼り付けた爽やかな笑みで言うと、大体の女は撃沈することをリアムは知っていた。予想通りに女はほぅっと顔を赤らめ、


「それなら仕方ありませんね。もしよろしければ私を将来の伴侶にしてください。いつでもお待ちしておりますわ。」


と諦めて去っていった。

リアムは手を洗うため、ホールを後にした。

城の回廊は夜の煌めきに照らされ、淡く輝いていた。今までいた、欲と邪心に塗れた空気が漂うダンスホールとは大違いだ。


手を洗い戻ろうとするが重い足を一本踏み出すが、次の一歩が踏み出せなかった。

リアムは帰るのが嫌だった。誰も好きであんなところには居たくない。

すると、どこからかバイオリンを奏でる繊細な音色が聞こえてきた。ダンスホールとは反対方向からだ。

リアムは興味本位でその音色を探しに足早に向かう。


小ホールに人影が見えた。そっと覗いてみると、夜の光に照らされながら、バイオリンを奏でる少年がいた。

その少年は美しい顔立ちをしていた。陶器のような透明で白い肌、魅了されて吸い込まれそうな紅い瞳、白い肌に映える猫のように柔らかそうな黒い髪。そんな少年は悲しそうに切なそうにバイオリンを弾いていた。一筋の涙を流しながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ