陸ノ訓
次に行うべき事は衣食住のうちの一つを解決する事だろうと考えた私はまずは衣服から着手する事にしたのだった……。まず最初に行ったのが服作りである。幸いにもこの領地には様々な種類の毛糸や布が大量にあったのでそれを活用する事に決めたのだ。まずは自分の服を作る事にしたのだが、その際に必要な技術はただ一つ……採寸である。私はこの世界に来てからずっと疑問だったのだが、どうしてこの世界の人は服の寸法を測る時にやたらと胸や尻の大きさを聞いてくるのだろうか? しかもやけに細かいので不思議だったし正直面倒くさいと思っていたのだ。しかし今回こそこの謎を解く時が来たようだ!私はまず最初に自分用の服を作り上げた後に、セバスとシェルを呼び出して採寸を行ったのである。その結果判明したのは驚くべき事実であった……なんとこの世界の住人の胸や尻の大きさは本人の主観によって決まるということが判明したのであった!つまり、私が巨乳だと思っている人は胸を大きく。貧乳だと思っている人は胸も小さくなり腰回りが大きいということだ!!これには私も驚きを隠せなかったが同時に納得してしまったのである。確かに言われてみればそうだと思ったのだ。
まず最初に行ったのが食生活の改善である……と言ってもいきなり全てを変えることは難しいのでまずは簡単にできるものから始めることにしたのだ。最初はやはり食事だろうと考えた私は料理人に指示をして食事を用意させたのだ。
するとそこには見たこともないような料理の数々が並んでいたのである。それはまさに和食の真髄とも言えるものばかりだった!!そこで私は改めて思ったのだ……やはり日本食は最高だと!そして同時にこの領地を必ずや豊かにして見せると決意を固めたのだった。
そして待望の屋敷が完成した。私は要望したのは日本家屋…新撰組で使っていた屯所を再現した屋敷だった。
外観は勿論のこと、内部も完璧に再現されていたのだ!!しかもさらに驚いたのが風呂までついていたのである!これには思わず感動してしまったのだった……しかし何より嬉しかったのは自室に畳があったことである。私は早速その部屋で横になったのだがこれがまた実に良い寝心地だったのだ。
そしていよいよ領民達へのお披露目の時がやってきた。まずはセバスから報告があったのだが、どうやらこの領地には様々な問題が発生しているようで困っている人が多いらしいのだ。
そこで私はまず最初に行うべき事はインフラの整備であると考えた私はまず最初に道路の整備を行う事にしたのだ。
領地には既に整備済みの街道があるのでそこを使えばいいと思ったのだが、どうやらそれではダメらしい……そこで私はセバスと相談して新しい道を開拓する事になったのだった。しかしそれには莫大な資金が必要になってしまうためどうしようかと悩んでいたのだがそんな時、スキルである【賢き者】が言った。
《では、税金を安くすることですね。そしてもう一つは領民達の生活水準を上げることです》
「なるほど……それは名案ね。では早速取り掛かるわ!」
私は早速セバスを使い領民達に説明し協力してもらう事にしたのである。幸いにも資金は潤沢にあったので問題はなかったのだが、一つだけ問題があったのだ。それはどうやって安くするかという事である。そこで私は考えた結果、税金をなくすことにしたのだ。その代わりとして生活水準を上げることにしたのだ……具体的に言うとまず最初に行ったのは食事の改善だった。というのもこの領地は元々食料自給率が低い上にあまり食物は育たない。
なので私は魔法を使い土壌改善と天候操作を行ったのだ。
しかしそれだけではまだ不十分であり、私は次に農業改革を行う事にしたのである。
まず最初に行ったのが品種改良だ。この領地で取れる野菜はどれも味気ない物ばかりだったのだが、そこで私は土魔法で土壌を豊かにし栄養たっぷりな環境を作り出す事で美味しく育つようにしたのだ。その結果として今では様々な種類の作物が採れるようになったのである。そして次は畜産業についてだがこれは比較的簡単だった……というのも元々この領地では家畜を飼っていた農家が少なく、家畜の数も少なかったので私が新たに作った畜産場に連れて来るだけでよかったのだ。
こうして全ての改革を終えた私は領民達に感謝されながらも同時に恐れられてしまい困惑していたのだった……しかしそんな私にセバスは言った。
「リーゼロッテ様、これでこの領地は豊かになりましたね」
と。その言葉に私も心の底から安堵し頷く事しかできなかったのであった……。それからというものの私に対する信頼度はますます上がり、今ではみんな私を慕うようになったのだった…
…そしてそんなある日の事である。
いつものように執務室で仕事をしていると、突然扉が叩かれたのだ。扉を開けるとその向こうにいたのは執事のセバスだったのだ。
「セバス……どうしたの?」
「リーゼロッテ様…メラド様がお越しです。」
「わかったわ。すぐにそちらに向かうと伝えておいて頂戴。あと来客用の部屋を用意させるように侍女長にも頼んでちょうだい」
「かしこまりました!」と言ってセバスは急いで部屋を出て行ったのだがその後ろ姿を見ながら私は思わず笑みを浮かべていたのだった……。そしてそれからしばらくして再び扉がノックされ入ってきたのは一人の男性だった……。
「お久しぶりですね、リーゼロッテ様」
「……えぇ、本当に久しぶりですね……メラド」
彼の名はメラド・ソル・シルフィード
商業ギルド財務の仕事で働いている私の友人であり、私が信頼している人物の一人でもあるのだ。
「それで、今日は一体どういう用件ですか?」
と彼は聞くと私は真剣な表情になりこう言ってきたのである。
「要件なんですけど…もっと大きなお金を動かしてみたくないかしら」
「もっと大きなお金ですか。私を公爵家に雇って下さると?」
「ええ。ただし、公爵家に仕えるのではなく、私に仕えて欲しいの」
「……それは、どういった意味ですか?」
「今後、私の領は改革が進められます。行政と我が家を分けるのもその内の1つ。つまりは、貴方にこの領の予算の管理及び運用を行なって欲しいのよ」
「何故、それを私に?人材がないわけではないでしょうに」
「より現場を知る貴方だからこそです。今回の改革は長期で行い、抜本的な改革を推し進めるつもりだから…今の知識は不要なの。ある程度素地は必要だけど…それもその若さで副会長をしている貴方なら大丈夫でしょう。何より、貴方なら私は信頼できる。信頼は、お金を動かす上で何にも勝るものじゃないかしら」
「ははは、随分壮大な話ですね。それが事実ならば、今後の貴方が楽しみです。……けれども失礼ですが、貴方にその任命権はあるのですか?」
という訳で、ここで最後のカードを切る。
「勿論。私は、この度領主の地位を陛下より承りましたから」
一緒に、任命された時に渡された書状を見せる。これは、領に来るときに父様に渡されたものだ。
…実は私、まだ領主に任命されたことを大々的に発表していないのよね。
一部の領民には伝えてあるけどね。
これからも、あまり大きく発表しないつもり。ここぞという時にのみの方が、効果デカそうだし。……今みたいにね。
私がまさか領主に任命されていると思っていなかったのか、メラドは驚いたようにそれを見ていた。
「……それは、おめでとうございます」
「ありがとう。それでね……貴方には私の補佐官になって欲しいの。そしてゆくゆくは領主補佐として私の右腕になってほしいのよ」
「私が、貴方の?」
「ええ。貴方ならきっとできるわ」
と私は笑顔で言ったのだ。すると彼は少し考え込んだ後、真剣な目で私を見てこう言ってきたのである。
「……わかりました。その話お引き受けします」
「本当に?ありがとう!これからよろしくね!」
と言って私はメラドの手を取り握手をしたのだった。