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謀反と突撃


病院へと運び込まれ目が覚めた2人の怪我は深刻であった。

防衛戦で死者はでなかったものの重症者が多い。

シェンは全身打撲及び骨折、裂傷多数

リゼは左目失明、背中に大きな裂傷がある。


「リゼがそのような傷をつけるとは人斬りレギン……恐ろしい男だ」

「あいつは人間じゃない」


レギンに対する評価はその脅威を肌で感じているからこそレギンへの警戒心はより強まった。

レギンの危険度を改めて認識した彼らは万全な体制を整えるべく準備に取り掛かる。

ヒュースの情報をもってしてもレギンの動きは把握できていない。レギンは指揮命令系統にはいないみたいだ。さらに神出鬼没のため場所も割り出せないみたいだ。


「リゼ!その怪我で素振りをしないでください!悪化しますよ!」

「レギンに、やられたままは、嫌なのよ」


リゼは眼帯を付けて重症である体で素振りをしている。

シェンもベットでは休まず病室にある椅子に座っているだけだ。彼もまた同じ考えだったようだ。


「おいリゼ。俺は体調がいいから稽古をつけて欲しい」

「いいわよ」

「バカは死んでも治らないのか…」


クラウスは頭を抱えながらため息を吐いた。


シュタルク伯爵領では伯爵死後息子が後を引き継いでいるが政務は執事に丸投げしているらしい。貴族学校で勉学の成績は悪い。しかし体術と武術に優れた生徒だったそうだ。父親の影響もあるかもしれないが母親は有名な将軍の娘である。


「父上……私はあなたのようにはなってみせます」

部屋には数名の家臣達が控えている中一人の青年が写真立てに向かって語りかけていた。彼こそが現シュタルク家の当主にしてシュタルク伯爵領の次期君主のアベル・ダカルタ・シュタルクである。

アベルは写真を戻すと家臣たちへ視線を向けた。


「我々シュタルク伯爵領はこれから如何様にするべきなのか……」

「閣下……我が領は周辺諸侯の中でも有数の武門であり歴史ある名門であります」


一人の老紳士が答える。

「そうです!それに王国の庇護のもと我らは平和を享受することができるのです!」

「しかし現状この国は危機に瀕しております……陛下のお陰で秩序は保たれておりますが国民達の不満は高まりつつあります」


その言葉に皆黙り込んでしまう。

確かに今の世の中は不安定なのだ。

そんな中で内乱など起ころうものならこの国はどうなるのかわからない。

最悪の場合、帝国による侵略戦争もあり得る。


「閣下……我々は閣下の判断を仰ぎたいのです……」


誰かが呟く。

すると他の者たちも賛同するように声を上げる。

アベルは悩んだ末にある決断を下した。


「私は伯爵位を剥奪される覚悟を持って今回の件に関与することを宣言する」


その言葉を聞いた者達は驚きつつも納得するように頷く。アベルの宣言が意味するのは一つしかないからだ。


「私には妻と子供もいる……彼らを守る為ならば喜んで命を差し出そう」

「かしこまりました……閣下のお心遣い感謝致します」


「皆の者よ!これより我々シュタルク伯爵家は反旗を翻すことになった!我々はこれから戦乱へ向かう!」


「「「おぉ!!」」」


部屋には歓声が上がる。こうして王国最大派閥の叛意がここに決定される。


「これでいいかい?ユドラ」

「俺は別にどうでもいい…お前を殺す為にきたが…軍門に降るなら生かしておくと決めただけだ……」


サツヴァ最狂の男ユドラはそう言う。サツヴァは一枚岩ではない。レギンは金さえ貰えば従う主義でユドラは違う。ユドラは戦闘こそが自分の生きる証。自分より強い奴を倒し続ける。それが唯一の快感をくれるからだ。


「ありがとう」

「礼を言う暇があるならさっさと兵を集めるんだな……でないとお前の大事なもの……全て無くなっちまうぞ」


アベルはそれを聞くとユドラに敬礼をして部屋を去った。残されたユドラは少し考える。


「あいつ……面白そうなこと考えていやがる……まぁいい……いずれ俺が倒せばいいだけの話だ……さてと……次はどこで暴れてやろうかな?」


ユドラは笑いながら部屋を出て行く。残された者達は何も喋らない。


(閣下の考えがわからない……何故ユドラなど召し抱えたのか……)


一方その頃リゼらは屋敷へと戻りベットに寝かされていた。


「その傷でよく生きていたものだ。俺がオペしなかったら死んでいたぞ」


「ふん。この程度大したことないわ。それよりもあなたの手際の良さに驚いたけど」


医師がリゼに話かける。

「当然だ。何しろ俺は天才外科医だからな」

「そう。それはよかったわ」

「あの小僧は問題ない。だがお前さんは問題だらけだ。とりあえず絶対安静にしてもらうぞ」

「わかっているわよ……」

リゼは包帯を巻かれながら言った。

クラウスがリゼに話かけた。


リゼの包帯だらけの姿を見てかなり心配している様子だった。リゼは大丈夫だと言い張っているが明らかに無理をしている。


「大丈夫なのか本当に」

「私は平気よ…けどレギンをこの手で倒さないと気が済まない……それだけよ」

「そうか……ならいいが……あまり無茶はするなよ」


リゼは苦笑いをする。

レギンとの戦闘で左目を失い体中の骨が折れている状態なのに彼女は一切弱音を吐かない。

それどころか寧ろ楽しそうにしているくらいだ。

そんな彼女を見ていたシェンが話に加わってきた。


「リゼよぉ~随分と楽しそうだなぁ〜」


シェンはニヤニヤしながら尋ねた。


「貴方こそ……嬉しそうな顔をしているわね……」

「当たり前だろ?最高の舞台が待ってるんだからな」


シェンは笑みを深めるとリゼの肩をポンッと叩いた。


「楽しみにしてろよ?必ずお前に勝ってみせるからな」

「はいはいわかりましたよ」

二人のやり取りを見てクラウスは呆れ顔で呟いた。

するとヒュースがやってきた。


「シェン、リゼ様……報告します。シュタルク伯爵が息子アベルが謀反を企んでいることがわかりました。さらにサツヴァの最恐幹部のユドラ・ハーゲンという男が接触したと情報があります」

「そう…残念だわ。ついにきたわね……戦争が……」


リゼの瞳には闘志の炎が燃え上がっていた。これから起こるであろう激戦に胸を踊らせていた。

この日から王国での抗争が始まることになる……


リゼとシェンはベッドに横になりながら会話をしていた。

「そういやシュタルク伯爵が反旗を翻したみたいだけど……あいつの目的は何なんだ?」


「おそらくだけど……この国を支配することだと思うわ。そして武国と手を組んで世界制覇をするつもりじゃないかしら」


「へぇーそうかい。まぁそんなことはどうでもいい。問題はそのアベルって奴がどれほどの実力を持っているかだ」


「そうね……力はあると思うわ。しかも彼は若くしてあの戦い方……相当鍛錬しているでしょうね」

リゼとシェンは互いに顔を見合わせ笑う。


「楽しませてくれそうじゃないか!なぁ?リゼ」

「ええそうね。久しぶりに本気で戦えそうだし……ワクワクするわ」

2人は起き上がり怪我をしているのに身支度を始めた。そして玄関へと向かっていく。


「どこに行くつもりですか?」

クラウスが呼び止めた。2人は振り返り笑みを見せる。

「ちょっと散歩しゅくせいしてくるわ」

「まぁゆっくりしていくといい」

「まったく……怪我人が動き回るんじゃない」


クラウスは溜め息をつくが2人を止めることは出来なかった。



シュタルク伯爵領内大森林

クラウス、リゼ、シェンは堂々と歩いている。すると前方から複数の気配を感じる。


「あれは……サツヴァの連中だな」


そこには数十人の男たちが歩いていた。服装から見ても武装集団であることには間違いないだろう。

どうやらこちらにはまだ気づいていないようだった。


「殺っちゃいますか?」


リゼが微笑みながら刀に手を添えた。

シェンも臨戦態勢に入る。

しかしクラウスが制止した。


「待てリゼ。下手に刺激しない方がいいですよ」

「そうかしら?私はもう我慢できないわよ?」

「落ち着きなさい……ここで騒ぎを起こしたら計画が台無しになります。まずは様子を見るんですよ」

「そう…」

リゼは少し不満そうな表情を浮かべたが渋々納得してくれたようだった。

3人は物陰に隠れながら様子を伺うことにした。

すると話し声が聞こえてきた。

その内容を要約するとこういうことらしい。

今夜アベルの元へ援軍にいくと報告しに行っているとのことだった。


「援軍が来る前に粛清しましょう」

「クラウス…隠密系のスキルあったよな?」

「ありましたが…まさか」

「そう…正面突破だ!」

「貴女の策略は分かりやすいですね……」

「うっさい!」


クラウスは溜め息を吐くしかなかった。

隠密系のスキルを使用してアベル屋敷玄関前までやってくると誰もいなかった。リゼが領域のスキルを発動させるとアベルは執務室にいることがわかり、その他大勢は屋敷内にいることがわかった。

シェンは懐から短刀と籠手を取り出し構える。クラウスはクナイを構える。

リゼは刀を抜き構える。その目には冷酷な光が宿っていた。

「行くわよ」

「おう!」

「了解」


リゼが玄関を蹴りで破壊する。その音で護衛たちが慌ててやってくる。


「なんじゃあ!カチコミか!」

「どーも!死を届ける死神です!本物です!早速死んでください」


リゼの一言で護衛たちの動きが固まる。

「ちょっ!どういう意味ですかそれは!」


クラウスがツッコミを入れる。

リゼは気にせず斬撃を飛ばして敵を倒していく。シェンとクラウスはそれぞれ襲ってくる相手を撃退していき数分後に鎮圧が完了する。


「さてと……首謀者のところへ行きますか」


リゼが歩き出した瞬間に後方から殺気を感じ取り咄嵯に避けると斬撃が壁にめり込んだ。


「ほう。これを避けるとは……なかなかやるではないか」


振り返るとそこには赤髪の長身男性が立っていた。

「貴方……何者?」

「俺はユドラ・ハーゲン。サツヴァの幹部を務めている者だ」

ユドラは不敵に笑いながら自己紹介をした。

そしてそのまま剣を構えて突進してきた。リゼは迎え撃とうとするが……

ユドラの動きが突然止まり、素早い動きで何かを掴む。それはクラウスが投擲したクナイだった。


「こんなおもちゃで殺せると思っているか?」

「思っていませんよ。リゼ貴女はアベルの元へ!」


「ええ。任せてちょうだい。あとついでに殺しておくわ」

「殺す?それは面白い冗談だな……だが不可能だ!」

ユドラは凄まじいスピードで間合いに入り込みリゼに斬りかかるがクラウスがそれを防ぎリゼを行かせた。


「貴方の相手は私ですよ」

「なぜそんなにも死に急ぐ…俺と会ったが最後骸となる」


新撰組参謀とサツヴァ最恐の漢がぶつかり合う。この戦場はまさに地獄そのものになる。

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