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勝者なき

次に彼女は左目の状態を確かめるために瞼を開く。するとそこには潰れた眼球があった。

それを見た彼女は舌打ちをする。そして再び立ち上がると刀を構えた。


「まだやれるんでさぁ?」

「当然……貴方を倒すまではね」

「そうかい」


レギンもまた立ち上がり刀を構えた。それから二人は睨み合う。

しばらくして最初に動き出したのはやはりレギンであった。

彼は一気に間合いを詰めてきて刀を振り下ろす。それに対してリゼもまた対抗するように刀を振るった。


二人の刀が再びぶつかり合う。

しばらく拮抗状態が続いていたが次第にリゼの方が劣勢になってきたようだ。

レギンの放つ斬撃はとても重く鋭かったからである。


「ふっ!」

「ちぃ!」


リゼの刀が弾かれてしまい隙ができてしまった。


――ピシッ!


リゼの刀に亀裂が入る音がする。

それを見たリゼは顔色を変えた。


「まさか……折れるのか!?」


この刀はリゼの愛刀であり自ら鍛造したものなのだ。

それがまさかこんなところで折れてしまうなどあってはならないことだった。

焦った彼女は咄嵯に刀を引き戻すと別の角度から攻撃することにした。

しかしそんなことをすれば当然相手にもバレてしまう。

レギンは笑みを浮かべると刀を横一閃に振るった。


(速い……)


リゼは驚愕する。


――キィン!


なんとか防げたようだが体勢が崩れてしまった。


(駄目だ……このままじゃ殺られる)

レギンがさらに踏み込んでくる。

そしてそのまま刀を振り下ろそうとしたときだった。


――ガキンッ!!


突然彼の身体に何かが絡みつき動きを封じてきたのである。


「これは一体!?」


驚いたレギンは自分の手足を見てみるとそこには鎖のようなものが巻き付いておりそれがどんどん締め付けてきていることがわかる。

その正体はリゼの使う術式【光鎖天魄リヒトレーゲン】である。

リゼは戦闘中に術式を組んでいたのだ。

それによりレギンは自由を奪われてしまったのだ。

しかし彼はそれでも諦めなかった。

「うおおぉぉぉ!」

なんとそのまま力任せに鎖を引きちぎろうとしているではないか。

それを見たリゼは慌てる。このままではまずいと思ったからだ。

そこで彼女はすぐに行動に出た。それは自分の持つ最大の火力の術式を発動することである。

彼女はレギンに向かって手を伸ばすと大声で叫んだ。


《天剣一刀流》

【大太刀斬】


そして彼女は手刀でレギンの心臓を貫くとそのまま背中まで突き抜ける。

それと同時に大量の鮮血が噴き出ると共に内蔵までもが飛び出していった。

レギンの体から力が抜け落ちていきやがて地面に倒れ伏したのだった。


「終わった……」

リゼは安堵のため息を漏らしながらその場に座り込む。


「おーこわいねぇ」

「!?」


死んだはずのレギンがアキを担ぎ現れリゼへ歩み寄る。

その声色には余裕すら感じられる。

「これ以上は追撃はしやせんよぉ…あっしもそんな力残ってませんのでぇ……鬼姫そんな傷で動けますかねぇ…仕事は完遂したぁ」


レギンはそのまま闇に消えていった。

リゼはただ呆然と見送るしかできなかったのである。

「レギン……貴方……やっぱり人斬りなのね」

そう呟くとリゼはその場に倒れてしまった。どうやら疲労と精神的ダメージが大きいようだ。

レギンは闇夜へ消える。


(くそが……次は必ず……)


彼は苛立ちを露わにしていた。そして自分の不甲斐なさを呪っていた。

レギンにとって敗北とは屈辱的なことであり絶対に許されないことなのだ。故に彼は何としてもこの屈辱を晴らそうとしているのである。

だが今はその時ではない。まずは傷を癒すのが先決だと判断して大人しく引き返すことにしたのだった。


シェンとヒムロとの戦いは熾烈を極めていた。両者は己の持てる技術全てを使って相手を倒そうとしていた。しかし実力は拮抗しており決着はつかずにいた。

両者とも消耗が激しく限界を迎えつつあったがそれでもまだ戦意は失っていなかった。

二人は同時に動き出すとお互いの距離を縮めていく。そしてそのまま刀を交錯させて斬り結ぶと火花を散らしながら鍔迫り合いとなる。

「おらぁ!」

「せやぁ!」


二人はほぼ同時に力を入れて押し返すと一旦距離を取る。

そして再び接近戦が始まったのだが今度は先程とは異なり遠距離からの攻撃も混じえて行われた。

そのためお互いの攻撃が届かない位置から放たれた攻撃の嵐となり周囲に被害を与え始めた。


シェンが放った一撃をヒムロは軽く捌くとそのまま蹴りを入れてくる。だがシェンはそれを読んでいたと言わんばかりにしゃがみ込むと下段斬りをお見舞いした。

「甘いぜ?」

ヒムロは後ろに跳ぶと間合いを外す。

《遁甲開錠》

『白虎』

シェンは青白い雷を纏わせて強化を施した足蹴りでヒムロに迫る。

だがそれすらも難なく躱されてしまい逆にカウンターを喰らう羽目になってしまった。

「ぐふっ!」

「どうした!もっと来いよ!」


ヒムロの挑発に乗るようにシェンは拳を突き出す。それに対してヒムロもまた拳を繰り出した。

二人の拳が激突する。


ドゴォン!!

衝撃音と共に土煙が立ち昇る。そして数秒遅れて衝撃波が発生して周囲の木々が揺れる。

二人は拳を引き戻すと再び攻撃を仕掛ける。今度は二人共接近戦ではなく遠距離からの打ち合いとなっていた。

シェンは腕をクロスさせて防御姿勢を取ると雷を放出させる。それを見たヒムロはバックステップで後退しつつ回避する。


(クソッ……あの男……)


シェンはそう思いながら構え直す。

自分が格下なのはいつものことだ。それを乗り越えてこそ漢になる。俺のにはいつも大きな壁が存在している。それをいつもぶち壊して勝利してきた。敗北とは負けを認めるか頭と胴が離れた時だけた。


「分厚い壁だ…だからこそぶっ壊しがいがある」


シェンは好戦的な笑みを浮かべるとそのまま駆け出した。


―――バチバチバチィィ!

雷光の蹴りが空気を切り裂く音が響き渡る。


《遁甲開錠》

『朱雀』

「これで終わりだ!!」

《ドーラ流体術》

【武技・滅竜覇炎】


ヒムロの身体を中心に渦巻いていく炎。

それは徐々に大きくなっていきやがて巨大な火柱となった。

それはまるで悪魔の咆哮の如く轟き叫びながら周囲の森を焼き尽くす勢いであった。

「熱い……熱すぎる……だが負けるわけにはいかねぇ!」


シェンは火柱に向けて走り出すと拳を叩きつけた。すると火柱は左右に割れ真っ二つになる。

そしてそのままヒムロの元へ辿り着くと全力で殴りつける。

しかしヒムロは微動だにせず笑っていた。


「馬鹿野郎……熱いだけじゃねぇぞ?」

《ドーラ流体術》

【破天鳳翼】


ヒムロの拳が炸裂しシェンを吹き飛ばす。そのまま近くの樹木に激突するが立ち上がる。


「ちぃっあの爺さん消えやがったな…興醒めだ…」


ヒムロはボロボロの体で撤退の信号弾を放つ。


「次はテメェを殺す」

そしてシェンに背中を見せ闇に消えて行った。シェンは悔しそうにしながらも意識を失ってしまい倒れ込む。

駆けつけた隊士たちは病院へと急いでむかった。


アマダ村防衛戦は勝者なき幕引きで幕を閉じたのであった。

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