激突
「さぁ喧嘩始めようか」
まず動き出したのはヒムロだった。
《ドーラ流体術》
【武技・連撃拳】
「おらぁ!」
「隊長!援護します」
「まて!」
シェンの部下の1人は刀を抜きヒムロに斬りかかる。しかしそれをヒムロの籠手で防がれる。
「いい刀だ……だがまだまだだな」
「な、なんて力だ……」
「オラァ!!」
ヒムロはシェンの部下を殴り飛ばす。その威力は凄まじく木々をなぎ倒してしまうほどだ。
「ぐはっ!?」
「どうした!そんなもんか!?」
「くそがぁぁ!!」
ヒムロはシェンの部下を2人蹴り飛ばし再び戦闘に戻る。
一方その頃アキと対峙していたのはリゼであった。
《幻怪術》
「ふっ!」
アキは手に持っていた短剣を投擲してきた。それを紙一重で回避することができたのだが……次の瞬間には既に目の前にアキが迫っており鋭い爪で襲ってくる。
《天剣一刀流》
【虚狼斬】
「甘い」
私はアキの攻撃を受け止めると反撃に出る。
《天剣一刀流》
【虚狼双閃】
「ぐうぅ!」
片方に持っている鞘でアキの頬を穿つ
。咄嗟に後ろに飛んで軽減させたが掠り口から血を流していた。
「流石ですね鬼姫!」
「あなた……本気でやってないわよね?」
「バレました?」
「当たり前でしょ」
リゼは刀を納刀し抜刀術に入る。
「その余裕を崩してあげるわ」
「面白い……やってみてください」
「言われなくてもね」
リゼは抜刀術の構えを取りそのまま踏み込み一閃を放つ。それに対しアキは短剣で受け止める。
「はああああ!!!」
「はっ!」
激しい衝突により辺り一面に衝撃波が広がっていく。土煙が舞い上がり視界不良となったところで両者は距離を取る。
その間に息を整える。
「鬼姫殿なかなかやりますね」
「貴方もね……でもまだまだこれからよ」
リゼは再び剣を構え直すと地面を強く蹴り上げ飛び上がる。そして空中で身を翻すとそのまま勢いよく落下していく。
落下速度を利用した上段からの振り下ろしの一撃を放つがアキはそれを紙一重で避ける。
《幻怪術》
【霞消】
アキは姿を消すと四方八方から攻撃を仕掛けてくる。
《天剣一刀流》
【朧月】
私はその全てを捌き切った。
アキは舌打ちをしながら姿を現すと短剣を逆手に持ち変え斬りかかってくる。
《幻怪術》
【天壁】
「そこだ!」
「甘いですね」
《天剣一刀流》
【虚狼斬】
アキの放った斬撃に対して私はカウンターで虚狼斬を放つ。その結果相打ちとなり互いにダメージを負うことになる。
「ぐっ!?」
「ちぃ……!?」
お互い一旦距離を取る。
「やはり只者じゃないですね鬼姫殿」
「貴方の方こそ油断ならないわね」
「まだまだ楽しめそうですよ」
「同感ね……だけどこれでおしまいよ」
私は再び抜刀の構えを取る。アキは怪しい笑みを浮かべながら同じように短剣を構えた。
「いざ尋常に……参る!!」
「望むところだ!!」
私たちはほぼ同時に駆け出し激突した。
互いに全力の一撃を放ち合うがどちらも譲らない。
「はああああぁ!!」
「うおおおぉ!!」
拮抗していたが徐々に押し始める。
《天剣一刀流》
【虚狼天翔閃】
アキは防げず横腹に深い傷を負わされる。
「がはっ!?」
吐血し膝をつくアキ。
「終わりよ!」
その頃シェンとヒムロの戦いはさらに激しさを増していた。
「しゃあああぁ!」
「うらああぁぁぁぁ!!」
二人の攻防はさらに激しくなる一方だ。
【剛力】
シェンの右腕が肥大化する。力任せでヒムロの胸元を殴る。
「どりゃあああぁ!」
「がはっ!?」
ヒムロは後方へと吹き飛ばされ近くにあった木に激突した。シェンは追撃を仕掛けようと駆け出す。
《ドーラ流体術》
【龍拳】
「てめぇ!」
シェンの腹部にヒムロの渾身の一撃が叩き込まれる。シェンもまた同じく吹き飛ばされてしまう。
「ぐぅ……まだ終わっちゃいねぇぞ……」
「楽しくなってきた。」
「まだ……諦めていないようね」
リゼは深く息を吐きながらアキに語りかけた。アキは腹部から鮮血を滲ませながらも、その瞳の奥には未だ消えぬ闘志の炎が揺らめいている。
「当然……です……鬼姫。ここまで追い詰めたんだ……簡単に引き下がれません……よ」
アキは震える足で立ち上がると、再び短剣を握りしめた。だがその動きには先程までの俊敏さはない。
「それに……あの人だって……まだ戦ってますからね……」
アキの視線が一瞬、激闘を続けるシェンとヒムロの方へ向いた。
「そう……ならもう少しだけ付き合ってあげるわ。ただし……次で確実に仕留める」
リゼは再び構えを取り、静かに呟いた。
《天剣一刀流》
【虚狼・終刀】
リゼの周囲の空気が歪み始める。それは紛れもなく彼女が持つ剣技の中で最高位に位置する一撃の兆し。
「私の剣が届かないというのならば……その領域ごと斬り裂いてみせるわ」
アキは唇を噛み締めながら短剣を逆手に持ち替え、防御姿勢に入った。
《幻怪術》
【冥府門・開闢】
アキの全身から黒紫色の霧のようなものが噴き出し、短剣が禍々しい妖気を纏う。それは彼が本来持つ妖狐としての力を全て解放した姿であった。地面から湧き出た魑魅魍魎のような存在がリゼを取り囲む。
「これで……終わりにしてあげますよ……鬼姫!」
まさに最終局面。互いの最強の一撃が放たれようとしたその瞬間――
――ズシン!
大地が微かに揺れ、遠くで激しい打撃音と共に土埃が高く舞い上がるのが見えた。シェンとヒムロの戦闘の音だ。
「……っ!」
リゼの意識が一瞬逸れた。アキはその隙を逃さなかった。
「もらった!」
アキは渾身の力で地面を蹴りつけ、魑魅魍魎を盾にして突進した。短剣がリゼの胴体目掛けて繰り出される。
――パシィン!!
だが、リゼの瞳が冷たく光った。
「遅い」
リゼは最小限の動きでそれを躱し、短剣を持つアキの手首を掴み取った。
「なっ……!?」
リゼの手から霧散するように消えていき、アキの手ではなく尻尾だった。つまりは囮だ。
「あなたが本気を出すのはわかっていたわ。だからこそ……あなたの動きを先読みするのは簡単だった」
そしてそのまま掴んだ尻尾ごとアキを地面に叩きつけた。
「ぐふっ……!?」
背中から地面に激突したアキは苦悶の声を上げた。肺の中の空気が一気に押し出され呼吸がままならない。
「これで終わりよ」
リゼは刀を構え直し、止めを刺すべく近づいた。
その時――
――ザシュッ!!
突然、リゼの左腕に焼けるような痛みが走った。
「くっ……!?」
見れば、倒れているアキの口元から赤黒い靄が漂っている。それは毒か何かなのか。リゼの腕を伝って這い上がってきている。
「……最後の最後まで厄介ね」
リゼは迷わず左手の袖を破り捨てると、素早く小刀で腕の靄が這った部分を切り落とした。激痛が走るが歯を食いしばって耐える。
「これで……最後よ」
リゼは改めてアキに向き直った。アキは悔しそうな表情を浮かべながらも、どこか満足そうに笑っていた。
「流石……ですね……鬼姫……の負け……です」
その言葉と共に背後に異様な気配を感じとる。
「背中ガラ空きですぜぇ?鬼姫の斬り心地はどんなのだい?」
「ぐうぅ!」
私は振り向くが防ぐこともできず大きな袈裟斬りを背中に浴びてしまった。
その斬撃は無機質…まるで温度がなかった。
「リゼさん!(今のは深傷だ)野郎…どこから…」
「よそ見していいのか?」
リゼが斬られたことに驚きを見せたが為に隙が出来てしまうシェン。
その隙を逃さずヒムロはシェンの鳩尾に拳を捩じ込む。
「ぐ……」
「立て!まだやり合ってねぇだろうがぁ!楽しもうぜぇ!」
「くそぉ……」
俺はなんとか立ち上がるがリゼさんに加勢するのは無理そうだ。
「さっさと堕ちろ」
《ドーラ流体術》
【武技・絶拳】
ヒムロの拳から放たれた真空波がシェンを襲う。
「ちぃ!!」
シェンは大きく跳躍してそれを回避する。
だがそこには既にヒムロが待ち構えていた。
「甘い!」
「ぐっ!?」
ヒムロの蹴りがシェンの腹部に命中し再び吹き飛ばされる。
今度は先程より遥かに強烈なものだったようでシェンは咳き込みながら吐血した。
ヒムロは獰猛な笑みを浮かながらゆっくりと歩いてくる。
シェンよろめきながら立ち上がると懐から取り出した丸薬を噛み砕いた。
《遁甲開錠》『朱雀』
シェンの身体から紅蓮の炎が吹き荒れ始めた。
それを見たヒムロは歓喜の声を上げる。
「燃えてきたなぁ……来いよ」
二人の戦いは佳境を迎えていた。




