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拳星の過去

「ヒムロ、アキ…お前たちには密かにエルテニア領へ向かい鬼姫の仲間を殺せとは言わないが戦闘不能にさせろ…エルテニア領とシュタルク伯爵領があった場所は元々我々サツヴァの物…あいつらは勝手に支配しているに過ぎん。破壊と殺しはなるべくするな。目標は鬼姫の首と新撰組なる組織の破壊である。」

「それは承知してます。伯爵領は誰が向かうんですか?」

「それについては問題ない《厄星》を向かわせている」

「それはほんとうですか!」

「あの人動くんだ…」


サツヴァ五武星《厄星》

ユドラ・ハーゲン

彼が動いたからには伯爵領内は骸に化すだろう。

『俺のことは厄災と思って死んだらいい。全て骸に変わるのだからな。』


「彼については問題ないが、エルテニア領での障壁は【新撰組】の存在だ」

「俺はやる準備できてるぜ」

「ぼ、僕はできてない」

「戦略としてエルテニア領と近いアマダ村を取れば袋の鼠にできる」

「わかりました。準備が整い次第出立します。」

「戦略はできてます。」


そして奴らは部下数十名を連れ即座にアマダ村へと秘密裏に侵攻を開始した。


「ヒムロの兄貴が暴れて僕は影から潰していきます」

「わかりやすい戦略だが俺には向いている」

「でしょ?」


ヒムロ・ドーランは歩きながらある親子に目を向けた。


「パパ…力持ち!」

「力持ちなのはお前たちをまもるためだ!」


その光景を見て昔のことを思い出していた。


(父ちゃん…俺は強くなれたのか?)


そう彼より強かった実の父を思い出しながら…

エルテニア領があった場所はもともとサツヴァ武国のものであった。ハッシュワルドという名前だったそこに俺は貧しいながらも過ごしていた。

「お腹減ったな…父ちゃんまだかな」

「すまん!狩りが遅くなってしまった!すぐに飯を作るからな!」


母が死んで父と二人暮らしだった。

俺の人間の骨格を作ってくれたのは父と言ってもいいだろう。

父ちゃんはA級の冒険者であり未踏のダンジョンを制覇したこともあるベテランだ。


「ヒムロ今日はご馳走だぞ」

「ほんと!?」


俺は腹が減っていたためか目を輝かせる。

今日の夕飯は熊鍋か……久しぶりに食べるな……美味いだろうなぁ……

「いただきます!」


俺はガツガツと食べる。やっぱりうめぇや!

父ちゃんも嬉しそうにしていた。


「今日は良い日だ」

「なんかあったの?」

「明日はお前の誕生日だからな。一緒に祝おう」


父ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。

その日の夜寝る前に俺は父ちゃんにこんな質問をした。


「ねぇ……父ちゃんはなんでそんなに強いの?」


父ちゃんはしばらく考えてから答えた。

「そりゃ……鍛錬あるのみさ!」

「なるほど!俺も頑張れば父ちゃんみたいになれるかな?」

「なれるさ!夢は大きく持て!」


父の背中はとても大きくかっこよく感じた。父は正義感が強くハッシュワルドで悪さをする奴らを見逃さなかった。


「金出せよ雑魚」

「老人は通行料があるんだわ」

「そ、そんな」

「ヒムロ…父ちゃんの影に隠れとけ」

そんな輩を見た父の顔は鬼のようだった。

揉め事に首を突っ込むたちである。


「おまえらそんな通行料聞いたことねぇな」

「なんだ爺?ぶっ飛ばすぞ」


父はニヤニヤ笑いながら

「やってみろ」


次の瞬間

「ぎゃああああ」

「なに!?」


輩は地面にひれ伏すことになった。その理由は拳による一撃である。


「ヒムロ……見ていたか?これが真髄だ」

「父ちゃん……すごい!」


その頃から俺の憧れになったんだろう……


父が死ぬ少し前の出来事だった。

いつも通り家で飯を食べている時

「ヒムロ……」

「どうしたの?父ちゃん?」

「……お前に渡すものがある」


父は机の上に置かれた包み紙を差し出してきた。それを開くとそこには一つの籠手が入っていた。


「これは……」

「お守りだ。……大事にとっておけ」

「ありがとう!!」


俺は泣いて喜んだ。父は満足げに微笑んだ。

しかし父との別れは唐突に訪れた。


「ヒムロ!!起きろ!ヒムロォ!」

「ん~?」


目を覚ますとそこには血塗れになった父の姿があった。

「ど、どうしたんだよ!」

「ぐふっ……敵襲だ……早く逃げろ……」

「敵襲!?なんで!?一体誰なんだよ!」


父が最後に俺に向かって叫んだ言葉が耳から離れることはなかった。

「敵国のエランテルだよ!」


それは当時サツヴァと同盟を組んでいたリゼの住んでいるエランテル王国だった。

その時の俺はまだ幼くて何もわからなかったが後に知ることになる。


「この村を根絶やしにしろー!」

「いたぞ!」

「と、父ちゃん!」


父は無数の矢で貫かれており即死してもおかしくない状態であった。


「やり方が汚ねぇな…エランテルていうところは!それでも騎士か!あとなぁこの村は貧しいながらも一生懸命に生きてる…」


父は立ち上がった誰よりも強い体と心で…


「そんななりでよく生きてんなぁ!」

「ちょうどいい体ならしになりそうだぁ!」

父ちゃんはカウンターで騎士の喉仏をとった。

そしてそのまま地面へと叩きつける


「来世でやり直せ蛆虫ども!」

「うぎゃあ!」


そいつの後頭部は潰れて絶命した。


「どうした仲間がやられたんだぞ?仇はとらねぇのか?」


血塗れの父ちゃんの顔はまさしく夜叉だった。



「か、かかれ!」

その号令の元、騎士らは一斉に父に向かってきた。


《ドーラ流体術》

【武技・連撃拳】


父の周りに集まった騎士共は倒れていく。まるで竜巻のように拳を振り回していた。


《ドーラ流体術》

【武技・龍】


騎士らは唖然とする。無理もないだろうここにいるのは最強ともいわれる一人の武人なのだから……


《ドーラ流体術》

【絶拳】


父の腕から真空波が放たれる。その一撃によって騎士共は切り刻まれるのだった。


全て殲滅し終えると父の口から大量の血が溢れた。

ガキでもわかった父は長くないと…父は落ちたタバコ拾い吸う。

「ヒムロ…大丈夫かぁ?」

「痛くない!父ちゃんの子だから!」

「そうかぁ強い子だぁ…ぐふぅ…絶対父ちゃんより強くなれ」

「父ちゃん…僕の治癒で直してあげるから…」

「ヒムロ…治癒で治るならいくらでも痛がっていい…だけどな実際痛がっても戦場では通じない…ダセェだけだ。こんなもん痛くも痒くもねぇんだよ」


父ちゃんは今際の際でそう言ったのだ。

生き残った人たちが駆け寄ってきた時父ちゃんはうつ伏せになり倒れた。

無数の矢お深い切り傷が不味く大量出血だった。

世界一強いと思っていた父が死んでしまった。

そして俺はエランテルに復讐を誓うが親がいないため浮浪児となり各地を転々していた。食事は父の約束を守るために魔獣を狩っては食べを繰り返し行った。そして、背は高くなり誰よりも腕は太くなった。

そしてジレンの旦那に拾われ今の地位に着いた。

どういうわけだが父のことを思い出していた。


「今日はいい風が吹いている…喧嘩日和だな」

「ヒムロの兄貴は次元が違う。だから背中を任せられる」



その頃体調が戻ったリゼはアマダ村へと赴いていた。

アマダ村の絹製品取引の仕事のために…


「この間まで死にかけてたのに仕事とはねリゼさんよぉ」


この男【新撰組】2番組隊長シェン・ナラガク…徒手空拳を使う猛者だ。前世は永倉新八…俺の親友である。


「休んでいた分の仕事をしないと領内運営は破綻してしまうわ。それにサツヴァの動きも気になるし…」


私たちはサツヴァがアマダ村を狙うことをヒュースに確認していた。しかし時期まではわかないということだ。

いろんな憶測を予想して入村しようとした時振り向くとそこにいたのはヒムロドーラとアキだった。


「鉢合わせになるとはなぁ」

「これは予想外ですね…鬼姫とあれは2番組隊長シェンですよ。」


2人の背後に数人の部下を引き連れていた。


「ヒュースの情報ちと早すぎねぇか?」

「さすがにそうですね。それで貴方たちの目的は分かってますよ。アマダ村の侵略ですよね?」

「わかってんなら話が速え…どいてもらおうか」


ヒムロは拳を鳴らし戦闘態勢に入るがシェンが懐に入っていた。だが


「なんだ?その眠たい動きは!」


互いの拳がぶつかり合い空気が痺れた。


「シェン…あの馬鹿!他の隊士は各個撃破もしくは住民避難!」

「了解!」


期せずサツヴァ武国の幹部たちとの激突…そしてアマダ村防衛の大乱闘がはじまるのであった。

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