二十四ノ訓
私はそれを耳に当てる。
すると、雑音混じりの会話が聞こえてきた。
《お嬢様、ご報告が》
《クラウス?ええ。何かしら?》
《サツヴァ武国についてです。やはり、あの国は我々に戦争を仕掛けてくるつもりのようです》
クラウスは淡々と報告をしてくれるが……私は内心穏やかじゃない。だって、その情報ってついさっきシュタルク伯爵から聞いたばかりだもの。
「……そう」
《お嬢様、お気をつけ下さいませ。この度は私も参戦致しますので》
「クラウス…ラーダと開発部に伝えておいてくれる?例のアレの完成を急がせて」
「かしこまりました」
それを最後に、クラウスは連絡を切った。私はそれを外すと、ヒュースに返す。
そして、すぐまた違うところに視線を移す。その視線の先にはディーノの姿があった。相変わらずモテているわね……本人は興味ないくせに。その証拠に凄く面倒そうな顔してる。ああいうところは相変わらずね……そう思ったのだが、何故かすぐに彼と目が合ってしまった。すると彼はこちらにやってきたのだ!
「リゼよ何やら面白いことをするように見えるな」
「そう見える?」
「俺の眼を誤魔化そうとしても無駄だ。お前が面白いことをする時は、顔が変だからな。」
何それ……と私は少し呆れたが……まあ、ディーノはこういう人だから仕方がない。
それに、彼は私の護衛だもの。私が何かしでかす時は必ず彼が傍にいる。それは当たり前と言えば当たり前なのだけれども……。
「お前、エルテニア領に戻るのは何時になる?」
「明日には発つわ」
「そうか……俺は夜の街に行く」
ディーノはそれだけ聞くと、どこかへと行ってしまった。彼の気まぐれは今に始まったことじゃないからいいけれど……本当に自由な人よね。まあ、それが彼の良さでもあるのだけれども。
私はその後しばらくパーティーを楽しんだ。
屋敷に戻ってから、私は早速ラーダに例のアレの進捗状況を確認して報告があるまで待機。とにかく待つしかないのよね……こういう時は。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま、カーラ」
和服を脱いでいると、カーラがやってきた。彼女は私の着替えを手伝うためにいるメイドだ。まだ若いのにとても優秀で、よく働いてくれる。本当にありがたいわ。
「お食事は如何致しますか?」
「そうね…まだ仕事が残っているからその時に持ってきてもらえる?」
そして、また書類の山と格闘かしら。そう思いつつ、私はカーラにお願いする。
すると、彼女はとても嬉しそうな顔でこう言ってくれたのだ。
《はい!かしこまりました》
と……本当に良い娘ね。これから存分に発揮していって欲しいわ。
* 翌朝、ラーダが執務室にやってきた。その報告を聞きましょう。
ええー……と彼は1枚の紙を差し出してきた。そこには“アレ”の進捗状況が書かれている。
それによると……どうやらまもなく完成するということだ。
これは素直に嬉しいわね。
これがあれば、少しは心強いし。
ラーダは興奮気味に報告してくれる。本当ね……あと1つなのね。できれば複数あれば良かったのだけれども。けれども、無いよりは断然マシだものね。有り難いわ……本当にありがたいことね。
私はそれを読みながら、彼に指示を出していく。
《そう、それは良い知らせね。なら早速取り掛かってちょうだい》
《はい!かしこまりました。お嬢様》 そして、ラーダは執務室を出て行く。彼の足音が遠のいていくのを聞きながら……私は一つため息をつく。
まったく……忙しすぎて睡眠が取れない…。
まあ、睡眠時間が短くても私の身体的に問題はないのだけれども……眠いものは眠いのよね……。でも、仕事を片付けないと。
こうして朝まで書類整理していた。




