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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔法と科学で究極の兵器を作り出す〜人形機動戦車に憧れて、何故か戦争に巻き込まれた〜(お試し)

作者: aira

お試しです。

「第2防衛地区からの伝令です。敵魔法部隊からの襲撃により第3防衛ラインまで後退。至急援軍求む。との事です」



「伝令ご苦労。では第2防衛地区に第17魔法士部隊を派遣しろ」



「はっ」


敬礼して退室したのを見送ってから口を開く。



「最後の悪あがきか。貴重な魔法士を使い捨てにするなど、我が国からすると信じられんな」



「奴らは表向きには魔法士を秩序を乱す者、社会を混乱させる者と評してディスターブと蔑み捕らえて、一方では戦力として利用し、資金を集める手段として利用していますからね。能力の低い者は使い潰す駒としてか見ていないのでしょう」



「魔法士を使って混乱させ、それを敵の魔法士が鎮圧する。それを理由に迫害し、孤立した魔法士を連れ去り利用する。市民からすると、やはり魔法士は混乱を招く大元と見られ、魔法士達が迫害され続ける。まさしく負のループだな。しかし、この国の内乱も落ち着いて来た頃だ。恐らくこれが最後の抵抗だろう。一ヶ月様子を見て、敵に動きが見られなければ若い兵士から順次帰還させる予定と伝えてくれ。それまでにはいつでも帰還出来るように準備させろ」



「はっ」




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「魔法士が指導する国など、争いを招く災いその物だ。我々がこの国を正す最後の希望だ。皆も見ただろう。敵の魔法士達が一瞬にして、我々の仲間を、家族を焼き尽くすその光景を。あんな危険な事が出来る魔法士を他の人間と同じように生活させていいはずが無い。我々のような魔法の使えない者達が徹底的に管理する事によって、魔法士の危険性を正しく理解し、平和な国を作る事が出来るのだ。強大な力で支配し、恐怖によって従わせるのは間違っている。皆、これから生まれてくる子供達の為にも我々が戦い続けなければならない。我々だけがこの世界の希望なのだ。では作戦を開始する」



「予定通り敵さんが動き始めました」



「了解。全隊員に通達。予定通りに作戦開始。繰り返す、予定通りに作戦開始」




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「我々以外の部隊が作戦開始し、全部隊が制圧完了との事です」


「やっと我々の出番だな。ではこれから我々第17魔法士部隊が敵魔法士を無力化する。敵の指揮官は必ず生きたまま捕えろ」



「「了解」」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「敵襲。敵襲。全員で応戦しろ」



「隊長、敵はスメラギの魔法士部隊です。加速術式も貫通術式も通用しません」



「クソ。あの厄介な電磁フィールドか。魔法力に余裕があるやつにはこれを使わせろ。対魔法士用の特殊弾だ。あまり無駄打ちさせるなよ」



「はっ」



「クソっクソっ。連絡が途絶えたから応援に来てみれば、まさかこの国がスメラギの力を借りるとは予定外だ。我々3人以外は囮にして、すぐにここから撤退するぞ」



「はっ」



「急げ急げ。やつらはすぐ此処までくるぞ。なんとしても本国までこれを持ち帰らなくては」


その時、部屋全体に甲高い金属音の様な音が響き渡り、そこに居た者は全員意識を失い倒れ伏した。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「全隊員に通達、制圧完了。繰り返す、制圧完了。指揮していたと思われる3名も捕えた。現場は後続に任せる。全員速やかに撤退せよ。繰り返す、全員速やかに撤退せよ」



「ふぅー。我が軍は圧倒的だな。まるで負ける要素がない。試作品の新兵器も概ね問題無いようで安心だな」



「神崎特務兵、いくら特務でも毎回整備兵が前線に出るのは如何なものか。私の耳にも現場からの色々な声が聞こえてくる。軍での特別待遇は要らぬ争いを招く事になるぞ」



「試作品の新兵器の実戦データを現場で直接観察するのが今回の俺の特務なんで。文句があるなら上にお願いしますよ」



「これは私からのアドバイスだ。どう受け止めるかは君次第だ」



「なる程ね。ご忠告どうも」



ようするに、お前の特別待遇はかなり悪目立ちしてる。自覚してるのか?自重しろ。現場では誰も助けてくれないぞ。まあそんな所だろう。


俺は兵器開発なんてしたこと無いし、権限も無い。だから手っ取り早く技術を身につける為に、コネを使って軍の整備兵になった。そこから幾つかの部隊を渡り歩いて知識を身に着けて、新兵器を運用している部隊に配属。←今ここ。


誰だよ。今回のこんな変な特務を出した奴は。


拠点に戻ると直ぐさま呼び出され、報告書の提出と共に特務の終了。即時の帰国命令と共に父親からの呼び出し。


憂鬱だな。


俺は魔法は使えるが、実戦で使える様な魔法力は無い。規模も小さいし、演算速度も遅い。つまりは小さい魔法しか使えず、発動も遅い。戦いは疎か、社会貢献出来る様な職にも就けない。


魔法と関係ない職に就けば問題無いが、俺は魔法が好きだ。せっかく魔法のある世界に生まれて、僅かでも魔法が使えるのに諦めるなんて出来ない。だから唯一俺にも可能性がある魔法士用の兵器、演算デバイスの開発者、もしくは整備士になりたかった。


でも魔法士用の演算デバイスの開発、整備の資格取得にはかなり厳しい条件がある。魔法士育成の為の学校の卒業。又は実務経験3年以上で、尚且つ魔法師からの推薦を受けた者。そのどちらかを満たして筆記試験、実技試験に合格すれば魔法士用演算デバイス技術士になれる。



まあ俺は魔法力が弱いから、エリートが行くような魔法士育成高等学校に行けるわけもなく、あらゆるコネを使って軍の整備兵になり、演算デバイスの整備を学び、遂に条件を満たした。戦場からもおさらばだ。あばよ。



それから報告書を提出して直ぐにスメラギに帰国。輸送機から降りると、おやじの護衛兼秘書の佐原さんがお出迎え。俺を絶対に逃さないようにここまでするとは。俺は苦笑いしながらそのまま神崎家の輸送機に乗せられ帰宅。


おやじの話は試験に合格したら家の会社の手伝いをしろとの事。まあ悪い条件では無いので了承。


それからは万全な試験対策を済ませて試験会場へ。


会場は国立魔法士育成高等学校関東支部。この試験資格者は毎年魔法士育成高等学校の卒業生だけだから、俺の存在はまあ目立つこと。あいつ誰だよって視線が凄い。まあそんな有象無象は無視して無事合格。まあ幼馴染のせいでトラブルに巻き込まれたりもしたが、いつもの事だから関係ない。


それから一人暮しをして、家の会社の手伝いをしながら自宅で趣味のデバイス開発を続けていたある日、またまたおやじからの呼び出し。


おやじには会いたくないけど、この設備の整った家も貰ったし、会社での仕事も比較的自由だし、軍での整備兵への口利きもしてもらったし、仕方なく一年振りに実家に帰る事にした。



「入るぞオヤジ」



ノックしながら返事も聞かずに扉を開けた。部屋に入るとまるで岩の様な男がソファーに座っている。頭の毛は生えておらず、ツリ目で眼光鋭く此方を見定めるような目つき。顔の半分には入墨が入っており、〈お前何人殺してきたんだよ〉って顔をしている。



そう、これが俺の父親だ。顔もヤバいが中身も大概イカれてる。こいつのおかげで何度死にそうな目にあったことか。腕を吹き飛ばされた時はマジで殺してやろうと思ったよ。そして俺にだけ異様に厳しい。下の弟達や妹達には下に行けば行くほど優しい。


まあこの家の家族は何故か、下に行けば行く程優秀と言う謎。そして俺は一番の落ちこぼれだ。いや、だって腕を吹き飛ばされたり、刺されたり、斬られたりしたら捻くれるだろ?むしろ捻くれる位で済んでる事が奇跡と思って欲しいね。


オヤジが何か言ってるが無視してソファーに座る。何だかんだ言ってるが、結局は家族だからこそ恨んだりはしていない。会いたくは無いけど結局はこうして会いに来てるしな。それに一応厳しいだけではない。言われたことさえ守ってればかなり自由にさせて貰ってる。



「で、何の用?」



「お前また色んな玩具作ってるんだろ?出来もそれなりに良いそうだな。だからお前に取って置きの仕事をやろう。今度発足された第11兵器開発特務技研の特別特務技術顧問だ。やり甲斐あるだろ?」



「は?まてまて。何か訳の分からん単語が混じってるんだけど?それは兵器工場なのか、開発局なのか、技研なのか、混ざり過ぎて何なのか分からん。しかも俺がそこの特別特務技術顧問?更に訳分からん」



この国には第1兵器工場から第5兵器工場がある。第1兵器工場は特別で、秘匿魔法等を扱う為、すべての権限が認められている。そして最先端の技術で作られる超高性能で超高価な兵器を作ってる。それが第2、第3と進むにつれて、性能は落ちるが量産しやすい性能へとなっていく。


そして開発局は第1から第3までが有り、第1開発局は第2、第3の開発局の監査と、実戦で使える物に認可を与える役目だ。第2、第3の開発局は、全ての兵器工場と協力し、兵器工場等で安全に使えるように、様々な角度から新機能や新技術の安全性や信頼性を高め、実際に使える物にする組織だ。


技研は第1と第2があり、どちらも新たな基礎理論の構築や、新技術の発見、未知の現象の解析等、あったら良いなを実現する為の基礎理論を構築する組織だ。


そして特務とは通常の組織とは異なる命令系統の組織の事で、かなり特殊で特別な組織の事だ。まあ実験的な組織の場合が多い。



「説明するからまず聞け。これは四ノ宮家(しのみやけ)からの要望を受け、天皇陛下が採択された実験的な組織だ。だからこその特務だ」



「いや、余計に訳分からん。皇族には皇族専属の第1兵器工場があるのに?何か欲しいなら第1兵器工場に頼むのが普通だし、技術的にも設備的にもこの国のトップなんだから、わざわざ新しく作らなくても何も問題ないでしょう。それに何で関係ない俺に声がかかるわけ?」



「お前にも大いに関係あるぞ。何しろ四ノ宮家の次女の美琴(みこと)様直々のご指名だ」



開いた口が塞がらないとはこの事だ。最初からずっと意味の通じないやり取りばかりだ。もう駄目だ。説明する気があるのかすら分からん。


よし、考える事を辞めよう。



「おやじ、さっきから皇国語(こうこくご)喋ってる?さっきから俺にはおやじが話してる言葉が皇国語に聞こえないんだが?」



「現実逃避をするな。全てを受け入れろ。いいか?四ノ宮家の次女の美琴様は表向きには病弱で公務に参加出来ない為に、実際のお姿を知る人は殆ど居ない」



おい、おい、おい、おい。この言い方は物凄く俺に取って悪い事が起こるフラグだよな?表向きって事はあれだろ?よし。この話は聞かなかった事にして帰ろう。


「待ておやじ。俺はもうその話を聞きたくない。だからこの話は無かった事に・・・」



「逃げられると思ってるのか?天皇陛下が直接裁可なされたのだぞ?」



そうだった。あまりの展開に現実逃避をしてしまった。天皇陛下の直接の裁可はほぼ勅命と変わらない。


天皇陛下は国そのものよりも上の存在な為、その言葉には絶大な影響力がある。それこそどんな法律よりも優先される程に。だからこそ天皇陛下に選ばれる人には何よりも人格が求められる。そしてそれを理解しているからこそ、滅多な事では勅命を出さないし、市政に干渉する事は滅多にない。


普段は国を見守り、間違った方向に進むとそれを正し、そして国の進むべき道を導く存在。それがこの国の、スメラギ国の天皇陛下だ。


そして俺は口を開くのを辞めた。



「もう気付いたようだが、その美琴様は大変お元気で活発な方だ。しかし多少問題がある為に表に出す事は出来ない。よって表向きには病弱の為に静養されている事にして、実際には偽名を使い活動されている。それが篠崎(しのざき)琴音(ことね)だ」



あーー。はいはい。表向きって発言で何となく分かってた。


あいつは秘密主義で訳分からん謎の奴だったし、おやじの接し方が異常に丁寧過ぎるのも不思議に思ってた。


知らぬが仏。藪を突いて蛇を出す。見ぬもの清し。パンドラの箱。まさしくそれだな。


俺は親父の話を聞き流しながら、これからどうするか考えていた。







朝から輸送機に乗せられ第1行政区の第5開発地区へと到着。そこから地下鉄で第11特区へ。そこは広大な敷地が広がる埋立地。周りは特殊な灰色の鋼材の壁に囲まれ、居住区や商業区、工業区や生産区、特殊な実験場等、様々な施設に別れた国の管理地区だ。


そこから装甲車に乗り第11兵器開発特務技研の建物に到着し、様々なセキュリティを通過し地下10階にある局長室に到着。中に入ると一人の女性が待ち構えていた。



「やっと来たな」



そう言って立ち上がり、不敵な笑みを浮かべるこいつが篠崎 琴音。


またの名を四ノ宮家の美琴様。


皇族は全員髪色は青みがかった黒髪で、信じられない程に色白だ。そして男子だけに現れる銀色の目。必ずではないけどだいたい銀色の目だ。遠くから見てもひと目で感じる程浮世離れしていて、声を発するのを躊躇う程神々しい。


一方女子は髪色と肌の色は同じだが、必ず目は黒目だ。


だがしかし、琴音の目は金色だ。普段は黒目に偽装しているけど、一度偽装を解いたのを見た事がある。だからこそ俺は皇族だとは思わなかった。


身長は170cmで手足が長く、顔も小さい。かなり華奢な体型で腰も細くか弱く見える。胸はそこそこの膨らみはあるがロマンを感じる程ではない。


まぁ美人なのは確かだ。性格以外は。


そしてモテる。信じられない程モテる。ムカつく位モテる。まぁありえん位の美人だから分からなくもない。


だーけーどー、こいつと話てるのを見られるだけで周りから嫉妬と軽蔑の眼差しを向けられるのは頂けない。実際に俺に手を出してくる奴もいた。


男も女もだ。


こいつのお陰で友達も殆ど居ないし、女が信用出来ないのも理解した。


そしてそんな俺を見て楽しんでるのがこいつだ。



「ホント性格悪いなお前。しかもこんな事に勅命使うとかありえんだろ。お前は天皇陛下を何だと思ってるんだ?不敬だぞ」



「ちゃんとした理由があるに決まってるでしょ。いくら天皇陛下の実の娘だからってちゃんとした理由も無く、我儘でこんな事出来る訳ないでしょ。まったく。それ位考えれば分かるでしょ」



こいつホントにムカつく。こんな奴がホントに皇族かよ。



「ホントにちゃんとした理由が有るなら先ずは本人に説明して、確認してからこう言う事やらない?」



「ちゃんと聞いたでしょ。ほら、前に演算デバイスのプログラム組んでる時に兵器開発の許可があればなんとかかんとかとか言ってた時に、許可が出たら作りたい?って聞いたら作りたいって言ったじゃん」



「はあ?」



確かあの時はプログラム組んでる時に兵器に使えそうな構想を思いついてしまって、軽く話した気がする。そして、それ作りたい?みたいに聞かれて適当に「もし許可が取れたらな。そしたら適当に作って、後はお前に任せるよ」的な事を言った気がする。



「おい、まさかそんな適当な会話だけで確認したって言いたいのか?先ずはこの組織を作ったちゃんとした理由を説明しろ」



「はぁ。別に理由なんてどうでも良いでしょ。ちゃんと言質は取ったんだから。そーれーにー、国家機密の話が聞きたいの?神崎(かんざき)灯火(とうか)君?」



「あー。分かった。分かった。もう聞かない。それでこの組織は何を何処まで出来るんだ?」



それから粗方説明を受けた。


先ずは下の役職は色々有るけど、とりあえず省いてここのトップは琴音。役職は局長。そして俺は琴音の直々の部下。外部からの相談役とも言う。それから俺と琴音に対する命令権を持ってるのは四ノ宮家の美琴様。そして皇族の美琴様に命令したり、お願い出来るのは皇族位だ。だから実質俺達に特務を出せるのは美琴様だけだ。大体の有象無象の命令は無視出来る。


因みに今目の前に居るこいつは篠崎琴音だ。だから普段はここの局長だ。そして俺は琴音の補佐役兼部下だ。だからもしここで何か有った時は〈美琴様〉になる必要がある。


何とややこしく、回りくどいやり方。


まあこいつらしいなとも思う。


そして技術関連の情報は第1級機密事項以外は閲覧可能。素晴らしい。


そして作る物に関しては、許可の範囲内なら何でも作れる。勿論予算は有限だし、特務が有る時は特務が最優先事項だ。


そして最初の特務は新型の強化外骨格と専用装備の開発だ。


それから新しい自宅へと案内された。



「何か前の家より贅沢なんだが。この家は一体誰が用意したんだ?」



「琴音様がご用意されたそうです。前の持ち主が第1開発局の局長で、前々から売りに出されていたそうなのですが、敷地面積も広く、設備も最新の機材も揃っていて、セキュリティも万全で、立地も良く、かなり高額な為ずっと残っていたのだそうです」



「いまさらっととんでもない発言したよね?第1の局長って。はぁ。そう言えばキミは・・・」



柳沢(やなぎさわ)(すず)です。そして私はただの護衛秘書です」



若干被せ気味に遮られた。引きつった笑みしか出てこない。ってか絶対普通じゃないよね?一般人じゃ無いよね?そもそもただの護衛秘書って何?護衛秘書って言葉初めて聞いたんだけど?何で当たり前みたいに話てるの?



「えっと、どう見ても普通の・・・」



「ただの護衛秘書です」



「えっと・・・」



「ただの護衛秘書です」



「お、おう。これから宜しく」



「宜しくお願いします。灯火様」



若干気圧されながらも頑張ってみたが、そんな言葉しか出て来なかった。


それから一週間掛けて強化外骨格の企画書をまとめた。



「それにしても、自宅にあれ程の演算コアが組み込まれてるとは驚いたぞ。お陰で一週間である程度の目処はついたよ」



琴音は何故か笑顔を浮かべながら口の端を引くつかせている。


え?何?怒ってるの?何故に?Why?



「お前は馬鹿なんだな?馬鹿なんだろ。新しい方針を出してまだ一週間しか経って無いんだぞ?それにこのデータは何だ?VRキャストでの検証データだと?ほぼ完成してるじゃないか」



「え?何で怒ってるの?しかも普通に完成してないけど?この軍で使われてる特殊樹脂のデータを見て、これなら干渉さえ上手く出来れば形状変化させて強化外骨格に出来ると思ったんだよね。でも条件設定が難しくて中々上手くいかない。多分上手く条件さえ満たせば完成の見込みはあると思う」



「分かった。ちょっと鈴と話があるから休憩室で待っててくれ」



「お、おう」



一体何だったんだ?見込みがあるってだけで全然完成してないのに。言わば、理論だけの妄想の羅列みたいな企画書だったんだけどな。ま、いっか。



「どう思った?」



「間違いなく天才です。見た目や言動、学力に関しては貴族としては凡人ですが、何かを作る事に関しては天才、いえ、異端とも言えるかと」



「初っ端からまさかこれ程の企画書を作ってくるとは。私は灯火の事を誰よりも評価しているつもりだったが、まだまだ認識が甘かったようだ」



「琴音様が、灯火様をずっと孤立させて隔離しているのを疑問に思っていましたが、今はその理由を深く理解しました。あの知識や発想を他の人に話すだけでもかなり危険かと」



「理解出来たならこれからは更に気をつけてくれ。しかし、まさかこんな発想をしてくるとは。直ぐに会議を開く。この技術は第1級秘匿技術として進める。天皇陛下と叔父上にも報告しておいてくれ」



「かしこまりました」



ーーーーーーーーーーーーーーー



「まさか、こんな発想があったとは。ここに配属させられる時は子供のお遊びに付き合わされるだけの左遷部署だと思ったが、まさか最初からこれ程の開発を任せられるとは」



「副局長、私も興奮しています。まさか第1級機密技術の開発に関わる事が出来るなんて」



「そうだ。だがこのままだとまだまだ粗が多い。更に完成度を高めて、我々の技術力を証明する。お前ら、当分家に帰れると思うなよ?」



「「はい」」



これはチャンスだ。このとてつもない発想力。だがこの検証データを見る限り、実際の製品としての開発をしたことが無いのは直ぐに分かる。明らかな間違い箇所が幾つもある。恐らく整備経験しかないのだろう。知っている知識で無理やり繋げたような歪さだ。


だが才能は本物だ。この1の発想を我々の技術力で10にする。そしてそれを使って現場に必要とされる機能を組み込み100にする。そこまですれば後は勝手に話が進む。


自分の発想を、想像以上のクオリティで実現してくれた事に感謝して、更に新たな開発を任せられる。


現場で実際に使用した人間からも満足され、軍からの評価も上がり更に後押しとなる。



「ぐふふふふふ」



「おい、副局長が変な笑い方してるぞ」



「ほっとけほっとけ。それより俺は早くこいつを完成させたいんだよ」



「気持ちは分かるぜ。何せ俺達はずっと日陰者だったからな。今までは困った時の便利屋位の扱いしかされなかったんだ。ここで俺達の力を証明する」



「「おう」」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


家に戻り、自分の時間が出来たので趣味の研究の続きを始めた。


今回の強化外骨格で使った技術は、ライダースーツに使われてる衝撃吸収素材の技術と、プラスチック技術(合成樹脂)を使った外骨格だ。


衝撃吸収素材の元は特殊なスライムで、優しく触るとドロドロしてるけど、強い衝撃を与えると石のように固くなる素材だ。


そしてプラスチック技術は、分子構造をある一定の配列に形成する事によって薄くて軽く、銃弾も弾く特殊なプラスチックを形成する技術だ。


この二つの技術を合わせて、更に応用する事によって、人間の熱エネルギーにより収縮し、動作補助を行いよりより早く、より強力な動きが可能になる。


更に運動エネルギーを使い、動いている間は一部が硬化し、人体のバランスを整え、不安定な姿勢でもより安定した動きが可能になる。


更に衝撃を吸収する性質を使い、姿勢が崩れなければビルの屋上から落下しても無事に着地する事が出来る。


これらの技術により、より重い物を持て、より反動の大きい武器を扱え、超人的な動きを可能とし、さらにその動きを安定して発揮する事が出来る。


そして衝撃に強く、打撃、斬撃、射撃にも対応している。特殊な魔法や、特殊な兵器には対応してないが、大抵の物理攻撃に対応している。


そしてこの技術をヒントに新しい魔法を開発しようとしている。


名付けて力場装甲(エネルギー変換装甲)だ。


これは物理的なエネルギー、運動エネルギーを吸収して装甲を形成する仕組みだ。衝撃吸収の仕組みと、より硬化する分子構造と、物質の相対位置の固定を組み合わせることで、少ない力で大きな力を防ぐ新しい魔法だ。


前々からこの魔法を作ろうと研究していたけど、どうしても相手の攻撃よりも大きな力が必要だった。だけど今回の強化外骨格で現実味が増した気がする。


魔法士の脳は特殊で、普通の人間とは違う配列をしている。その特殊な配列により魔法を発動している。だけどその特殊な配列の為、演算量にはかなりの個人差があるし、何かの事象に特化している事が多い。


そしてその魔法士の特殊な配列の脳を擬似的に再現した物が魔法士用の演算デバイスだ。でもこれはあくまでも補助であり、これがあれば魔法が発動する訳では無い。


昔は水晶に魔法陣を刻み、それを杖に組み込む事で照準補助として使っていたらしい。


これら様々な理由から防御魔法は格下の攻撃しか防ぐ事が出来ず、実戦では殆ど使われない魔法となった。


しかし、今の科学技術と魔法技術を組み合わせる事で、実戦で使える防御魔法を開発出来ると信じて研究してきた。



これから面白くなるな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「局長、外部からの不正アクセスです。ダミーサーバーを経由して侵入しようとしています。この速度は通常の方法ではありえません」



「念の為メインサーバーを一時的に切り離して。侵入者のアクセス記録も追跡して。何処まで侵入されてる?」



「今現在デルタサーバーにアクセスされています。セキュリティシステムもジャマーシステムも7割方突破されています」



「第2ケーブルからの侵入を確認。現在逆探知を実行中。確認出来ました。第1行政区の3番地区、大東亜オリンピアビルからのアクセスです」



「不正アクセス止まりました。恐らく逆探知された事に気づいたと思われます」



「直ぐに公安に連絡して。それから相手が魔法士の可能性がある事も伝えて」



「はい」



「それにしても恐ろしい速度で侵入してきましたね。魔法士でしょうか?」



「恐らくね。まるでセキュリティを無視するかのアクセス速度。魔法士でほぼ間違い無いでしょうね。それにしてもこの逆探知システム、まさかこれ程早く特定出来るとはね。相手も相当焦ったはずよ」



「いつの間にこんなシステムが開発されたんですか?余りの速さに驚きです」



「これは灯火のオリジナルのシステムよ。回線毎にグリッドシステムを導入する事により、どの回線からアクセスされたかが直ぐに分かるようになってるの。こちらからはただグリッドシステムを遡るだけで良いから直ぐに見つけられるって訳」



「凄いですね。セキュリティを無視する魔法に対してはかなり有効ですね。相手も逆探知された事に気付いたら、悠長にその場に留まって要られませんからね。今回の相手は予想外の速さに今頃相当焦ってるんじゃないですか」



「多分ね。それにこのグリッドシステムはデジタルの仕組みでは無く、アナログの仕組みなのよ。だからグリッドシステム対策は物理的な破壊が必要なんだけど、破壊すると回線が繋がらないから本末転倒ね。つまりは今現在のネットワークシステムにとっては最強の安全対策って訳」



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、おい、速攻で逆探知されたぞ。撤収だ。急げ急げ」



「おい、一体どうなってるんだ?この作戦にどれだけの手間と時間がかかったと思ってるんだ?」



「そんなの知るか。こんな十数秒で逆探知されるとか思わんだろ。早くしないと置いてくぞ。流石に逃げない奴の面倒までは見きれん」



「脱出経路は確保出来てるか?」



「今の所問題無いです」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「何とか二人は確保出来たか」



「はい。残りは自害されました。これで何とか公安の面目もたちますね」



すると突然銃声が2発聞こえてきた。



「撃て撃て撃て」




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