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電脳世界の僕たち

作者: ゴエモン

 電脳の普及は一瞬だった。ウィルスの蔓延よりも早かった。あまりの早さに法整備は追いつかず、ありとあらゆる問題が噴出した。

 まずはこれだ。目をつぶるだけで電能世界に入れること。あれは勤務中のサボりを初め交通事故を激増させた。しかし、そんなのはまだ可愛い問題だった。

 人が現実世界と電脳世界の判別が次第につかなくなっていったのだ。突然持ってる傘を振り回し、経験値稼ぎだドロップアイテムだと騒ぎ始めたり、全く知らない人を自分の恋人だとか言い出す人間が山程増えた。

 でも、それもまだいい方だった。時代は進み働かなくても良くなった結果、電脳世界に籠もりきりなり、肉体の衰えどころか、生命活動すら危うくなってる人間が増えているのだ。排泄や栄養補給は全て介護ロボットがやってくれるけど、10代の若者が利用者のメインってどういうこと?

 そこに目をつけたある企業が、入るだけで死ぬまで面倒を見てくれるカプセルを開発した。もうそこから出る必要ない寒さも暑さも食事も排泄も税金の支払いも全てカプセル内で終結してまうのだ。そしてそのカプセルが飛ぶように売れた。若者だけでなく中高年も老人達も。人は皆電脳をつけカプセルに自ら入っていった。

 レトロな映画に似たような話があった。そこではカプセルの中で機械に飼われた人間はただバーチャル世界で生きるだけの存在だった。でも現実では人間自らカプセルに入っていった。

 そして滅亡する国が出てきた。そりゃそうだ。あらゆる生産活動をしなくなったのだ、農産物や工業製品だけでなく、子孫さえもつくらなくなったのだ。作る必要がなくなったのだ、精神的にも肉体的にも電脳世界によって与えられるもので満足出来るのだから。

 このままでいけないと私はこの電脳至上主義の社会に危険信号を照らす。人間は今現実世界に回帰しなければならいのだ。


 だからって、私のこんなコラムを真に受けて行動する人なんていないだろうな。電脳世界の中で電脳に書いてもらって投稿するのだから説得力なんて微塵もない。ではなんで書いてるかって? なんか、問題提起っぽいことをして、真面目ぶりたい人は山程いる。私はそんな人達の議論の場という井戸端会議の遊び場を作るコラムニストなのだから。




 ◇    ◇    ◇    ◇    ◇




 電脳の発明は革命的だった。脳内にちょっとしたチップを埋め込むだけで、世界中に広がるネットワークにアクセス出来るようになった。

 埋め込むといっても、ピアスをあけるより簡単だ。判子みたいなものでオデコにポンと押すだけ。痕も残らない。これで僕たちの脳内は世界中に繋がるのだ。

 検索機能はもちろん、わからない言語の同時通訳だって全部自動だ。

 目をつぶれば映画だってアニメだって見放題。バーチャル世界の中で中世の世界だって未来の世界だって冒険だってできる。もうすでに色んなゲームが発売されてる。今までの画面のなかとかゴーグルの中とは大違いだ。もうそのまま異世界に転移したのと寸分違わない。食べるものだってちゃんと味がする。攻撃を受けたらちょっと痛いし、走ったらちゃんと疲れるけどね。

 友達だろうが恋人だろうがこの異世界なら作るのは簡単だ。いくつかのパラメータを振り分け好みの画像をアップロードすれば自動的に出来てしまう。途中で変えることだって楽なものだ。エッチなこともし放題だ! ちょっと課金は高いけどね。そうそうちゃんと課金しないと至るところに広告が出て鬱陶しいから注意してね

 僕ら人類はついに労働から開放された。本当に素晴らしいことだ。これも電脳のおかげなんだ。もう、理不尽で不合理な職場に行く必要はないんだ。


 おっともうこんな時間だ。ギルドの集まりがあるんだ。いろいろ狩りをしたり作物をつくったり武器を作ったりやることいっぱいなんだ。ちょっと面倒臭い奴らとかギルドマスターはどなったりうるさいけどね。こっちのAI育成ゲームはこの辺にしとくね。それじゃ向こうに行ってくる。電脳世界の僕たちは忙しいんだ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] そろそろ新作書いてないかなと思って覗きに来たら、これまたなかなかオツなものを。 サイバーパンクいいよね。 シロマサ先生の作品群は言うに及ばず。 ブレードランナー。ニューロマンサー。 パプリ…
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