表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

無能として追放されるらしいんだけど何か様子がおかしい

作者: 粉吹き芋

「フリージア、君のような無能をこれ以上連れて旅することはできない!」

「え」

私、フリージアにこう宣言したのは冒険者パーティ<スレイヤー>のリーダーだった。


自身の身長を超える巨大な鉄塊とも言える大剣を振り回し、時には仲間の被ダメージを庇いどんな敵も薙ぎ払う。

リーダー・豪剣のリック


目にも留まらぬ身のこなしで敵を翻弄し、両手のナイフで切り刻む。

スカウト・神速のレイン


極みに達したその魔力でドラゴンさえも焼き尽くす。

大魔導・スペルマスター ルルア


世界の全てを持ち運べるとすら言われるポーター。

無限収納のディラン


そして私、高位ヒーラーであるフリージア。

この5人がスレイヤーのメンバーだ。

見ての通り、私以外は二つ名持ちの有名なパーティーなのだが…。


「私を追放するんですか…!?」

「そうだ。君程度のヒーラーなら他に宛もあるしな。ディランも賛成してくれている」


そんな馬鹿な!

ディランは私の幼馴染でこれまで苦楽を分かち合ってきたのに。

そんな思いで彼に目を向けると強い感情のこもった目で私を見ていた。

…この気持は私の独りよがりな思いだったんだ…。

絶望的な気分だ。

自然と涙が溢れてくる。


「私たちは断固反対よ」

「ん。反対」


ルルアとレインだ。

二人共、高価ながらも強力な装備に身を包み、リックとディランを睨みつけている。


「これは決定事項だよ。異論があるなら抜けてくれても構わない…ディラン」

「ああ。これが二人から預かっている荷物と資金だ」


ディランがルルア達の財産を目の前に積み上げていく。

白金貨に金銀の貨幣、帝国札もあるとは随分と稼いでいる。

その他にも冒険者なら誰もが憧れるであろう装備品の数々…。

まあとは言え、お金は各々が持っているマジックバッグに入る程度。

…どうせなら私の荷物も出してくれれば良いのに。


「私達も追い出そうって?上等じゃないの!」

「スカウトも後衛も無しで旅を続ける?愚か」

「なんとか他に探すさ。それに異性との旅も中々に骨が折れるからね」


ルルア達はそんなやり取りをしながら荷物を回収している。

スレイヤーみたいな有名パーティがこんなにあっさりと解散しちゃうなんて…。


「私達と来る?フリージア?」

「教会に戻ります…私じゃ力不足らしいですし」

「そう…何かあったらギルドにいらっしゃいな」

「その時は歓迎する。期待」


私は、振り返りもせずに宿を出ていってしまう二人を見送り、ディランに向き直った。


「それじゃあ私のにもt」

「行ったか!?」

「…よし行ったぞ!荷物を纏めろ!急げ!」

「あの…にもt」

「何ボサッとしてんだフリージア!急ぐぞ!」


………………は???


「私がクビなんじゃ…?」

「んな訳あるか!」

「俺が幼馴染のクビを黙ってみてるわけ無いだろうよ」

「え?え?」

「後で説明するから!今は荷物纏めて俺によこせ!」


バタバタと宿の荷物をディランに預けて引き払い、馬車を借りて別の領へ移動した。

あの後に聞いた話では、ルルア達はパーティ資金から高額な装備品の代金を支払っていたらしい。

しかもディランに持たせていた自己資金からの補填もナシ。

実力あるメンバーだった為に何も言えなかったものの、今居る領土で相当に強いメンバー候補を見つけてあるとのことだった。


「どうして私をクビって…」

「あぁ…あれはな?」


私はヒーラーとしてあの二人とも仲が良かった。

それに加えて二人は好きにお金を使えないことから、リックやディランとはあまり良い関係を築いておらず、そんな状態で私をクビにしようと言えば反発するだろうと考えたらしい。


要は私をダシにして浪費家な二人を追い出したかった…と。


「そういう事は事前に相談してほしいですね」

「「フリージアは嘘が顔に出るからなぁ…」」




この後、私たちは新メンバー二人を迎え入れ破竹の勢いで実績を積み上げた。

そして、リックは貴族に叙され、ディランはその無限収納を活かして輸送業を展開。

他の二人も魔法学園や冒険者養成学校の校長職を王家より拝命した。


私はと言うと…。

そこまでヒーラーとしての能力は伸びず…結局王都に居を構え、そこで貧民街の子供達に成長した時に役に立つ算術や文字、礼儀作法などの教育をしている。

いつか私達の冒険譚を皆に教えてみたいとちょっとだけ思っている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ