第二十一話
「それでその魔族はこの館の何処に居るの?」
「館の二階部分の執務室に居る事が多いです。
ただ、二階部分の魔物には私達の様な館の人間の魂は使ってない様でして、なので道中襲われてしまいます。
一階部分でしたら私達しかいませんのでいつでも休みに来てください。
今すぐとは言いませんので、既に長い間待っていたのでこれから何年待ったとしても誤差の範疇ですから。」
笑っていいか分からない言葉に苦笑いするしかないローズにテレイオスは一度村に戻る事を提案する。
「その魔族がどれだけの実力を秘めているか分からない以上、すぐには出来ない。
もうしばらくはただの探索者として実力を上げるのがお互いにとっては良いと思う。
今日の所は一度村に帰り体力を回復した後、修行を再開しよう。」
少女も無理を言うつもりは本当に無いのか快く出口まで案内して見送ってくれた。
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一行は夕方には村に戻る事が出来たが、村人達の様子がおかしい事に気付いた。
村人達は村のあちらこちらで懸命に誰かに呼び掛けている。
何が有ったのか知るために近くにいた老人に話を聞いてみる事にしたのかテレイオスが話しかける。
「すいません、一体この騒ぎはどうしたんで?」
「おぉ、これはお騒がせして申し訳ない。
実は教会に住んでいる孤児がこの時間になっても帰って来ないのです、いつもなら夕食の為既に教会に戻っている筈なのですがねぇ。」
そう言い残すと老人は捜索に戻っていく、ローズ達は詳しい状況を確認する為教会に向かっていく。
教会に戻ると不安から泣いている子ども達を落ち着かせようとシスターが奮闘している。
こちらに気付いたのか建物の中に入るとコット司祭と一緒に出てくる。
「こんな事になってますがまずは無事に戻った事を喜んでおくよ。
ただ聞いてるかもしれないけど今子どもを探していて、帰ってくる途中で見かけませんでした?
居なくなったのは女の子二人なのだけど。」
「子どもは見かけていないな、いつから居ないんだ?」
「ちょうど君達が館に行った頃だね。
他の子どもと遊んでいたんだけどいつの間にか居なくなっていたみたいで、最初はいたずらと思って子ども達だけで探していたらしいけど、見ての通り見つかっていないんだ。」
「私達も探そうか?」
ローズが捜索に協力的な姿勢を見せるがコット司祭は首を横に振り断る。
「君達は数刻とはいえあの館の中に居たんだ、疲れたまま外に出て何か有ったらそれも困る。
それにこっちの土地勘もないのに探されると二次被害が出てもおかしくないからね、今は体力を回復しててよ。
その代わり怪我人が出たらお願いさせて貰うよ。」
コットの言い分に納得した様子のローズと一緒に子ども達も教会の中に入って行く。
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「ローズさんごめんなさいね、あなたにはいくつか噓をついたの。
休憩して貰う為に部屋の中に入れたのではないの、二階に魔族は居なかったの。
倒して貰うにはまだ力が足りないの、だから強くなって。
その為に貴方達の後から子どもが森に来てたのも、館の異変に気付いた魔族が外に出ていたのも言わなかったの。
昔の話を長くしたのもあいつと鉢合わせして欲しくなかったから…。
全てを賭けてでもあいつは倒さなくてはいけないのっ。」
少女は懺悔するかのように手を握り合わせながら牢の中で独白する。
傍には傷つき疲れ果てて眠る二人の子どもの姿とそれを看病するニコファ。
「やっと希望が見えたっ…
後はローズさんの力があの魔族の上を行くのを手伝えばこの地獄の様な呪いから解放される。
例えこの身が地獄に落ちようとも一人では行かないわ。
必ずあの魔族も連れて行くわ…。」
少女は決意の眼差しで牢から出ていく。
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昨夜は山狩りも行たにもかかわらず子ども達は見つからず朝になった。
村人達は諦め村全体が暗い雰囲気に包まれていた。
「こんな状況になったし一旦館に行くのは止めて自分達に出来る事を手伝っていく?」
「いえ、ローズさんには当初の予定通り館の探索を行って貰います。」
デイジーがはっきりした物言いでローズの行動を制止する。
ローズは信じられない物を見るような視線でデイジーを見つめる。
「ローズさん、貴女がここで歩みを止めるのは村単位の損失では収まらないのです。
貴女には人類の脅威になるであろう魔王を討伐するという使命が有るのです、それを怠るのはここの村全てを見捨てる事と同じです。
どうか理解して下さい。」
納得しない様子のローズにテレイオスが話しかける
「分かった、じゃあこうしよう。
本当は夜まで館に籠ってやるつもりだったが、それを夕方までに村に戻るようにしてそれから手伝うのはどうだ?」
「昼までに」
「夕方までが限界だ。
ローズ、分かってくれ。
その気持ちは良い事だし忘れないで欲しいが、物事には優先順位が有るんだ。
子どもを探すのはここの村人でも出来るが、魔王討伐はローズにしか出来ないんだ。
そこは分かるよな?」
ローズは握り拳を作りながら頷き探索の用意を荷物に詰め込み始める。
テレイオス達はホッと一息つくと各々準備をしていく、コットは昨夜から村人との連絡によっていつ寝ているのか分からないが疲れを一切見せないで神父や村人との連携の打ち合わせをしている。
荷物を纏め館へと歩いて行くと玄関の前に少女が待っていた。
「お待ちしていました。」
少女は生前に覚えたであろう貴族の様な仕草して一礼をすると館の中に案内をする。
「今日はどのような予定で?
二階でレベル上げでも行いますか?」
「そのつもりだが君に目的は言っていないはずだが?」
「そんなのあなた方の行動を見ていれば分かりますよ。
これでも此処には長い事言るんですよ?」
昨日に引き続き反応に困る冗談を言っている少女にやりにくさを感じているのか苦笑いのテレイオスとデイジー。
ローズはそんな事お構いなしと言わんばかりにずんずんと突き進んでいきそれの後を追ってコーデリーがついて行く。
館に入ると昨日と打って変わって入り口付近にも魔物が居る、しかしこちらに気付いても襲ってくる気配は無かった。
二階部分には見当たらないのでローズが階段を上ろうとしていると待ったの声がする。
「ローズさんお待ちになってください、そこには罠が有るんです。
二階へは一階の奥から行くのが最も多い手段なのです。
階段への案内をします、ついて来て下さい。」
半透明な体が水平に奥へと進んでいく、ローズ達は疑う事無くついて行くと正面に有る様な見た目を感じるような階段ではなく、機能性だけの階段がそこにはあった。
「私が案内できるのはここまでです、どうか無事でいてください。」
「勿論そのつもり、ここまでありがとう先に行くよ。」
霊に体の心配をされるという奇妙な状況ではあるがその気持ちは素直に受け取ったローズ達はお礼を言うと先へと進んでいく。
階段を上った先には一階と変わらないような廊下が伸びていた、違いが有るとすれば床に大小さまざまな穴がいくつか開いておりそれが落とし穴のような役割をしているようで進行の妨げになり思うように前へと進まない。
途中何度か魔物と遭遇して見本としてテレイオスとデイジーが戦ったが一階に居る魔物達のような知性を感じさせる動きは無く彼女が言っていた事の信憑性が増してきた。
そしてローズが戦闘をする時が来た。
「ローズさん、先程から私がやっていた事を思い出しながらやっていきましょう。
失敗は恐れなくても大丈夫です、いざとなれば手伝いますので。」
ローズが腕に魔力を集中させていく。
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おやすみなさい
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