第二十話
助けて欲しいという要求を突然されたローズ達一行は戸惑いを隠せなかった。
「急に様子が変わったけどどうする?」
ローズがテレイオスに意見を求めるが判断がつかない様子だった。
「襲ってくる気はもう無いの?
それならそこで休憩したいんだけど、話はその時で良い?」
ローズは一先ず話を聞く為の提案をする、少女の事はローズに一任していた事も有り他のメンバーからは特に反発もなく話は進んでいく。
少女と言えばローズの問いかけに対して首を縦に振り部屋の中へと改めて案内する。
ローズ達が再度部屋へ入ると何処からともなく人数分の椅子や机が宙に浮いて部屋へとやってきて綺麗に並べられる。
「どうぞ腰を掛けて、ハーブティーは飲める?」
先程までの様子とは打って変わって気品あふれる所作はその辺の良家の令嬢よりもしっかりしていた。
ローズ達が飲めると話すとカラカラと音を立てて骸骨系の魔物がワゴンにティーセットを乗せて運んでくる。
その光景に驚きつつも敵意が一切感じられないので警戒するだけに収める、持ってこられたポットの中は熱湯が入っているようでそれでハーブティーを淹れ始める。
見た目と場所さえ気にしなければどこかの屋敷で歓待を受けているようだった。
「それで何がしたいの?」
「まずは先程までのあなた方を試す真似に対して謝罪します。
私達はあなた方のような人を探していたのです。」
「探してどうするのさ?
助けて欲しいって言ったって何すれば良いの?」
ローズが当然の疑問を投げかける。
「まずは順を追って話しますね。
ここがどういう所だったかはご存じで?」
「豪族が住んでいて非人道的な事をやった事で、呪われた屋敷へと変わっていったという事は分かっているがそれがどうかしたのかい?」
「やはりそのような話になっているのですね、真実は違っています。
本当はここには豪族と呼ばれるほどの一族は居ませんでした。
少し裕福な商家が住んでいただけなのです、その商家の父は富を稼いでもその心優しさから困っている方々を助けるべく使っていました。
なので家に残っているのは雇っていた数人の使用人の給金とお店の維持のための資金、そしてちょっとした贅沢が出来るだけの生活費。
私達は幸せに暮らしていました。」
少女はまるで昔を懐かしむような様子で語る、その表情は穏やかで慈しむ素振りさえあった。
「それがどうして…」
「それはこの辺りで病が流行ったのがきっかけです。
初めは村の子どもが病に倒れました、そしてそこから段々と広まっていき病を治すべく動いていた父もかかりました。
そして私も…
父は一刻も早く治すべく様々な方法を試しましたがどれもダメでした。
そんなある日村人の一人が亡くなったのが決め手だったと思います。
その方は父を大変信頼していたようで、自分が亡くなったらその体を病の治療に役立てて欲しいと遺していたそうです。
父は初め出来ないと言っていましたが村人達からの声も有り、他の街から来ていた医師と一緒にその遺体を切り開いたそうです。」
当時の惨状を思い出したのか表情が強張っていく少女、一息つき実体の無いハーブティーを一口飲むと話を再開させる。
「それからです、この屋敷に続々と遺体が運ばれるようになりました。
遺体は増えて行きますが病に関する物は分からずただ時を無駄にしていました。
そんなある日一人の行商人が屋敷にやってきました、今考えるとこれが一番の元凶だったのではないかと思います。
最初父はその行商人に対して警戒していました、ここには規制されていて来れない筈なのに何故…と。
しかし持って来た物が物でしたので疑いつつも招き入れるほかありませんでした。
持ってきていたのは病に対する特効薬でした。
父は半信半疑でしたが持って来た特効薬三本を全て買い取り事実確認の為一本を自身に使いました。
それは本物だったようで父の病状は治りました、父は行商人に感謝しもっと持ってきてもらうように頼み込みお願いすると行商人は快く引き受けて屋敷を去っていきました。
父はすぐさま家族である私達に使おうと思ったそうですが、あの行商人がすぐに来れると思えず自分達で何とか作れないか試すことにしたそうです。
父と医者達は直ぐに薬の成分を調べ始めましたが進展は有りませんでした。
いつからか父の症状が無くなった事を知った村人達の間でこんな噂が立っていたそうです。
特効薬を独占して高く売りつける気だ、この流行り病は私達が人体実験をする為起こしたものだ…。
村の人達も初めはそんな噂何処から来たんだと言った反応でしたが、時間が経つにつれて信じて行ったようであの日の悲劇が起きました。
村人が一気に屋敷へと押し寄せてきて襲い掛かりました、元々静かに暮らしていただけの私達にそれを止める手段は無くあっけなく父は殺されてしまいました。
父が殺された後屋敷中荒らされ私の寝室にまでやって来た村人は私を見るなり後悔した表情で帰って行きました。
だってその時私はすでに死んでいたのですから、特効薬は私が亡くなってから売りに来ていたのです。
他の方々も大切な人が亡くなっているのに私達だけが悲しみ立ち止まるのは良くないと言わなかったのもあの悲劇の原因でしょうね。
長く語ってしまいましたね、ここまで何か質問はあるかしら?」
「二つ、凄い喋ってたけど結局今の状況と過去に何の因果関係が有るのかと、助けて欲しいって言ってる内容を簡潔に言ってくれない?」
「今この屋敷がこうなっているのはその病が人為的な物だと分かったからです。
この屋敷や周辺に居る死霊系の魔物やブラックスライムなんかは元々はここで埋葬された病人達の魂が宿らされているのです。
それに気付いたのはこの屋敷がまだここまで変異する前、ある日やってきた死霊術師が仲間と思われる魔族と話しているのを聞いてしまったのです。
良い隠れ家になりそうだったから時間をかけて作ったって…!
父があんなに思い悩んだのも村の人々が苦しみ嘆き、あの惨劇に走ってしまったのも自分勝手な都合でっ!
お願いします、奥に居るあの魔族を倒してください!
死霊術師はここに数年滞在した後どこかに行きそれから戻って来ていません、恐らく人間だったのでしょう。
寿命が尽きたのか誰かに倒されたのか分かりませんが私が成仏した後に地獄を見せてあげます。
その為にこの屋敷の魂を開放する為にもその鍵になっている魔族を倒してください。
そうすればここに縛られている魂は居なくなるので徐々にではあるでしょうが昔の平和な土地に戻る事でしょう。」
少女とニコファと呼ばれた骸骨はローズ達に懇願する。
「どうして今までここに来た聖職者に言わなかったの?
そいつらでも良かった訳じゃない?」
「確かに初めの頃は頼むべく姿を現しましたが、ただ倒そうとしてくる人ばかりで話も出来ませんでした。
話を聞いてくださった方も中には居ましたが力及ばず奥の魔物に辿り着く事さえ出来ませんでした。
数十年も経つ頃には私自身魔族に対する恨みが強まっていき正気を保つのが難しくなり今に至ります。」
「なんで今は普通というか正気になってる?
そんなに正気を保っていられなかったのに今こうして話すだけじゃなく、私達を試すような事も出来たのか不思議なんだけど。」
ローズの言った事にデイジーが同意しているのか首を縦に振っている。
「皆さんがこの部屋に来る前に不思議な温かさを感じる魔力を屋敷周辺に充満したのですが、その時に魂が囚われている魔物の意識を取り戻す事が出来たのです!
少しするとその魔力は離れていきましたがこうしてまた来てくださいました。
貴女様によって私達は人として逝ける希望が湧いたのです。
もう一度、更なる希望を夢見るのは人の感情としては止められませんでした。」
ローズは唐突に崇められ困惑の表情を浮かべていたが、テレイオスに肩に手を置かれ首を横に振られるのを見るとガクリと項垂れた。
いつも読んで下さりありがとうございます!
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