第十五話
翌日、教会奥の訓練場
「では一度見せますのでそれを真似していきましょう。
術式はヒールと少し違うだけですので既にヒールを覚えているローズさんならすぐに使えるようになるでしょう。」
デイジーはそう言うと術式を説明しヒールレンジを発動してローズに見せる、ローズはそれを見て真似ようとし術式を思い浮かべながら唱える。
ローズがヒールレンジを発動すると体中から体の前方へヒールがまばゆい光を伴い飛んで行く、その光は直線状に飛んで行き、姫華だった時の人々が見れば人の体のシルエットのレーザービームが飛んでいると表現しただろうその光は壁を貫通して飛んで行く。
しかし壁に異変は無く中に居た二人は貫通した事に気が付く事は無かった。
「なんか出たんだけどこうじゃないんだよね?」
「そうですねぇ、本来も私が使ったように多少光りますが眩しいとまでは光りません、が恐らく聖女由来の違いかもしれませんので今はそこよりももう少し効果範囲を絞る事に集中しましょう。
今のままでは消費魔力が多すぎてすぐに尽きてしまいかねませんので。」
そのまま練習を続ける二人、しかし今までローズがやってきたように体の一部から出そうとすると激痛が走るようになっていた。
それは今回のヒールレンジだけではなく他の魔法も同じ状態だった、ローズがこの事に気が付かなかったのはいくつかの要因が有るが、一つ目に騒動直後は忙しさから魔法を使わず生活していた事、二つ目に忙しさが消えた後は近所の人間からの目が有り悪目立ちを防ぐために禁止されていた事が主な原因だった。
「原因が分かりませんので絞るのは後回しにしましょう、全身から出す分には痛みは無いのですよね?
それでしたら体から放出する感覚を掴む練習と並行して動きながら使う練習をしようと思うのですが大丈夫ですか?」
「まあそれなら大丈夫だと思うけど、こんな状態なのにやらせる?」
「申し訳ありませんが本来なら10年前から行っていた事をこれから急いでやって行かないと魔王との戦いに間に合うのか分かりませんので…
勿論ローズさんの体調を考えて計画は進めていきますが、原因を究明してから再開では時間的な問題がありまして…」
それを聞いたローズは興味が無くなったのか歩きながら使っていく、デイジーからの指示が有った時には走りながらや飛だり跳ねたりといった行動も行いながら使っていく。
その日が終わり今日の進展としては効果範囲の絞り込みの際に何かが起きている事だった。
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その日の報告を聞いた教皇は疲れていた。
一つ目、教会内部から眩しい程輝く光の帯が壁を無視してあちらこちらへと延びていた。
二つ目、その光に触れた人々に傷が瞬く間に癒えた事によって慈愛の神が救ってくれたと言う人々が出たり、聖女が教会に現れたと勘ぐる貴族が会わせろと無理を言って来る等で現場での混乱が少し見られた事。
三つ目、聖女ローズの魔法に異常が見受けられるため対処が必要。
四つ目、聖女ローズの不調に関してメムシアの反応に違和感が有るので確認が必要なので本人同士も交えての話し合いが必要なので、至急スケジュールのすり合わせをすべきとの意見が多数。
教皇スターチは頭を抱えたくなったが何とか堪える、その様子を見ていた報告に来ていたテレイオスは部屋に居た他の神官に下がって貰うとお茶を入れ始める。
「まぁこれでも飲んで落ち着いてくださいな」
「私は落ち着いているつもりだったのですけどね、まさか本格的になった初日からこんなに事が起こるなんて思ってもみませんでした…。」
「解析の水晶を使っても魔力の底が見えなかった時点である程度は覚悟していたのですがね、まさかここまで凄いとは思ってもみませんでしたよ。」
「しかしうれしい誤算でも有るのでそこはうれしい限りですけどね、彼女の持久力は想像以上だったようで教育を担当していたデイジー司教からの報告によると、半日ほどなら全力でないなら動きながら魔法を使い続けても多少息を切らしはするものの出来たそうですからね。」
お茶を入れ終わったテレイオスはカップを片手にスターチの座る執務机の前に椅子を持ってきて向かい合う形でお茶を差し出す。
「ああ、この報告を出したのは自分ですね。
デイジー司教から事の経緯を先に聞く事が出来たので、恐らく神絡みかと思い聞きに行ったのですよ。
そうしたら本人が言うには知らないでしたが顔色的には知られたら困る事が有る様子でしたね。」
「詳しい話を聞かなければですね」
そう言うと明日以降の予定を含め調整が出来ないかを検討し始めると部屋にノックの音が響く、スターチが入室の許可を出すと騎士の格好をしたレイリィとその後ろにメムシアが申し訳なさそうに入って来る。
「どうしたのですかこんな時間に?」
「聖女の事について分かった事が有ると相談を受けたのでこちらに来て貰いました。」
「お聞きしても?」
スターチが落ち着いた雰囲気で声をかける、テレイオスは先ほどまで座っていた場所には既に居らずメムシア達をテーブルに案内した後に人数分のお茶を用意する。
レイリィはテレイオスと代ろうとするがやんわりと断られてメムシアと一緒に大人しく座る。
メムシアは話し出す気持ちが整ったのか口を開く
「聖女の体の問題に関しては私達神にも予想していなかった事です。
本体を通して調べた所分かったのは封印が完全では無かった為の異常という事が分かっただけでした。」
「そうですか、では本人の希望も有りますし封印を解いて元に戻せば良いのではないでしょうか?
確かに神々の言う通り聖女としての成長の妨げになるかもしれませんが、この状況はそれよりも悪影響では?」
教皇の意見にテレイオスとレイリィも同じ意見なのか頷き同意を示しメムシアの返事を待つ。
メムシアはその意見が来るのは当然と予想していたようだ。
「それは神々も考えましたが出来ませんでした。」
「何故ですか?」
「そ、それは…」
メムシアは何を思い出したのか顔色が変わって行く、三人は何が有ったのか気になるが落ち着くまで待つ。
やがて少し落ち着いたのか話を再開させる。
「あの力は私達でも制御するのは出来なかったようで、封印を解こうとした所暴走しているかのような威圧感を放った後自ら封印状態になっています。
どんな物も見通す神がどのような状況か見た所、封印時より見た目も内包している力も大きく変わっていたそうです。
そしてそれは今現在進行形で成長し続けているそうです。」
実際にその力の一端を見た事が有るテレイオスは事態の重さに思わず息を飲み、報告などで聞いただけの二人はどれほどかは分からないなりに解決策は無いのか思考する。
「では聖女ローズの体の異常は治らないのですか?」
「いえ、可能性の話ではありますが解決策は有ります。
聖具の作成が出来るようになり聖女としての力が大きくなればあの力の影響を受けなくなると予想されています。
聖女の力が光だとすればあの力は闇です、今は闇の力が強く封印も出来ていない以上どれほどの影響があるのか分かりませんが、聖具があの時と同じ位強力になれば大丈夫でしょう。」
教皇は険しい表情で思案するが溜息をつくと書類を棚から取ってくる。
「本来ある程度お教えした後にやる予定でしたが仕方ありません、明日からはこの内容をやって行きましょう。
恐らくこの内容が出来るようになる頃には聖具は作れるようになっているでしょうが、ローズさんは大変な思いをするので先に本人に直接謝っていた方が良いですよ。
私は勿論朝一で行きますよ、これ以上彼女を怒らせて協力して貰えなくなるのは人類にとって損失でしかありませんから。」
メムシアは全てを諦めた表情で部屋から出て行った。
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すいません
予約日が間違ってました
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