第十三話
メムシアの謝罪を受けロンドとカルラは目を合わせると頷き合い答える
「自分と妻はその謝罪を受け入れます」
その言葉に司教等の空気が幾分か軽くなったが次の一言で引き締め直す。
「私は許さない」
「聖女殿それはなぜですか?
彼女は誠心誠意謝罪しているように思えますが?」
ブランカと呼ばれる中年を過ぎたであろう男性で顔に傷が散見しており、司教と聞いていなかったら良くて傭兵、悪くて盗賊の様な見た目をしている。
そんな強面な顔が今は困ったような顔でローズの意見に難色を示し尋ねる。
「謝ったからと言ってすべて許すのが理解できない。
そもそもこいつが原因であり、あの場の連中を助長もさせたのもこいつ、謝罪の一つするのは当然の行為であって許す許さないはこいつが決めるのでもなく、ましてや間接的にかかわっていたあんたでも無い」
「しかし彼女はあなたから制裁も受けていると伺っています、その上で謝罪を受け入れないのはどうしてでしょうか?」
「ブランカ司教、彼女の意見には納得する所が有る、これ以上我々教会側が口を挟むものではない。」
「いや、しかしブランカ司教の言い分にも一理ある、ここははっきりさせて後に響かないよう話し合うべきだ。」
睨みつけるローズの迫力は歴戦の兵士と遜色が無い程であったがブランカはそれでも怯まず続ける。
その様子を他の司教達は聖女の言い分に教会側への非難も含まれていることから、ほとんどの者は口を挟めずにいた。
その中でブランカに苦言を呈すのはナーランと呼ばれた生真面目そうな女性で、髪型は短く佇まいも女性らしさよりも男性に近かった。
ブランカの意見を肯定していたのはライラックと呼ばれたブランカとそう変わらない年齢の男性で、ブランカとは違い一見温和そうに見え紳士的な印象を与えてくる。
「そもそもアンタ等はどの顔して口出してんの?
もう話はこれで終わり?
それなら帰らしてもらうわ」
ローズの怒りがひしひしと伝わる空気の中ブランカ司教が口を開く。
「すっすまない!不快にさせてしまい申し訳ない!
まだ帰らないで欲しい。」
「ローズさん申し訳ない、メムシア様も今は納得していただきたい。」
急ぎブランカ司教が謝った所で教皇がメムシアに確認をするとまるでこうなる事を見越していたのか軽く頷き続きを話す。
「私の事は許さなくても良いです。
ただ、聖女としての使命の為に力を身に着けて欲しいのです。
世界の命運はあなたと近い内に現れる勇者の行動次第なのです、そこだけでも理解して下さい。」
「力ならこの間散々味わっただろ、まだ足りないのか?」
「その力が使えなくなったのはあなたが良く知っている筈です。
何故なくなったのか説明しましょう。」
ローズが臨戦態勢をとるもメムシアは一瞬だけ反応したがそれ以上は何も身構える事は無かった。
それを見たローズは軽い舌打ちをして席にドカリと座る、カルラはあまりにも不遜な態度のローズを軽く窘め、アンネは先程からずっとおどおどしていて疲れたのか水を何杯も飲んでいる。
「あの力は本来存在しない物なのです。
恐らくですがあなたがこの世界に生を受けた時に世界の外から繋がりを持ってきてしまったのでしょう。
それでも本来なら使えませんでしたが先の出来事で強いストレスによってこちらの世界に召喚する事が出来てしまったのです。
あの力は異端過ぎます、本来神に干渉することは叶わないのが出来てしまった、危険と判断した神々は力を合わせてあの力を神界にて封印しました。」
「またお前らが原因か!
何処まで人を馬鹿にすればいいんだ?
異端だろうが危険だろうが魔王を倒すのに使わせればいいじゃないか!」
「魔王は倒す事が出来ないのです、勇者だけが使える聖剣での攻撃によって弱らせる事が出来、その弱った所を我々神々が封印の儀式によって異界へと封印しているのです。
聖女にあのような攻撃的な力が有ると聖女としての力が伸びにくくなるので仕方のない事なのです。」
「もしそうだとしても私に確認するのが筋じゃないのか?
なんでこんな奴らの言う事を聞かなくちゃいけないんだ、私の力の事は私の勝手にさせてもらう。」
ローズは不信感を隠そうともしない、両親もその事について納得する部分が有るのか強く否定はしない様子。
「教会や神々への信用は無いでしょうが、どうか我々教会の元で力を磨いてはくれませんか。
その為ならどのような条件も飲みましょう。」
教皇がそう宣言すると司教達も連なり懇願してくる、メムシアも頭を下げたまま動かない。
そんな空気に耐えかねてアンネも機嫌を直すよう説得に参加し始め、最後には折れる事になる。
承諾したローズを見てロンドが協会に条件を提示する。
「条件が一つある、ローズの身の安全は必ず保障して欲しい。
魔王なんて強大な力を持った者と戦わせるなんて本当はしたくない、しかし世界の為と言われるとそんな事も言えなかった。
そこで妻と話し合った結果はローズの意思を尊重する事だったが、どんな条件も飲むと聞いたからには身の安全だけは保障してもらわなければと口を挟ませてもらった。」
「勿論です、安全面には必ず配慮いたしましょう。」
「私からも条件が有ります。」
ロンドと教皇の取り決めが終わると今度はカルラの声が上がる。
「時が来るまで生活は家で過ごさせて下さい。
先の条件に安全の保障が有りましたが、私はあなた方教会をまだ信用できません。
更に言ってしまえば危険な場所に行くのに絶対安全なんてものは有りません、それならばせめて聖女としての役目の時期が来るまでは家族で過ごさせてください。」
「当然の意見です、分かりましたと言いたいところですが一つ確認を、修行の際に泊まり込みや遠征が有ります。
そういった物は許可いただけますか?」
「二週間以上の物は許可できません、どうしてもと言うならば私たち家族も同伴です。」
「分かりました、その条件であれば何とか致します。」
カルラの条件を飲んだ教皇はアンネを見つめ意思の確認をするが「今は言えない」と答えたため最後にローズの条件を尋ねる。
「まず一つ目、私の意思は最大限に尊重して欲しい。
今まで何一つ尊重されてなかったんだ、これからは修行以外の事は私自身で決めさせて欲しい。
そしてそこの元女神に条件だが、強制や強要された場合もしくは必要に駆られた時はあの力を返す事。」
「…今本体を通じて確認いたしました。
一時的な返還なら応じるそうです。」
「ならこの話は無しだな。
何が一時的な返還だよ、そもそも元々私の力なのにあんたらの勝手な都合で勝手に取り上げて来たものじゃねえか。」
「…修行を完遂させた後なら返還しても良いそうです、それまでは先程伝えた一時的な返還になるそうで、これ以上はどうしても許可できないそうです。」
「…。」
ローズの長い沈黙が入りメムシアとローズは見つめ合ったまま動かない。
どの位経っただろうか、5分か10分か分からないが時が経つとローズは納得しその条件で良いと判断を下した。
会議室中に安堵のため息がこぼれる。
「では今回はこの辺で終わりにしておきましょう、ローズさんとそのご家族の皆さんこの度は来て頂きありがとうございます。
協力をしていただける事になり本当に良かったです。
ローズさんの付き人や修行担当者が決まり次第またお知らせ致します。」
ローズ達は教皇の言葉の後軽く会釈して会議室を出ていく。
教皇や司教達はまだ話す事が有るようで来た時に案内してきたデイジー司教だけが見送りに出て来た。
「本当は全員で見送りたいのですがそれではあまりに目立つのと議題が多すぎるので手を開ける事が出来なくて…すいません。」
「いえいえ気にしないで大丈夫ですよ」
カルラは信用していないと言った手前気まずそうにしているのが手に取るようにわかる。
ロンドは緊張から疲れ切っているアンネの手を優しく握り歩きの補助をしている。
ローズは来た時よりは不機嫌ではあるが会議室よりは少し柔らかい表情でカルラに手を引かれていた。
協会出て少し歩きいつもの街道にまで出ると疲れが一気に出てくると顔を見合わせてロンドが意を汲み決める。
「今日は外食でもしようか」
待ってましたと言わんばかりにアンネが喜びそれにつられたのかいつの間にかローズの顔も笑顔になっていた。




