第十二話
家に来たのは二人の女性だった。
対応したのは父のロンド、二人ともどこかで見たような顔で、一人はここ最近見たような気がした。
二人とも教会の制服を着ていて、最近見た気がする女性はオドオドした様子でこちらの様子を窺っていて、金色の長い髪は少し荒れているのが分かり青い目の下には隈もあり健康的では無さそうだった。
もう一人の女性はゆったりとした制服の上からでも分かるぐらいには豊満な体つきが分かる、整えられた茶髪は三つ編みになっていて体の前側に持ってきて揺れないようにしている。
「ご用件は?」
「…少し教会に来て貰いたくてこちらに伺いました。
勿論ご家族全員で来て貰っても構いません、日程はお任せしますが出来れば早い方がこちらは助かります、いかがです?」
「…そちらの女性は?」
かなり警戒した形にとれるような声色で問いかけると、正面に居る茶髪の女性は少し申し訳なさそうな表情をしながら要件を話し、その陰に隠れている女性は委縮したようでさらに隠れる。
その様子に不信感を抱いたロンドは目線でその女性を捉えながら問いかける。
「それはここでは言えなくて教会に来て貰ってからしか説明できないのです…本当はわたくし一人で来る予定でしたのですがついて来てしまって、失礼な態度ですがどうかお許しください」
「分かりました、本人と家族で話したいので今日の所はお引き取り下さい。
日取りが決まりましたら一度お伺いすれば良いですか?」
「いえいえそんなお手数かけなくても、いつ来て貰っても万全の状態で居ますのでお好きなタイミングで来て貰えれば大丈夫です」
頭を下げ言い残すと二人は去っていく。
家族での話し合いの結果家族総出で行くことに、アンネの休日に合わせて両親も休みを取る事にして、次の日それぞれエリシャとバンディに相談し休みを合わせる事に成功した。
ロンドは休みの前までに出来るだけ業務を片付けていき、カルラ達はお酒等の手見上げを買い挨拶回りをしていく。
予定の日、朝からカルラは身だしなみを整えるのに忙しそうにしている。
自身だけではなくアンネとローズの分まで行っており気合いの入りようが凄かった。
「ねえお母さん、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?
あっちが呼んでるんだし、そもそもあんな事してきたような連中が居た所なんだから普段通りで良いんだよ。
何ならまた揉めるかもだし」
「父さんもそう思うが、身だしなみを整えるのは相手に下に見られにくくする効果もあるからお母さんの言う通りにしなさい。
それに教会は街の中心部にあるから家の近所とはまた違うんだ。
あの辺りは富裕層が多いから下手な格好で行くと変な目で見られる事も有るからな。」
着せ替え人形になってるローズ達を横目にロンドが過去に何かあったような雰囲気で話す。
ロンドは普段の仕事の時にたまに着ている礼服の上からジャケットを羽織り普段より少し若く見える。
「お母さんこれ良いと思わない?」
「それにするなら腰の辺りに濃い目の色で少し引き締めないと今の流行的に浮つくわね~
そこのベルトを巻けば腰回りも細く見えるて良いんと思うわよ?」
白いワンピースに青いリボンで髪を結んだアンネはカルラの言ったベルトを巻こうとするが気に入らなかったらしく、肩掛カバンを手に取って目線でカルラに確認すると何も言われなかったので準備を終える。
着せ替え人形だったローズの最終的な服装は、黒いワンピースに髪は赤いカチューシャを付けたシンプルに落ち着いた。
カルラは何処から出したのかロンドの礼服と対になっているようなドレスを着て髪はコンパクトに纏めて、大人の女性としての魅力が上がっているように感じさせる。
出かける用意が終わったローズ達は街の中心部へと歩いて行く。
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道中特に何事もなく無事に到着した一家は、城とも思える大きさの教会の中に入る。
教会の中央には長椅子が並べられ半分以上の席は埋まっておりその誰もが熱心に祈りをささげているのが窺える。
長椅子の横には石像が間隔をあけて並んでおりそれぞれ違う神や女神が祀られ傍には身を清めるための水が絶え間なく流れている。
そのまま奥に進んでいくと巨大なステンドグラスで悪を払う神々の戦いが小さなステンドグラスには人々を救う様が表現されている。
その下に先日来た女性神官が他の参拝者の話を聞いているのが見える。
女性はローズ達に気付くと話していた参拝者を他の神官に任せてやってきた。
「皆様ようこそおいで下さいました。
…ここでは詳しい事も話せませんので談話室へ案内してもよろしいですか?」
「ええ、分かりました」
歓迎した後周囲の視線を気にすると場所を変えることを提案する女性神官に同意しついて行く。
談話室は二階にあるのか階段を上り質素ながらも綺麗に整えられた廊下を進み一つの扉を開けると大きな円卓に10人の男女が座って待っていた。
その中には教皇や先日来ていたもう一人の女性の姿が有った。
「ローズさん、それにご家族の皆さんようこそおいで下さいました。
どうぞそちらの席にお座りください。」
ローズ達は用意されていた入り口側の椅子に案内されそこに座る。
「早速本題と行きたいところですが、自己紹介は済ませておきましょう。
私の右から順にブランカ、ネイカー、ナーラン、デイジー、皆さんの左側からコニア、キュオス、ライラック、シランになります。
彼らをもしかしたら知っているかもしれませんが今居る司教全員になります。」
名前が挙がった人物から順にローズ達へ会釈が有り、誰が紹介されているのか分かりやすくされていた。
先日からローズ達と交流が有った女性はデイジーというらしく、ローズ達の緊張をほぐす為か一番近い席に居た。
他の面々は教皇と比べると若い人物が多く見られ、一番近そうなのはブランカ、次点でライラックといったところだ。
誰もが真面目そうな雰囲気を感じさせる中コニアは周りに花が咲いているかのように感じさせる位には笑顔と雰囲気が他に面々とは違い自然な柔らかさが有った。
他の面々も自然ではないが、ローズ達への緊張や負い目から来ているのが、視線などの仕草から察する事が出来た。
ローズ達は教会のトップの面々に驚いたものの、話の内容が予想通りなら司教の一人二人の同席は有りえるだろうと話していたため落ち着くまでは比較的早かった。
そして教皇から紹介されたのは八人、後一人の紹介がまだであったのでカルラが気になり尋ねる。
「そちらの女性は?」
「彼女が今回皆さんに来ていただく事になったきっかけの人物で、名は無くなったそうですがメムシアと呼ばれていた女神の一柱だそうです。」
アンネは驚きを隠せずローズと両親はどこかで見た気がしたのは先の騒動だったかと少し納得した。
「名が無くなったとはどういう…」
教皇達も詳しい内容を聞かされていないのか少し困り顔になる。
「それはわら…私の口からお伝えします。
まず先の事についてですが私は人間の感情等にあまりにも無関心にし、聖女の気持ちを蔑ろにした事についてしゃっ謝ざ…謝罪します。
名が無くなったのは先の騒動で、いかに聖女と言えど人間に敗北したとしては神の名を名乗る資格が無いと最高神から判断されたためです。
今私の本体は最高神の元で管理され罪を償うまでこの分身にて人間の事について学び、そのまま魔王を討伐に導くように言われています。」
謝罪する時躊躇いがあった様子だったが、何かあったのか苦痛の表情をしながら謝罪しその後は諦めた様子で話すメムシア。
ローズは相手がメムシアと聞いた時から睨んでいたが、それを聞いた後も特に気持ちの変化が無いのか睨んだままで、談話室の空気は若干重くなっていた。




