第十一話
疑われた本人のガルデンが証人として出て来た事に驚きを隠せない傍聴人達。
「先ほど教皇の座が欲しさに証拠等を捏造したとのことですがそれは事実ではありません」
「そんな事は無い!
家宅捜索をしたら証拠が出て来るに決まっている!」
「静粛に、許可のない発言は控えるように」
歯を食いしばるロイセンを他所にガルデンは続ける。
「その証拠として私ガルデンは住居を持っておらず教会の一室を間借りさせて貰っております。
そしてその部屋も生活に必要最低限の物しか置いていないので捜査に10分もかからないでしょう。」
「では質問しますが事件の有った日あなたは何をしていましたか?」
「その日、本当は事件現場に急行する予定だったのですが怪しい人影が私の部屋に入ろうとしていたので取り押さえていました。
その事についての詳しい内容については捜査の為にこの場での言及は出来ませんが、実際に起きた事であるのかは警備隊に伺ってもらえれば証明できます。」
警備隊が証明出来ると聞いて焦りの表情を浮かべるロイセン、弁護側もあまり顔色が良くない様子。
「では念のために先ほどの様な犯行動機については心当たりは有りますか?」
「それはあり得ないですね」
「理由をお聞かせいただけますね?」
裁判官の確信めいた表情と声色にざわめいていた会場は静かになり、傍聴人達はもちろん新聞記者達も今はメモを止めて聞き逃さまいとしていた。
それを待っていたのか少し間をおかせてガルデンは動き出す。
「…その必要が無いからです。
私はスターチ・スレガム、その教皇本人である以上なろうとする事そのものが無意味でしょう?」
そう言って付けていた仮面を外して素顔を表すと傍聴人達はもちろん、ロイセンも驚愕の顔を浮かべる。
「その御顔はまさしく教皇!…様、どっどうして…」
「証人はガルデン司教とこちらの書類には在りましたがそれは偽証だったという事ですか?
今の発言と証人が違った件についての説明を行ってください。
また、偽証と判断した場合は証言の無効と裁判を妨害したとして、いかに教皇様といえど罰則は受けていただきます」
ロイセンは突然現れたスターチに対して驚愕し、心が折れかけているのか顔色がかなり悪い。
ガルデンもとい教皇は心の底から残念に思っているのか落ち込んだ様子。
他の人間達は驚きのあまり声が出ないでいたが、裁判官が驚いたのは一瞬だけの事ですぐに職務を全うする為に発言をした、が動揺が隠せないのか 教 皇 様と証人に対して敬称を付けてしまっていた。
「ええ、こうなっては本来の目的は叶わなくなってしまいましたので話しましょう。
事の始まりは5年ほど前になります、私の後任を誰にするという疑問に黒い噂が絶えなかったロイセン司教以外に居なかったのが当時問題でした。
そのまま彼を据えれば教会に多大な問題は起きる、他の候補者になりそうな者は引退したり、信仰を変える等の理由で教会から去っていました。
そこで考えた結果はロイセンに対抗馬を作り、自身に脅威となる人物が出来れば弱みとなる様な黒い噂となる行為を止めさせ、真っ当な信者にする事でした。」
「証人であるスターチ殿が対抗馬になっていたのはどうしてです?
他の引退された元司教の誰かでもよいのでは?」
「彼らには教会への不信感も有ったのでしょう、断られました。
他の教会内部の人間はロイセンの息の掛かった者を下手に起用することも出来ない事、また立て続けに信仰厚かった彼らが教会を去って行った原因究明も兼ねてでした。
5年続けた結果分かった事ですが、去っていたのはロイセンの策略かもしれないという事だけで、決定的な証拠をなかなか押さえる事が出来ませんでした。
ロイセンの暴挙を止められず被害の拡大を許したのは教会の責任でもあります。」
「証言は以上でよろしいかな?
被告人、証人に質問は有りますか?」
スターチは頷き軽くお辞儀をする。
ロイセンとその弁護人は本来証人に対して質問する権利が有るが、弁護人はこれ以上質問しても不利になると考えているのかロイセンに何もしない様に指示を出してメモなどを取っている。
「では今の証言とこちらに提出された証拠を三日後に改めて審議いたします。
他に証拠が有る場合次の審議までに提出するように。
以上、第一回ロイセン被告人裁判の審議を閉廷します」
裁判官が宣言すると傍聴席に居た記者達は勿論も帰っていき、ロイセンは最後まで忌々し気な視線をスターチに向けたまま拘置所に連行されていった。
裁判官に退廷を促されるまでスターチはその場に立ったままだった。
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ローズ達の家には平穏が戻りつつあった。
騒動の次の日、ローズが逃げる時に使った爆発魔法で物が壊れたであろう家にお詫びに行くが、既に協会が補償しているらしく、「補償して貰ったから気にしないで良いよ、あの時は仕方なかったよ」「買い直そうと思っていたのが新品になって助かったよ」と言われた。
謝罪が終わり家に居るとご近所等の野次馬等が事情を聞きに訪問してきていたが、それも三日で終わった。
掲示板にガルデン司教と教皇が同一人物という情報が載せられ、その話題で持ちきりだったからだ。
「今日は久しぶりにゆっくり出来そうだね~」
「何を言ってるのローズ?
ゆっくりなんてしてる暇は無いわよ?」
お昼ご飯をいつもの様に家族で食べている時にローズが安心したかのように呟くがカルラに否定される。
ショックを受けた様子のローズをアンネは不思議そうな様子で見ている。
「お昼を食べた後は一緒に買い物に行くのよ、料理用の薪が少なくなってきたから買い足さなきゃいけないから荷物が多いから手伝ってくれないと。
食べ終わったらお隣さんから台車を借りに行くのよ」
「お母さんは?」
「先に商業ギルドでお金を引き出してくるから、借りたら家で大人しく待ってなさい」
「は~い」
それぞれ食事を終えると、カルラは商業ギルドに一足先に出かけ、アンネは仕事に戻っていく。
ローズは言われた通り隣に台車を借りると世間話という名の質問攻めにあっていたが、何とか誤魔化していた。
ローズの誤魔化しは良い具合に勘違いをさせた様で、教会関係者だったロイセンが手籠めにしようとしていたのを抵抗したのが先の騒動という風な流れになった。
このお隣さんは普段からお喋りなためきっと噂は瞬く間に広がると予想されたため、ローズの事は絶対に他の人に言わないようん頼み込むと、「大丈夫よ、流石のアタシもそんなデリケートな事は言いふらさないわよ」
と言っていたがどうなるかは分からなかった。
そんな事も有り新しい噂がどうなったのか分からないが、近所や普段から交流の有る大人からは見守る様な視線を多く向けられ安全に過ごすことが出来た。
今回の出来事は周りの環境を変えるきっかけになったのか、今まで大人達は外で子どもが一人で居ても気にしていなかったが、今では積極的に声をかけて不審者や困った事が無いかを聞いたりしている。
ただ、聞かれる子ども達はそれを面倒に思っているのか嫌がる事も有るそうだ。
二週間後、町中に協会から知らせが届く。
ロイセンの破門が他の司教等で行われた投票において過半数を超えた事によって可決された事、投票によって否決されたが教皇の引退宣言が有った事。
街の人々の反応は、ロイセンの破門については裁判にって明かされる不正の数々を知ってしまったからか「破門をするのが遅かったのでは」「賄賂に応じた関係者の処罰はしないのか」といった批判的な声が多く出ていた。
教皇の引退宣言についてはロイセンの影響からか「引退して当然」「責任から逃げるな」といった声もあれば、元々の人徳等から「責任の取り方は他にも有るはずだから考え直してほしい」「他に教皇が務まる人が出てくるまで耐えて欲しい」という引き留める声も上がっていた。
そんな世間を騒がせるニュースが出ている中ローズ達の家に三人の来客が来ていた。
「すいません、ローズさんはいらっしゃいますか?」
いいねや評価、ブックマークありがとうございます
第十話まではスラスラ書けたので一気に予約できたのですがここで躓いてしまい大変でしたが何とか書けた気がします
投稿した物が評価されるのはうれしいですが、恥ずかしい気持ちの方が大きいですね
登場人物の詳細な見た目の説明不足、キャラの書き分けが出来ていなかったり、起承転結の基本が出来ていなかったり、色々反省点があります
出来るだけ改善をしようと思いますので「その聖女、不良です」を引き続きよろしくお願いします。




