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メイドさん達との交流

 ある日のお昼の休憩の時間、3人のメイド達が屋敷にある休憩室でお昼のまかないご飯を食べながら直也の噂話をしていた。


 サクヤの屋敷にある休憩室は割と広く、テーブル席やソファーセットの他、10畳ほどの畳の小上がりもある。その上、無料で料理人が作ったまかないご飯やおやつが食べられるのでメイド達や大社で働く巫女達が多く利用していた。


 背中まである金髪を後ろで纏め、胸も大きくに少しふっくらとした肢体。ポーとした印象を持つ顔立ちの整った少し糸目のメイドのアイ。


 赤茶色の髪をおさげにした幼く可愛いそばかすが残る顔に、10代の前半の子供のような容姿で、元気一杯な印象のするメイドのマイ。


 黒髪のショートカットで日に焼けた綺麗な顔、女豹を思わせるスレンダーで引き締まった肢体から野性味を感じさせるメイドのミイ。


「最近の直也様は、何かハツラツとされていますね」


 アイが食べていたサンドイッチをお皿の上に置きながら言うと、


「うん。最近は冒険者のお仕事もとても上手くいっているようだしねー」


 マイが手に持った箸を左右に振りながら、そう答えた。マイの言葉を聞いたミイは興奮を隠せない様子で話を続けた。


「聞いた? 昨日は森でワイバーンの群れを倒したって話」


「凄いよねー。ワイバーンって確かA級クラスの魔物だよねー?」 


「はい。そのワイバーンの群れをお一人で討伐されてしまうとなると、実力はS級クラス並ではないのでしょうか」 


「そんなに凄い人には見えないですけどね。いつも怒られていますし」


「ホントだよねー」


 ミイの言葉に、アイもマイも感心した様子で楽しそうに話は続く。


 冒険者パーティーアマテラスを立ち上げてから1カ月が過ぎ、地竜の討伐を始めとした大小数々の依頼を成功させてきた直也達は着実にコツコツと実績を積み重ねており、最近ではアマテラスのメンバー全員が冒険者としての収入のみでも生活できるようになっていた。


 アマテラスではギルドから得た成功報酬や売った素材の収入の半分をパーティーの資金として、残りの半分をみんなで均等に等分して、各々が管理をしている。


 メンバー全員分の食費や生活費などは強い希望により直也が全額負担することになっていた。


 最近ではメイドさんや巫女さん達の直也への好感度は上昇していて、中には好感や好意の感情を持ち始める者も現れるようになっていた。アイもマイもミイも20歳前年齢で恋には非常に興味があるお年頃ではあるが、残念ながら3人ともまだ恋人はいない。


「少し前までは無職で、サクヤ様のヒモで、マリーメイド長に囲われていただらしのない人だと思っていたのにねー」


「はい、私も最初はサクヤ様もマリー様も騙されていると思いました」


「確かに。でも最近の直也様を見ていると、格好良いなとか思わない?」


「だよね、だよね。分かる、分かる」


「考えたら、優しくて強くて仕事も出来るって良い男じゃないかな」


「はい。イキイキとした直也の顔はとても格好が良いと思います」


「・・・うん。そんな恋人がいたら良いよね」  


 アイ・マイ・ミイは頭の中に直也との恋人同士の生活を想像してみる。直也の周りには絶世の美女と言っても過言ではない女性が6人もいる。その女性たちは美しいだけではなく直也の隣に立つ実力も身に付けている。


 そんな人達に囲まれて果たして一緒に暮らしていけるのだろうか? 


「無理ですね」


「うん、無理だねー」


「絶対に無理です」


 3人は声と仲良く同時に協和音のように言葉を重ね合い、お互いの顔を見ながらクスクスと笑い合う。 


「さて、そろそろお仕事に戻りましょうか」


「そだねー、午後も頑張ろうねー」


「うん。精一杯働こう」


 メイド達は椅子から立ち上がるとウーンと背伸びをすると、午後のお洗濯物干しと言う仕事の現場へと向かっていった。





 アイ・マイ・ミイが服やシーツなどの他のメイドが洗濯し終わった大量の洗濯物を干すために中庭に来ると、直也とアスそれにリーシェが訓練をしていた。


 他のメンバーから数段実力が劣るリーシェは休みの日や時間が空いた時など直也に霊気の使い方のコーチをしてもらうようになっていた。

 直也は何気に張り切って、真剣に熱い指導を行っていた。


「そう、そのスッとした感じ大分良いよ。そのままスーっと霊気を放出しながら、右手のひら一点にグッと集めてビビッときたらガってなるからコントロールしてみて」


「・・・はい、直也さん」 


「ねえリーシェ、霊気を体に流れる水の様にイメージすると良いよ。霊気は魂から湧きだ水のようなもの。体のどこにでも染み渡り多くも少なくも自由にいき渡る水って感じ。今の場合は体の中をゆっくりと流れて少しずつ右手に集まっていくイメージね」


「はい、アス先生。分かりやすくて勉強になります」


「・・・・・・」 


 直也達の訓練の様子を見てしまったアイ・マイ・ミイは、「ブオツ」と思わず大きく噴出してしまい、慌てて顔をて手で覆い隠した。


「見た。ビビっとしてグッとするって」


「あれじゃ何を言っているのか良く分からないよね」


「あれが天才肌と言うのでしょうか」


 直也の方をみると少し肩を落とした寂しそうな姿が見えた。


「僕は直也さんで、アスは先生」


 リーシェは最近自分よりアスの教えを素直に聞いているような気がしていた。直也はアスに向かって言ったリーシェが「先生」と言った言葉にショックを受けたみたいだった。


「直也様、傷ついてしまったのかしら」


「うん。しょんぼりとしているよ」 


「なんか可哀そう」


 3人は最近いつも楽しそうに笑っている直也が、寂しそうに佇んでいる姿から目が離せなくなってしまった。思わず声をかけて慰めたくなる衝動を抑える。


「なんか切ないね」


「はい」


「そだね」


 直也に淡い好意を持ち始めているアイ・マイ・ミイの三人は太陽が傾き始めて直也達が訓練を終えるまで、大量の洗濯物を干すことを忘れて屋敷の陰から直也の弱った様子をずっとキュンキュンしながら見守っていた。


 3人のメイド達が我を取り戻した時には洗濯物を既に生乾きの臭い匂いを放っていて、もう一度洗い直さなければなければならない状態になっていた。

 そんなこんなでマリーに仕事をサボっていたことがばれた3人は、晩ご飯抜きの刑からの翌朝4時起きで早朝洗濯業務からの通常メイド業務15時間勤務を言い渡された。



 翌朝、直也が一人朝早くからトレーニングをしていると、井戸がある洗濯場で大量の洗濯物と格闘している三人のメイド達が眼に入った。


 「お腹が空いたよ」と悲痛な表情で言いながら、必死に洗濯板で洗濯している姿を哀れに思った直也は、訓練後に食べようと持ってきていた自分で作っておいた塩おにぎりと青山食堂から買って置いたから揚げを差し入れしてあげることにした。


 三人のメイド達は直也を見て体を強張らせつつもお礼を言い、「美味しい」「優しい」「嬉しい」と泣きながら塩おにぎりと唐揚げを食べていたという。


 ご飯を食べながるメイドさん達から熱い視線を受けて、直也は少しだけ、メイドさん達と仲良くなれた気がした。







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