はじめての依頼2
アマテラスの名で地竜の討伐依頼を受付で手続きして正式に請け負うと、直也達は早速討伐の準備に取り掛かかるためにギルドの向かいにある商店街に面した広場で簡単な打ち合わせを行った。
依頼書の内容を確認していく。今回の討伐対象となった地竜は体長20m程だが知能は低く、どうやら人を襲って人肉の味を覚えたらしく街道や近隣の村などに姿を現わしては人や家畜を襲っているらしい。
「この地竜が隠れている森って町からどの位離れているの?」
「えーと、依頼書を見ると大体ここから50キロ位北っぽいですね直也さん」
「了解、北に50キロね」
「主様、腕がなるね?地竜ってどの位強いのかな?」
久しぶりの戦闘が楽しみで仕方がない様子のアスの質問に、真っ白なでピンと伸びたウサ耳兎の獣人で元Aランクの冒険者だったシャロンが答えた。
「討伐対象の地竜は低ランクの部類ね。力は強いし、ある程度の魔法も使うのだろうけれど知能の方は獣並みたい。依頼達成で100万、金貨100枚ね。地竜は素材として使える物も多いし肉としても売れるから、それなりに良い値が付くんじゃないかしら」
「旦那様、高く売れたら今晩はご馳走だな。ああ、楽しみだ!」
「みんな、まずは僕達の初の依頼に集中しよう。出来れば夕方までには終わらせてたいと思っているから、装備や道具を確認しだい北の森に出発しよう」
直也はそうみんなに話とリーシェに向き直り優しく伝えた。
「リーシェ、走っていくことになるから少し大変だと思うけれど頑張ってついて来てください。でも本当に辛くなったら直ぐに言ってね」
「はい直也さん。でも私もアマテラスの一員です。だから頑張ります」
「主様、私も苦しくなったら面倒を見て欲しいな」
「あたいも構って欲しいよう」
「アスやレーヴァの力は知っているからね、全然心配していないよ。でも、まあ、もちろん何かあった時には僕に言ってね」
「今日の働く主様、何かカッコイイ」「あたいのために働く旦那様、とても輝いている。大好き」
リーシェ、アス、レーヴァは直也が普段は見せない働く男性の背中に感動をしているようだ。
「アスちゃんそんな甲斐性無しは放っておきなさいな。アスちゃんには私がついているは。私がいつでもどこでもどこまででもアスちゃんを助けに行くから安心してね」
シャロンは元A級の冒険者だけあってとても落ち着いている上に冗談をいう余裕もあるようだ。
「さあ、早く装備を確認して。終わり次第弁当を買って出発するよ」
「はーい」
こうして直也達アマテラスのメンバーは無事に初めての討伐依頼に走って向かったのであった。
町を出て普通の人間であればほぼ全力疾走という位の速さで北に向かって走り続ける。直也やアス、レーヴァは息一つ切らすことなく走り、直也に至っては走りながら力を使いリーシェのサポートをしつつ、地竜と思われる反応まで見つけていた。
他のメンバーよりは劣るものの、エルフのリーシェは自分の実力を遺憾なく発揮して皆と同じ速度を維持して走っている。
「リーシェは本当に凄いな。あと少しだから頑張ってね」
「はい、頑張ります!」
「主様、私も凄い?どう凄い?」
「あたいも、凄いよって褒めておくれよう」
「うん、君たちも凄い、凄い」
速度を維持したまま走り続ける4人を見てシャロンは舌を巻いていた。
(体力的には既にA級の戦闘職並ね。リーシェさんを除く3人についてはまだ全然本気を出していない。恐らく身体の強化さえ使っていないわね)
「高杉さん少し聞いても良いかしら?」
「はい、どうぞ」
「私達はあなたの誘導で走っているのだけれど、このままの進路で良いのかしら?もしかしてもう地竜を捉えていたりするのかしら?」
「はい、目的の地竜かどうかは分かりませんが目的地の周辺で一番強い奴の処に向かっていますよ」
「主様、私もこいつで会っていると思うよ」
「あたいも間違いはないと思う」
「へー、そうなの。ちなみに今まで魔物に遭遇していないのにも何か理由があったりする?」
「そうですね。時間が取られない様に僕達の進行方向約1キロ先まで威圧をかけています。レーヴァも僕と同じことしてくれているので、弱い魔物達は命がけで逃げているんでしょうね」
「そんなことしていたの?全然気が付かなかったわ」(私のウサイヤーでも感知する事ができなかった。高杉さんもやるじゃない)
「みんな後40分も走れば恐らく地竜に接敵することになる。3キロ位前で一度止まって息を整えながら接近するから」
直也の言葉を聞きながら、シャロンは様子を伺う。
リーシェには多少の緊張は感じられるが恐れや恐怖、不安を感じている様子はない。
直也や仲間達を信じているからなのだろう。アマテラスのメンバーはまだまだ自分が知らない力を何かを持っている。
極東支部支部長で元A級冒険者シャロンは、ギルドの関係者としても冒険者としてもアマテラスのメンバーにはとても興味がある。
シャロンは久しぶりに心の奥底から感じるワクワクとした期待感にただでさえ大きな胸をさらに大きく膨らませて、直也の視線を釘づけにしたのであった。