冒険者ギルドにて
翌日冒険者ギルドを訪れた一行は直ぐにギルドマスターの私室に通された。部屋の中にはジョニーが一人いて何やら怪しげな機械をカチャカチャ弄っていた。
「あら直也、早かったじゃない。少しだけ待っていてくれるかしら、もうすぐ準備が終わるから」
ジョニーはそう言うと職員の女性を呼び人数分のお茶を持ってくるようにと指示を出す。
「それは一体何の機械です?」
サクヤが興味深そうに尋ねると
「これは転移装置よ。冒険者ギルドの極東支部と繋げるのだけど、長い時間使っていなかったから調子がいまいちなのよ」
「今の冒険者ギルドの極東支部長って言うと確か元A級冒険者のシャロン・シルフィード様でしたか?」
「あらサクヤ様良く知っているわね。そのシャロン支部長がね、どうしても立ち会いたいって言ってきかないのよ。・・・はいっと、これできっと多分大丈夫ね」
「きっと多分って、転移装置ですよね」
「大丈夫よ、大丈夫。シャロンってばとっても頑丈だし、運も良い方だし」
「運ですか?」
「そう運よ!」
「恐ろしいことを平気で言うわね」
「転移装置を運任せとは」
額に汗をかきながらジョニーと話をするサクヤとマリー。
「怖いです直さん」
「主様私も怖いです」
「旦那様あたいも構っておくれよう」
「あんた達、少し直也様から離れなさい」
三人掛けのソファー座る直也にリーシェとアスが左右から抱き付いて、レーヴァが腰にしがみ付く。しがみ付く三人を直也から引き離そうとイズナが頑張る。
ジョニーは転移装置を何もない部屋の隅に設置して起動すると、金庫の中から桐で出来た小箱を取り出した。
「これが貴方達のランク・タグよ」
そう言うとジョニーは机の上にあるお盆の上に、銀製、金製、紫色の見た事が無い金属製の合計7つのタグを置いた。
直也はソファーから立ち上がり、ジョニーが並べたランク・タグを見た。
「ありがとうございます、ジョニーさん。えっと、でもこれは?」
直也は並べられたランク・タグを見比べる。
「確か新人のFランク冒険者にはランク・タグではなく紙の証明書が渡されるはずでは?」
「詳しいことは後でね。あちらもそろそろ準備出来ている頃だと思うし」
直也達が転移装置の方を見るといつの間にかゲートが開いて空間を繋ぐを扉が現れていた。
ジョニーは現れた扉に近づくとノブをガチャリといきなり扉を開いた。
すると、扉の向こう側から若い女性の声が聞こえてきた。
「何?・・・ん、ゲートが繋がっているの?・・・待って!待ってってば!まだ扉を開くな!まだ準備が終わっていないんだってば」
ジョニーはまるでその言葉を無視するかのように勢い良く扉を開いた。
扉の向こう側に現れたのは、扉を閉めようと手を伸ばしていたままので状態で固まっている、ウサ耳をピンと伸ばした黒い下着姿の若い半裸の兎の獣人。
「・・・・・・!」
「・・・・・・(汗)」
直也は扉の正面に立っていたため、黒い下着を身に付けた姿の半裸の女性とガッツリを目が合ってしまう。
「・え・・あ・誰?」
「初めまして高杉直也20歳です。職業は今日から冒険者になる予定です。趣味は料理とお掃除です」
と直也が丁寧に挨拶をして頭を下げる。
「あら、うふふ!シャロンごめんなさいね、まだ着替え中だったのね」
「・・・あ、う、あ」
ジョニーは「またねー」とガチャンと扉を閉じて
「ごめんなさいね。まだ準備できていなかったみたい」
と、こちらを振り返り軽い口調で言ってくるが、直也は頭を下げた状態のままで、すでにサクヤ達から吊し上げに合っていた。
「直也さんバッチリ見ましたよね」
「直也おまえと言う奴は」
「ラッキースケベってやつですよね」
「ん?主様何か嬉しいそうだね、良い事でも合ったのかな?」
「旦那様、あたいの下着も見ておくれよ」
「あの女性、直也様好みの良いウサ耳シッポでしたね」
これは事故だ。僕は何も悪い事はしていない。そう直也は心の中で思ってはいたが、決して口に出す事なく、黙って頭を下げ続けたのであった。