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英雄争奪戦1

 直也の腰にかたくなにしがみつき、涙を流して訴えているレーヴァテインは見る人によっては、直也に捨てられ、すがりつく悲しい被害者女性に見えなくもない。


 既に付近の住人は避難を終えているが、実はこの様子は、ガーディアンズに所属するイズナの警護を行う者やイズナを心配する一部の団員達から監視されていた。


 大勢の女性をはべらせ、団長イズナを甘い言葉で騙し、捨てないでと縋りつく女性を冷たく足蹴にしているようにも見えなくはない直也の状況。


 赤髪の女性はレーヴァテインだということは皆理解してはいるのだが、会話の内容が分からないに、上この絵面えづらの印象はとても悪い。

 監視を行う大勢の団員達の眼には、自分たちの敬愛する美しい団長の心を弄び、町のアイドルや美女を、挙句の果てに幼い少女や男にまで手を出している最低最悪の鬼畜クズ男、高杉直也。


団員達の心の中に、


あのなおや討つべし!


との想いが生まれ育つことは仕方のない事だった。




「旦那様、あたいと番いにならないのだったら、おなかの卵達と一緒に死んでおくれよう」


「なんでそうなるのですか!僕達はさっき再開したばかりですよ!」


「・・・? ・・・! だ、旦那様、今、今更言い逃れなんて、させません!」



 だんだんとレーヴァテイン妄想癖の、個性の灰汁≪あく≫に慣れ始めて来た面々は


「レーヴァテインって、凄く妄想たくましいみたいね。もう子持ちということになっているわ」


「はい、千年という時間の間に色々あったのでしょう。色々とこじらせてしまっているようですし。人間も竜もその辺は変わりないみたいですね」



「私も早く彼と結婚したいです」



「リーシェさん、主様は私のような小さい少女が好きな人だから、私以外がいくら求めても無駄ですよ」



 そんな会話がされている中、唯一レーヴァテインと面識のあるイズナが行動を開始する。


「レーヴァ、覚えていますか?私、イズナの事を」


「イズナ・・・? もしかしていつも旦那様に可愛がられていた私をこっそりいつも羨ましそうに見ていた。狐のイズナか?」


「くっ、そうよ、そのイズナよ。お前は里を飛び出してから一度も帰って来なかったのに、何故今になって突然帰ってきたのよ」


「旦那様の気配を感じたからに決まっているだろう。あたいは旦那様とつがいになるためにここに来たのだ」


「それは残念だったわね。直也様にはもう私という心に決めた真の生涯パートナーがいるわ。彼は私を強く胸に抱きしめて、手を握って誓い合ってくれたのです。ずっと一緒だよと・・・あぁ、なおやしゃま、お慕いしておりますう」



 イズナの話を聞いた直也を慕う女性陣(男1人含む)はそんな発言を許すことが出来なかった。


「何を言っているのですか! 直也さんは誰にも渡しません! これは私の意志です。過去は関係ありません! 私はこの指輪に誓って絶対に直也さんに絶対好きになってもらいます。そして必ず私って一緒に町作りや後継者作りを沢山するのです」

 サクヤは、きつく拳を握りしめながら己の決意を語る。


「直也は私と一緒に暮らします。直也のことは全て私に任せて下さい」

 マリーは、落ち着いた言葉で口数は少ないが決して自分の譲れない気持ちを伝える。



「初めて会った日、あの乱暴な冒険者から助けてもらった時から好きでした。私も、えーと?一緒に夜明けのハーブティーを飲んで欲しいです?」

 リーシェは頭にうまく言葉が思いつかずに沢山の?を浮かべ無自覚に大胆な大人の発言でみをなを挑発。



「だから主様は幼い私の事が一番好きなのだってば。主様と繋がっている私の姿が何よりの証拠です。早くみんな諦めた方がいいですよ」

 魔法少女姿のままのアスモデウスは少女の自分が一番とうたう。



「直也、私とヤリ合うのは楽しいって言ってくれたわ!何度も何度も私に強くしたんだから!」

 ジョニーは悪意ある表現で何度も訴える。



 皆が思いを好き好きに語り、お互いをけん制し合うまさに混沌カオスな状態。本日の町中心街にある憩いの仲良し広場は荒れに荒れていた。




 互いを言い罵り合うサクヤ達を、直也の腰にしがみ付いて大人しく見聞きしていたレーヴァテインは、


「旦那様、雌どころか雄までいるハーレムを作っていたなんて!」


「いや、そんなの作っていないから!」


 レーヴァテインは尊敬の眼差しで直也を眩しそうに見た。両方いけるとっても凄い旦那様。自分の眼に間違いは無かったようだと。





「でも、絶対に一番は譲れないね」




 口を歪ませ呟くと、突如有鱗目の瞳に力が甦る。レーヴァテインは直也の腰から離れ立ち上がると大声で言い放った。


「旦那様ハーレムの者達よ。誰が一番旦那様の隣にいるのが相応しいか、勝負しろ!」



 言葉と共に凄まじい竜気を放ち己の力を解き放つ。頭に角を生え、鋭く長い爪を持った手を深紅の鱗が覆う。背中には翼を、おしりには身長よりも長い尻尾が生えている。


 伝説の終焉レーヴァテインは竜気をどんどん高めていく。まるで爆発寸前の火山の火口に立っているような、人が決して逆らう事出来ない災害級の脅威が目の前にある様な感覚に陥ってしまう。


 今、町の仲良し広場は一瞬でレーヴァテインの狩場とかしてしまった。


 この異常事態にサクヤ達は直ぐに気が付いた。だが、そんな事位で怖気づくようでは直也の嫁は務まらないと言わんばかりに、彼女(彼)達も熱を上げていた。



「面白いじゃない! 正妻の座は私が! 召喚、来て頂戴フェルちゃん」


 現れたのはサクヤが契約する最上位の神獣。瞳に高い知性を宿し、口には鋭い牙を持った体長5m程の狼。強靭な巨躯を美しい白毛で覆う、神と巨人を親に持つ神獣フェンリル。サクヤ共々やる気が溢れている。



「嫁の座は私がいただく。オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」


 真言を唱えながら左右の人差し指と中指を立て、右手で空を切る。空を切った右手を左手に重ねて印を切る。マリーはいつの間にか黒い忍び装束の上にヒイロカネで出来た紫の胸当ての鎧をを身に着け、強力な魔力を放つ妖刀村雨ムラサメを握っていた。



「私も頑張ります!」


 リーシェの意気込みは抜群。だが、特に変化はない。



「面白い、魔法少女の先が見たいと言うのであれば、その命を懸けてもらおうか」


 魔法少女カオティックブラックこと魔王アスモデウスは、可愛い従者のアスちゃんの仮面を脱ぎ捨て、傲岸不遜な態度で笑みを浮かべて事態を楽しんでいるようだ。



「行くぜ、愛情マックスパワー」


ジョニーは筋肉の力を解放した。



「直也様、私はあなたの一番になりたいです」


 一番になりたい、イズナの純粋な言葉は言霊となり、望む未来を引き寄せるための力になる。体から光が輝きを放ち、やがてイズナの体に変化が現れる。ケモ耳がいつもの3倍はふっかふかになり、モフモフシッポがまるでヤマタノオロチを思わせるような9つになり、モフオロシッポへと進化した。



 次々と魅力的な女性達が自分に好意を打ち明け、武力による徹底抗戦的な争いの姿勢を見せていく。目の前で起きる数々の奇跡テンプレの嵐の前に声を出すことも出来ない直也は、一体これから何が起きてしまうのかが怖くなり、一人でお家に帰りたくなってしまっていた。



























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