火竜襲来
二度に渡る突然の爆発で冒険者ギルド建屋は半壊、倒壊の危険が高いためギルド職員主導の緊急避難が行われた。
ギルド職員による行方不明者(ギルドマスターのジョニーと冒険者見習い直也)の懸命の捜索救助活動が行われ、ギルドの地下で瓦礫に頭を突っ込んで倒れている二人を発見、駆け付けた救急治癒魔法使いの懸命の治療によって、現在は会話が出来る程までに回復していた。
「随分派手にやったわね」
冒険者ギルド職員の証言により爆破事件と傷害事件の容疑者魔法少女カオティックブラック一味は町の広場に連行され正座させられたまま、ギルドマスターのジョニーによる厳しい
事情聴取が行われていた。
「で、この有り様について何か申し開きはあるのかしら?」
広場通り沿いにある、壊れて傾いた冒険者ギルドを指さしながらジョニーは被疑者カオティックブラック、サクヤ、マリー、リーシェの四名に尋ねた。
「何故ギルドの受付なんかで爆裂魔法を使ったのかしら?私も直也が守ってくれなきゃ死んじゃうところだったんだから」
「えーと、ですね。私達は冒険者ギルドに登録すると言って屋敷を飛び出した直也さんを追いかけてきました」
「ギルドについた私共は職員に直也の事を尋ねてみたのですが、皆様は直也のことは知らないとおっしゃいましたので、どうしたものかと悩んでいたところ」
「直也様は心配ないから先に冒険者登録をしてしまおうと言うことになりまして」
三人は魔法少女カオティックブラックに視線を向けると
「先に冒険者の登録を魔法少女ですることにしたの。でも、職員さんが誰も魔法少女を知らないって言うので、実際に変身して見せる事にしました」
あらかじめ職員から事のあらましをある程度聞いていたジョニーは特に怒ることもなくカオティックブラックの話を聞いている。
「それはご丁寧にどうも。で、あなたが変身して大爆発。私と直也を吹き飛ばしてギルドに穴をあけたと」
「はい、魔法少女の変身に爆発はつきものですから!」
ジョニーはこめかみを指で抑えながら話を聞いている。
「爆発がつきものって何よ。まあいいわ、おかげで直也が体をはって私を命がけで守ってくれたし。直也ってば、とっても格好良かったわ」
「?」
「なんでもないわ。気にしないでね」
ポーと顔を赤くしながら話をするジョニーの側に直也は近づき、
「申し訳ありませんでした。彼女は僕の従者です。ギルドの修繕費用は必ずお支払いします。僕がすべて責任を取りますので許してください」
「ごめんなさい、主様と二人で一緒に働いてお金払います」
カオティックブラックと一緒に隣に立って頭を下げる直也に
「直也がそう言うなら、もう、仕方ないわね!もとはと言えば、直也にアタックした私にも原因があるのだし、今回のことは事故として処理しちゃうわ。もう直也、あなた貸し一つよ」
ジョニーは困った乙女の様な仕草でそう言った。
「ありがとうございますジョニーさん。必ず借りはお返しします」
直也はもう一度深々と頭を下げる。
そして、頭を上げると遠くの空を見上げて
「ところでジョニーさん、大きな力を持った何かが凄い速さでここに近づいていますが、何か心当りはありませんか?」」
「え、何ですって?」
「どうやら飛んでいるようですが、・・・もうすぐ姿が見えると思います」
空に浮かんだ豆粒みたいな点の様なものが、瞬く間にどんどんと大きくなり次第にはっきりとした姿を現す。
それは体長20mほどの赤い強固な鱗に覆われた体に真っ白なドレスを纏い、とんでもなく目を血走らせたドラゴン。町の中央、直也たちがいる広場の真上を飛びながら、「グォアー」と叫び何かを探すようにあたり見渡している。
赤いドラゴン巨体を見た町の住人達は、クモの巣を散らしたように広場から逃げ出し、少し離れた場所から隠れて様子をうかがっている。
「あれは火竜レーヴァテイン!」
ジョニーの言葉で、直也は里で一緒に暮らしていた赤い鱗に覆われた小さなドラゴンパピーを思い出した。
「レーヴァって、まさかあのドラゴンって」
ドラゴンの眼が町の広場に立つ直也の姿を捉えると全身から強い光を放った。光は徐々に小さくなり人の形をとっていく。やがて光が収まるとそこには、赤いくせのある長い髪、健康的でグラマーで色気のある褐色の肌をした美しい女性が純白のドレスを着て空に浮いている。
人の姿に変化したレーヴァテインは勢いよく直也のところに目掛けて降り立った。
彼女はハアハアと息を切らして興奮しているようだ。
「旦那様、今すぐあたいも貰ってくれよ。あたいも抱いておくれよ!あたいを無視しないでおくれよ!」
と、到着までのわずかな時間で妄想を放置寝取られプレイまで昇華したレーヴァテインは、堪らず直也に抱き足を絡ませ激しいキスをした。
「・・・、え?」
周りにいるサクヤ達は余りの事に固まり、言葉も出てこない。
公衆の面前で直也の唇を奪ったレーヴァテインは、他人に見られることで益々と興奮し、我を取り戻したサクヤ達に止められるまでの間ずっと唇に吸い付いていた。