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魔法少女カオティックブラック

 二人のパンチがクロスしそれぞれの頬を捉える。ドガンと重い音が部屋中に響き、二人の体は互いの拳の威力で後ろに吹き飛ばされた。


ジョニーは口から流れる血を腕で拭うと


「直也よ、私はやはり間違っては、いなかったな。お前の力は、途轍もない。まだ、まだ全然余裕が、あるようだ」


ジョニーは息をきらせながら直也を見る。


 直也は目立った怪我も息をきらせることもなく静かに立っている。


「昔かなり相棒にかなり鍛えられましたからね」


「クックック、俺も武にはかなり自信があったのだがな。畏れ入ったぞ、まさかここまで差があるとはな」


 ジョニーは楽しそうに笑いながら畏れいると言うが、驚嘆の言葉とは裏腹に闘志はますますみなぎっている。


「ジョニーさん、僕もまだまだジョニーさんと戦っていたいのですが、そろそろ」


「ああ、そうだな。終わりにしよう。だが、直也よ最後に少しだけでもいい。お前の力を見せてくれ。俺に力をぶつけてくれ!そして、俺の全力の力を見てくれ。俺の《《全部を》》受け止めてくれ!」


「分かりました。ジョニーさんの気持ち確かに受け取りました」


「直也、ありがとう」


 二人は同時に力を高める。

 

 直也は霊力をさら高めて、体に纒う霊気の鎧は可視か出来るほど蒼く輝きを見せる。

 ジョニーもギフトの力で筋繊維を速筋強化、体を鋼に変化させて、さらに魔力で筋力を極限まで強化する。


 直也もジョニーも顔に笑みを浮かべながら叫ぶ。


「いきますよ!」


「ウオオオー!直也、受けてみなさい、一撃必殺の金剛爆砕拳!!」


 直也とジョニーが、凄まじいスピードと力で激突しその激突の余波でコンクリートの床が砕け、まるで煙幕かのような土埃を舞上げ地震を思わせる揺れを引き起こす。


 土埃が晴れるとジョニーのくり出した拳を直也は両手でしっかりと受け止めていた。己の全身全霊の一撃を受け止められたジョニーは、まるでそれが当然の事であるかのような顔で、そしてさらに期待を込めた瞳で直也に訴えた。



「直也!さあ、見せて頂戴!あなた持つ本当の力を!」


 ジョニーの心からの訴えに神気を少しだけ解放しようとした直也は、



次の瞬間、



 天井を突き破り当然襲ってきた純粋で強力な魔力の爆発をまとも受けて、ジョニー共々吹き飛される


「一体何が?」


咄嗟に自分とジョニーを守ることに成功したがダメージを受けてしまった。瓦礫を払い周りの様子を確認しようと身を起こそうと時、直也は謎の二度目の爆発を受けてとうとう気絶した。






同時刻、冒険者ギルドの受付フロアにて



「アス、魔法少女って?変身って一体どうことなの?」


「魔法少女とはなんとも魅惑的で惹かれる言葉だな、私ならば魔法メイドか?」



「なんか可愛い感じです。アス、私も魔法少女になりたいです」



 サクヤ、マリー、リーシェの三人は魔法少女にとても興味を惹かれたらしい。


「フッフッフッ。じゃあ、特別に魔法少女の変身を見せてあげるわ」



 アスは張り切ってそう言うと、ギルドの受付フロアの真ん中に一人で立って、両腕を十字に組んでピースサインを作り左膝だけを少し内側に曲げる。


「目覚めて私のソウル!」


 組んだ両手を時計回しで回しながら、左手のピースを右目の前に、右のピースを心臓の上に、


「変身!」


 掛け声と共に両手を左右に引いて叫ぶ。



「闇の深淵カオティック・ブラック!」



 アスことアスモデウスの体が光輝き、黒い魔力に包まれる。やがて黒い魔力は闇の深淵を思わせる漆黒のショートウェディングとウェディングブーツに変化する。

 黒い魔力が消えるとそこには現れたのは、ガッツリポーズを決め、髪をハート型のリボンでラビットのツインテールにした漆黒のウェディングドレス姿のアスだった。


驚きの余りに皆声を出せずに絶句する中、リーシェだけは、


「キャー、凄い可愛いー、素敵!」


「ふふん、漆黒のプリンス!カオティックブラック」


 決め台詞と共にリーシェの声援に気を良くしたアスは派手な魔法の演出をつける。アスが作りだした漆黒の魔力は上下に走り、天井を貫き空へ、床を破壊し大地の底へと伸びて爆発を起こす。


「今、現出よ!」


ドーン!と派手に二度目の爆発。




「本当に変身した!」


「魔法メイドも有りだな」


「キャー、私も、私も、魔法少女なりたいです!」


 驚きを隠せないサクヤ。

 何かを企むマリー。

 興奮して、我を忘れるリーシェ。

 ギルドの被害に顔を青くしている職員。

 そして、人知れず爆発に巻き込まれ気絶する直也とジョニー。



 魔法少女カオティックブラック。


 その名前の通りに彼女は、無秩序な混沌をあちらこちらに振り撒いて登場したのだった。

















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