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英雄は勝利した後逃走す

「約束の時間よ」突然現れてそう言った漆黒のドレスを着た黒髪の幼い少女。


「君は・・・」


「主様、今はそんなことよりあっちの方を何とかしないとね」

 

漆黒の少女が指さす方を見るとイズナの動きが超スローモーションから少しずつ早くなっている。


「今は魔法で二人の時間を加速しているけれども、そんなに猶予はないわよ。早く準備してよね」


 直也は言われるままに霊気を高めて体のダメージを回復させて、その後にイズナの特攻抱きつき攻撃に対応できるだけ身体能力を強化して、霊気の密度も上げていく。       

 「主様準備は出来たかしら?」


 漆黒のドレスの少女は話ながらイズナの隣に立ち何かをしているようだ。


「準備が出来たのなら、魔法を解除するけど?」


「待ってくれ、君は「主様、今はその話をしている時では無いと思う」


「私も沢山話をしなければならない事があるから、この件が無事に済んだら必ず会いに行くからね」  


 漆黒のドレスの少女の姿が次第に薄くなり消えていく。直也は、また会いに来ると言う少女を信じてイズナに体を向き直す。


「魔法が解けるわよ。主様頑張ってね」


 少女の声が聞こえると、加速が解けて時間が元通りに進み出す。



「私をあなたの特別にして下さい!」


 と、イズナの突進がもうすぐそばまで来ていた。

  直也は慌てずに飛び込んで来るイズナを、霊気のクッションで受け止めつつ、自身も後ろへ飛んで突進の力の勢いを弱くする。そこから勢いの弱くなったイズナの体を仰向けにして胸元に引き込み、お姫様抱っこでしっかりと抱きかかえる。最後に直也は霊気を足に集中させて大きく足を開いて大地を強く踏みしめ、強引に残りの力を打ち消した。

 直也は自分に抱かれながら、赤い顔で涙を流すイズナを見つめ、


「イズナさん、あなたはずっと僕の特別です。あなたは僕の特別で大切で大事な人です」


「な、なおやしゃま」


「本当はイズナさんにも仲間になって欲しいですが、イズナさんにはガーディアンズの団長という、町のみんなに尊敬されて愛される仕事があるので、声を掛け辛かったんです」


「なおや、さ、ま」


「でも、イズナさんお願いします。たまにでも構いません。僕達のパーティの指導を、相談役をお願い出来ませんか?」


 お姫様だっこをしたイズナを強く抱き締めて、ケモ耳に優しく呟いた。


「僕には、イズナさんが必要なんです」


「は、はい、なおやしゃま、喜んで」


ハートの目をしたイズナの抱き上げて、直也は仲間達の方へと歩き出す。その顔は大変な仕事を終えた後の、やり遂げた感が強く感じられた。



「上手いこと丸く収めたわね」


「見事でした。流石私の直也です 」


「直也さん凄いです」


「殴られた時はどうなることかと思ったけど、何とかなったみたいだしね」


「あのタイミングでは間に合わないと思いましたが、いつの間にか体制を立て直していましたしね。流石私の直也です」


「お姫様抱っこ羨ましいです」


 サクヤとマリーとリーシェ、三人は仲良く話しながら直也とイズナに近づいて行く。


「イズナさん、また泣いているんですか?」


「泣いてねーし!」


「イズナ様、そろそろ私の直也から離れていただけませんか?」


「絶対に嫌だし!」


「直也さん、後で私にもお願いします」


「駄目!私だけだし!」


 三人の言葉を聞いて直也にぎゅっと抱き付くイズナの姿はさっきまで、暴れていたとは思えないほど可愛らしい。


「なんか、疲れたからもう帰えろっか?」


「リーシェさん、あなたはもう宿はきまっているのですか?」


「いいえ、決まった宿はありません」


「だったら、家に来なさいな。同じパーティの仲間として、良ければ一緒に暮らしましょう」


「部屋も沢山空きがありますし、よろしいかと」


「本当に良いのですか?」


「僕もそれが良いと思うよ」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます。みなさん宜しくお願いします」


「うん、宜しくね」


「それでは、今日は歓迎会とパーティの結成のお祝いをしないといけませんね。直也買い物に付き合いなさい」


「はい、わかりました」


「な、なおやしゃま、私も行きます」


「いや、町を歩くんだから早く直也さんから離れて下さいね!」


「断るし!」


「やっぱりお姫様抱っこ、羨ましいです」



 会話を弾ませながら直也、サクヤ、イズナ、マリー、リーシェの五人は、お姫様抱っこでイズナを抱き締める直也の姿を石の様に固まって凝視しているジョニー達親衛隊の目の前を通って、冒険者ギルドを出ていった。


「タカスギー、ナオヤー!お前だけは、お前だけは、絶対に赦さないわー!」


 ジョニーや親衛隊、訓練生の怨嗟の声はその日の深夜まで町中に聞こえていたと言う。




夜の大社の屋敷にて

 

 歓迎会も無事に終わって、1日のよごれと疲れを流そうと、直也は屋敷のお風呂場向かった。脱衣場で服を脱いでお風呂場に入ると、掛け湯をして石鹸で体を洗う。


「ふんふん、次はお湯に浸かりましょう」


 風呂好きの直也は鼻歌を唄いながら広い湯船に向かうと、いつの間にか先客がいることに気が付いた。


「遅いじゃないのよ」


 そこにいたのは、ギルドで出会った謎の漆黒のドレスを着た美少女。その美少女が漆黒のドレスを脱いで裸でお風呂に入っている。



・・・・・・!



「それは、ロリは流石にまずいからー!」


と、直也はお風呂から逃げだした。


「マジで、嘘でしょ!主様!」


 直也が逃げだし誰もいなくなったお風呂場で、アスモデウスは一人で暫く立ち尽くした。


「マジで、嘘でしょ」







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