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新たな出会い

 直也は今一人で町の大通りを歩いていた。朝食を食べながら3人に冒険者の話を聞いた直也は、町の中心部にある冒険者ギルドへ行って、直接詳しい話を聞いてみたいと思ったためだ。


 直也が冒険者ギルドへ行くことを伝えると、3人は一緒に行くと言い出したのだが、目立つこと嫌った直也は、何とかかんとかお願いして、一人で行くことを了承してもらっていた。


 冒険者とは国、町や村などの自治体、またそれに連なる行政機関、公の立場を持つ者や商人、一般の人のなど幅広い層から、様々な依頼を引き受けて報酬を得る仕事の様だ。冒険者にはランクがあって、達成した依頼が一定の量と評価を受けると、次のランクに上がることが出来るらしい。ランクが上がることでより依頼難易度が高くなり、より高額な報酬が出る依頼を受けることが出来るようになる。


 三人に聞いた話を思い出しながら冒険者ギルドに向かって歩いていると、一人の女性が3人の粗野な男に囲まれていた。どうやら女性が何度断っても、男達がしつこく付きまとい困っているようだった。


 男達は剣を腰からぶら下げ、屈強な体には鉄製の鎧を身に着けてに何かの皮を巻いている。見た感じは戦士で、先ほど話を聞いたまんまの冒険者の姿をしている。町の住民は余計なトラブルに関わるのは嫌なのだろう。女性は、ちらちらと目で通行人達に「助けて」と合図を送っているようなのだが、それに答える者はいない様だった。


 だが、直也の中には困っている女性を見捨てるという選択肢は全くない。迷わず女性の方に向かっていくと囲まれている女性と目が合った。

 見た目は16、17歳くらいだろうか、グリーンの瞳が特徴的なエルフの女の子。可愛らしく見目麗しい容姿、艶のある金髪を背中の中ほどまでのばしている。

 背は少し低めで、着ているローブの合間から見える体は細く華奢と言えるだろう。

 エルフの女の子に向けて直也がわずかに頷くと、ホッとした表情を見せたエルフの女の子は、男達の隙間を抜けて直也に向けて走って来た。金髪の綺麗な髪の間から、僅かにはみ出している少し長くてかわいい耳は、元気なく垂てしまっていて彼女の精神の状態を如実に示している。エルフの女の子は、直也の背中に隠れると、直也にしか聞こえないような声で小さく「ありがとう」と、感謝を伝えて来る。直也の服の裾を掴む手は恐怖で少し震えているようだった。直也は震えるエルフの女の子の手をポンポンと安心されるために優しく触れ、男たちの方へ顔を向ける。


「兄ちゃん、何のつもりかは知らないが、困るんだよねー、そうゆう事されると」


 男の内の一人が、不貞腐れた様子で直也に話かけてくる。


「カッコつけてないでさー、その子おいてどっか行ってくんない?」


と、直也の体をどかそうと手を伸ばしてくる。


「貴方達こそ、か弱い女の子相手に一体何をしているのですか!」


 直也は男の伸ばされた手を払うと、男は一瞬で激情した。


「お前さ、何調子こいてんの?やっちゃうよ、マジで」


「お前早く謝った方が身のためだぞー、ライス君は怒るとマジ何するか、わかんないから」


「俺、マジで切れたわ、こいつ、何イキッてんの」


 男達は直也を睨み付けながら、各々好き勝手なことを言っている。


「貴方が切れようがどうしようが、僕にも彼女にも関係ありません。そこをどいて下さい」


 直也はそう言い放ちエルフの女の子を連れて場を離れようとする。ライスと呼ばれた男は、それが面白くなかったのか、行く手を塞いきた。


「お前、俺をなめ過ぎだ、くそ野郎が!」


と顔を狙って殴りかかってきた。

 

 直也は殴りかかってきたライスの拳を、軽く身をそらしただけでかわす。直也からみればそれは児戯に等しく何の脅威も感じない。


「ああっ、コラ、避けるなや!」


 ライスは、再度体制を整えてまた殴りかかって来る。


 「いい加減にしないと、僕にも考えがありますよ」


 直也はライスに向けて、そう話すが全く聞き入れる気配がない。


「はあ、おもしれえ、やれるものならやってみろや」


「・・・はあ、何を言ってもダメな輩か」


 直也は仕方なく、ほんの少しだけ力を解放して、ライスにだけに威圧を始めた。するとライスは直ぐに自身の異変を感じた。恐怖から全身汗をかき震え始める。ライスはまるでオーガの前に丸腰の全裸で立っている様な感覚に陥る。曲がりなりにも冒険者をしているライスは、ここで目の前に居る直也が、自分の遥か格上の存在であると感じ取ったのだ。


「そこを退いて下さい」


直也が一歩前に進めばライスが一歩下がる、


「僕は暴力は好きではありません。が、貴方がこれ以上続けるというのであれば、ちょっと覚悟をしていただかないとなりません」


 威圧したままの直也の説得は、抜群の効果があったようでライスはガタガタと震えて動けなくなってしまう。


「ライス君、どうしたんだよ?やっちゃってよ」


「ライス君、必殺技見せてよ、あのスゲーヤツ」


 肝心のライスは完全に戦意を失っているのだが、仲間の二人はまだ気が付いていない。直也がうるさい二人の仲間にも威圧をかけると、二人はすぐに真っ青になり、恐怖で失神して倒れてしまった。どうやら二人の実力はライスより大分下がるようだ。恐怖で動けないでいるライスに、


「もういいですよね、僕達はこれで」


 と威圧を解いて直也は、エルフの女の子の手を引いて二人で並んで通りを歩き出した。


「大丈夫かい?」


 優しく問いかける直也に、少し上気した赤い顔のエルフの女の子が「はい」と、小さく頷いた。


「そう、良かった」


と、直也は嬉しそうに笑顔を見せた。

 

 


少し離れた物陰から一部始終を見ていた影がある。エルフの女の子に気を取られていた直也は、二人を見つめる影が複数あることに気が付くことはなかった。影は、二人が繋いだ手を遠くからじっと冷たく見つめていた。。













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