メイドの気持ち マリー語り
私の名は、マリー・シーテン。今はセフィロトの代表を務めるシラサキ家でメイドをやっている。数年前、私がこの町に流れた着いとき、先代の旦那様に拾っていただいた。
この町に来る前の私は、ある国で兵士と言うか騎士と言うか、まぁ、そんな感じのことをしていた。だが、私はある事件で突然の裏切り者として国を追われた。
行く所がない私は、どうせならと思い立ち、昔好きだった千年前の物語の舞台となった町を目指した。大陸から船に乗り、小さな島国にたどり着き、北を目指す。道中、山賊にあったり、ドラゴンの知り合いが出来たり 、海賊にあったり、ダチョウとかけっこをしたりと色々な事があって苦労したものである。
何日間も歩き続けて、生命の樹が見えた時には、自分でもよくぞここまで来たものだと思ったものだ。私がセフィロトに来た理由、それはある英雄の物語だった。英雄は千年前、このセフィロトで神との契約により、人智を越えた力をもち、その力で大勢の命を助けて、多くの悪魔や魔族と戦い最後には魔王まで倒したと言うものだった。当時の私は優しく、強い英雄に強く惹かれ憧れたものである。
この町でメイド業を始めてから5年目、私に超凄い転機が訪れた。ある日、女神様とお話したとか、頭のおかしい話をお嬢様がされた時だ。
途轍もない雷と共に、一人の男があらわれた。その男は、お嬢様や突然現れた生きる伝説イズナ団長の話を纏めると、私が憧れた千年前の英雄御本人様らしく、私は腰が抜けそうなほど驚いたのを覚えている。何でも魔王との戦い千年の時の牢獄に捕らえられていたとか。
英雄、直也が自分の置かれた状況を知った時の落ち込み様は、見ていられないものだった。
せめて体に良い食べ物をと、折角腕によりをかけて料理を作ったのに、手をつけられることなく残された時には、殺意を覚えたものである。いや、実際殴り込んでしまったが。でも、あの時は色々とストレスがあったせいもあるので許して欲しい。
あの時の直也は、なんと言うか、もがき苦しむ普通の一人の弱い人間だった。私が憧れてた物語の勇敢で強い英雄ではなかった。
直也のあの弱々しい姿をみた時、私はなんでかキュンと、ときめいてしまった。ギャップ萌え?と、言うのだったか?
私は直也の力に成りたくなった。元々あまり考える事が得意ではない私は、勢いで直也を町に連れ出した。町を見せて、物語で知った桜の話を聞かせてあげた。
私の話を聞いた直也が、綺麗な涙をみた時に、か弱い泣き声で私の名前を呼んでくれた時に、私は恋に落ちてしまったんだと思う。
今まで、こんな感情になったことはなかった。一人の男を守って尽くしたい。自分の全てで直也を守ってあげたい、尽くしてあげたい、そう思うようになったからな。
今、私は毎日がとても楽しい。
今まで経験したことのない恋を出来ることが、堪らなく楽しくて、堪らなく嬉しい。