1章 想定内の残酷な占い結果
「ここが占いの館か〜…」
家から徒歩15分、近所の筈なのに「こんな所あった?」と思うような奥まった茂みの中からその館が見えてきた。
外観は中世のヨーロッパの古城をミニチュアサイズにしたような感じだが、蔓がその外観の半分を覆っており、真昼間だというのに、何処か薄暗く不気味な雰囲気だ。
(うわ…なんか入りにくいなぁ)
思わず予約した事を後悔しそうになる。
何処か重苦しい雰囲気の重厚なドアを目の前に
、チャイムを鳴らすのを躊躇する悟子。
と、いうより元々ヤケで予約した占いだ。
それに、予定よりだいぶ早く到着してしまった。
(キャンセルするなら今のうちかもしれない)
「……やっぱりやめとこう」
どこまでも小心者な自分に、はぁ〜とため息をつき、
ドアに背を向け、立ち去ろうとした悟子だったが、
その瞬間……
キイィ〜……
そうはさせないというかの如く、中の人がドアを開けて来た。
「いらっしゃい、よく来てくれたわね」
そこには年齢不詳のいわゆる『美魔女』と呼ばれる部類のマダムが立っていた。
この扉は覗き窓もなければ、これだけ重厚な作りの建物だ。
足音くらいの音は、余程のことがない限り聞こえない筈だ。
(さっきの独り言、聞こえてないよね……)
人目を人一倍気にする悟子だ、何か言われるんじゃないかと冷や汗をかいていると、
それに気づいたのかマダムが表情を緩め、こう告げた。
「フフッ随分とヤケになって占いを予約されたようね……でも大丈夫、詐欺でも何でもないから安心して。取り敢えず上がってちょうだい」
空いた口が塞がらない……
それは悟子が予約した時の心情そのままを、ズバリ言い当てられてしまったのだから……
もはや驚愕を通り越して『恐怖』すら感じる。
「……どうして、そう思ったの?」
率直に思った疑問をぶつけてみると、
マダムはまたも微笑し、悟子の方へ振り向きこう述べた。
「フフッあなたの心が読めるからよ」
と、広告のキャッチフレーズのまま返された。
……本物なんだかインチキなんだか、まだ半信半疑だが、この人の占う占いに少し興味が湧いてきた。
(すごい怖いけど、何かが変わりそうな気がする)
そんな強い不信感と期待感の両極端な感情を胸に、悟子は館の中へ入っていった。
♢ ♢ ♢ ♢
(すごい…別世界に来たみたい)
まるで館内はベルサイユ宮殿のような豪華な作りで、小物から何まで煌びやかだ。
そんな風に、館内の様子に陶酔しながら歩き進めると、
一際煌びやかな一室の客間にたどり着いた。
「じゃあ前に座って、さっそく始ていくわね」
「あ、はい……よろしくお願いします」
何だか煌びやかすぎて落ち着かないが、
マダムに促されるがままに席についた。
この占いでは名前や生年月日を聞かれる事は一切ない。
ただ対面して、相手を見るだけだ。
「あなたの名前は、佐々木悟子さん、年齢は29歳、まだお若いのね。職業は…そう、事務員をしているのね」
さっそく名前と年齢、そして仕事まで言い当てられる。
(てか29歳で若いの⁉︎マダムいったい何歳⁉︎)
そんな事を悟子が考えている間にも、着々と占いが進んでいく。
「運勢はいたって平均、悪くない筈なんだけど、己の自己肯定感の低さから災難を呼び寄せ、巻き込まれる傾向あり……」
(そうそう!いつも何かと巻き込まれる)
まるで思っている事を代弁したかのようなマダムの鑑定に、悟子もいつの間にか前のめりになって聞き入っていた。
「……で?現在は会社で良いようにこき使われ、陰口を散々叩かれストレスの捌け口になる為に生まれてきたんだと悟りを開きつつ、我慢して生きている……と?」
そして今度は、的確に今の現状を言い当てられてしまった。
痛いところをつかれた為か、思わず悟子は表情を歪め、俯いてしまう……。
「はい…大体そんな感じです」
そんな悟子に対してフゥ〜とため息をつき真面目な顔で見つめ返してきた。
さっきまで朗らかだったマダムの表情が打って変わり、真撃になったので、悟子もきちんと聞かなきゃ、と姿勢を整える。
「結論から言うと……あなた、根本的に性格がダメね」
「………」
「自信がなさすぎる。その性格だったらいつまでもあなたの人生はどん底よ」
「………」
「これは、心が読めるとかの問題じゃなくて、誰が見たって同じ事言うわ」
(あぁ、やっぱりか……)
予想はしていた……それでも
悟子の僅かな希望を打ち崩すには十分すぎる鑑定結果だった。
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