18話 テトラの容疑
鬼と人間の戦争が始まる数時間前。
ガッドランドの酒場・ジョンソンではジンとテトラとゾフィーが宮廷軍人に刃を向けられていた。
「何あんたら?拘束?」
「お前がテトラか?」
「ちょ、ちょっと!何なんだい?」
ジョンソンで食事をしていた客達が驚く。
「おいおい、あの子達はまだ食い逃げしてねぇぞ?」
ジョンソンの店主が宮廷軍を引き止める。
「宮廷からの命令だ」
「何?宮廷の?」
「テトラ、行くぞ!」
ジンはテトラの手を引き店を出ようとするが、軍人が前に立つ。
「面倒だな。足を切って動けない様にするか」
軍人は剣を抜いた。
「ほう、面白いじゃないか」
テトラは短剣となった剣を構える。
数名の軍人が店の中に入ってくる。
「動くな!」
軍人達は剣を構えた。
「テトラ…これは…」
「テトラさん…」
「ちっ…」
「連行しろ」
はっ!と声を上げ、軍人達が3人の身柄を拘束する。
「一体何があったんだよ!」
「わ、私も!?ヤダ、離して下さい!!」
ゾフィーは掴んできた軍人を投げ飛ばす。
ガシャン!!
「抵抗するな!!」
「ちょっと待て、ゾフィー!」
「おい!この女強いぞ!5人でかかれ!」
「チャンスだ。ジン、逃げるぞ」
一瞬の虚をつき、テトラはジンを引いて走った。
「おい!待て!」
「うぐっ…」
テトラの足が止まる。
隊長の横を通り過ぎる刹那、隊長の拳がテトラの腹にめり込んだのだ。
「テトラ!」
「テトラさん!」
「連れて行け」
3人は軍人に拘束され、店を出た。
―――ーーー
両手・両足を鎖で縛られたテトラは拷問室に居た。
「ふぅ…手間かけさせやがって」
「なんなんだお前ら…ぶっ殺してやる!」
鎖を引きちぎろうと暴れるテトラ。
「そう荒ぶるなって。お前には聞きたい事があるんだから、すぐには殺さねぇよ」
「聞きたい事?」
男はテトラの服をめくる。
「何なら一回ストレス解消させとくか?溜まってるから暴れるんだろ?」
「…殺すぞ」
「へっ!」
男は踵を返す。
「随分と暴れている様子ですね」
男が拷問部屋に入ってくる。
「ここは、いつ来ても汚らしい…」
「何だあんた?」
「クローバー社さんの娘には似合わない場所ですか?」
男は手に持った紅茶を台の上に置いた。
「私は、宰相・サンダースと申します」
「…宰相が私に何の用があるんだ?」
「テトラ・クローバー。あなたには鬼との共謀容疑がかかっています」
―――ーー
宮廷地下室。
地下牢に手錠をつけたジンとゾフィーが軍人に押し込められる。
ガシャン!
「いってぇ…」
「大丈夫ですか、ジンさん…」
「何なんだこれ…」
「テトラさん、大丈夫でしょうか…?」
「…あいつはどこに居るんだ?」
「…わかりません」
4畳程度の牢屋で鍵付きの鉄格子と壁に囲まれ、地面は土。
「…一体何があってこうなったのかよく分からないけど…このまま待っていたら後で帰してくれるかな…」
「ジンさん?」
ゾフィーはジンを睨む。
「それは無いよな…うん。とにかくテトラを探そう!」
「そうです!それが一番です!」
「ゾフィー、この手錠、外せない?」
「…私は、手首の力はあまり鍛えていなく…」
ゾフィーは手首に力を込める。
「ん〜〜……」
ガシャン。
「あっ、出来ました」
「出来るのかよ!」
ゾフィーは同じ様にジンの手錠を外す。
「凄いなゾフィーは。でも、鉄格子があるな…」
「かなり強固な鉄ですものね」
「魔法陣布も、持っていかれちまったし、打つ手は無いか」
ゾフィーは牢の鉄格子を握り引っ張った。
ガゴン!
音を立てて鉄の棒が外れた。
「鉄格子も取れましたね」
「…お、おお…」
ヤバいなこいつ。絶対怒らせたくない…。
「と、とにかく地下牢から出よう」
牢屋を出たジンとゾフィーだが、地下牢には見るからに頑丈そうな鉄扉が閉められていた。
「これはどう?」
「…やってみます」
ゾフィーは鉄扉にタックルをする。
…が、扉はビクともしない。
「流石にダメでした…」
ま、そりゃそうか。
「おい!何の音だ!?」
「マズい!宮廷軍が来る!」
「どうしましょう!」
「とにかく牢屋に戻ろう!」
ジンとゾフィーは牢屋に走る。
「鉄格子は?バレちゃいますよ?」
鉄扉が開き、軍人2人が地下牢に入ってくる。
「お前ら!何をしている!」
軍人2人は牢屋を見る。
ジンとゾフィーは俯いて座っている。変わった様子は見当たらない。
「ちっ…暴れても無駄だぞ。静かにしておけ」
軍人達が地下牢から出ていく。
「…危なかったな」
「…ええ、何とか…」
ゾフィーは鉄格子の横になった棒を引き剥がし、外した縦棒に当てはめていた。
「…とにかく、ゾフィーの元へ行く方法を考えないといけませんね…」
「あの鉄の扉を何とかしないとな」