表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/36

13話 戦争・夜明け前

鬼の奇襲を人知れず止めていた頃、ガッドランドでは、王宮の渡り廊下にあるテーブルに神妙な顔付きで座るデータとジル。


その正面で紅茶を飲みながら2人の話を聞くジェフリー・サンダース。


「山鬼の隊列ですか…」


「えぇ。恐らく、ガッドランドに攻め入るつもりでしょう」


「やはりそうですか…」


「サンダース先生は予想されていたのですか?」


「人間と鬼の協定は、ここ数年ずっと緊張状態でした。まるで膨らんだ風船の様に、一本の針を刺すだけで決壊する寸前です」


「はい。だから宮廷では決戦に向けた準備を重ねてきたんですよね」


「しかし鬼が攻めてくる。先を越された形になりますね。急ぎましょう。もう宮廷求道者の隊は組んであります。データとジルも加わりなさい」


「はい!」


「データ、他に、異変は無かったですか?」


データは亀裂の入り口にあった出来事を思い出す。


「…ルッド教会へ行く岩の亀裂の入り口に鬼の残骸が1匹ありました」


「鬼の?」


「恐らく、グリーンマンを焼いた求道者の仕業でしょう」


「なるほど…わかりました」


サンダースは何かを考える仕草をしながら、紅茶を持ってテーブルを立ち去った。


思考を巡らせるデータ。

本当に報告して良かったのか?いや、サンダース先生には全ての情報を伝えるべきだ。


「データ、どうしたの?」


「…いや何でもない」


「よし、それじゃあすぐに隊列に加わろう!いつ山鬼が攻めてくるかわからないよ!」


「そうだな。行こう!ジル!」


走り出すデータとジル。


「…ジン。鬼との戦争が始まるぞ…」


―――


ジンを背中で抱えて洞窟を歩くゾフィー。その前で松明たいまつを持って歩くクラウゼとテトラ。


「お嬢ちゃん達は、なぜタンタウン広場に来た?」


クラウゼはテトラに質問をする。


「1つは、ゾフィーの妹を救出する為。もう1つは鬼の状況を知る為」


「知っていたのか?鬼が協定を破りガッドランドを襲撃する事を」


「そうね」


テトラは表情を変えずに言った。


「人間と鬼、どれぐらい力の開きがあると思う?」


突然のテトラの質問に、クラウゼは顎に手を当て思考を巡らせた。


「そうだな…人間がアリとするならば、鬼は強固なダンゴムシって所か。普通に戦争したらまず勝ち目はねぇ」


「そうなると、人と魔獣ではアリとカブトムシぐらい開きがあるって事ね」


「あぁ。1対1じゃ相手にならねぇよ」


「…その為に、求道者がいる。クラウゼ。あんたは見た所粗暴な人間ではなさそうだけど、どうして追放者(バンカー)になったの?」


「…粗暴ね…元々、俺だって宮廷求道者だったぜ」


「そう。ならどうして?」


岩の亀裂に到着する。クラウゼはテトラに松明を持たせ、先に登る。


「…まっ、意見の相違って奴だ。1つ大事な事を教えておいてやる」


「大事な事?」


クラウゼは亀裂の入り口に立ち、テトラに手を差し伸べる。


テトラとジンを片手で担いでいたゾフィーは亀裂の入り口に戻る事ができた。


「求道者になる為には、求道者の祠に入り洗礼を受ける必要があるだろう」


「そうね。神様が道を示してくれる」


「あの祠には“不正”がある」


「…なっ…どういう事?」


「細かい話をしている時間が無さそうだな。それじゃあ俺は戻るぜ。もしもまた会えたら一緒に戦おうや」


「…わかった」


「その、とんでもねぇエネルギーを扱う兄ちゃんにも宜しく言っておいてくれ」


クラウゼは森の中を走り出した。


「ジン、聞いていたか?」


ジンは俯いたまま言葉を発しなかった。


「…ジン?大丈夫か?ジン?」


「…く…首が…」


ゾフィーがジンを担ぐ為に回した手が首を思いっきり締めていた。


「あらごめんなさい!力の加減がわからなくて…」


「…ジン?死んだ?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ